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技術の進歩と普及がテロ活動に与える影響

現代社会においては、あらゆる場面で技術の進歩と普及による恩恵が、社会活動をより円滑なものとするだけでなく、日常生活もより便利なものとしてきた。一方、こうした恩恵を享受するのはテロ組織やそのメンバーも同様で、テロ組織等によるドローンやブロックチェーン技術の使用事例が散見されるように、テロ組織等が、これらの技術に関心を寄せ、また、実際に使用している状況もある。

【ドローン】

ビットコインを硬貨化したイメージ(写真提供:Umit
Turhan Coskun/NurPhoto/共同通信イメージズ)

クアッドコプター型ドローンの一例
(写真提供:DPA/共同通信イメージズ)

固定翼型ドローンの一例(写真提供:ABACA/共同通信イメージズ)

固定翼型ドローンの一例
(写真提供:ABACA/共同通信イメージズ)

ドローンは、物流や農業を始め様々な分野で活用されており、今後もその便利さ等から活用分野の更なる拡大が期待されている。

このような中で、「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)(注1)等のテロ組織は、主に、比較的安価で手に入りやすく操作もしやすいとされるクアッドコプター型(注2)のドローンを使用する傾向があるとされる(注3)

ISILは、2013年からイラクやシリアでのテロ活動にドローンを使用し始めて以降、攻撃や偵察のほか、宣伝活動等で使用しており、例えばナイジェリア等で活動するISIL関連組織「西アフリカ州」(注4)が、2022年1月、宣伝活動の一環として、同国の訓練キャンプの様子を複数のドローンを使用して撮影した。

また、一般にクアッドコプター型よりも、移動速度や航続時間等の面で優れているとされる固定翼型ドローン(注5)の使用事例もあり、例えば、ソマリア等で活動する「アルカイダ」(注6)関連組織「アル・シャバーブ」(注7)が攻撃や偵察に使用したほか、シリアで活動する「タハリール・アル・シャーム機構」(HTS)(注8)が爆発物を搭載した攻撃に使用した。

ドローンについては、活用分野の更なる拡大が見込まれる中、テロ組織等にとっても入手が容易となることで、その使用頻度が高まっている。

【ブロックチェーン技術】

ブロックチェーン技術はインターネットに並ぶ技術革新と言われ、一般に、複数の暗号技術を応用して改ざん等ができないようブロック状にデータを格納するなどしたものであり、暗号資産がその最たる例となっている。

ビットコインに代表される暗号資産は、国際取引に時間を要さないなどの即時性や利用者の特定につながる情報が秘匿されるなどの匿名性、さらに、価格変動による利ざやが期待されるなどの投機的要素等の特徴がある。このような特徴から、世界各地で暗号資産の利用者が増加している一方で、中東やアジアを始めとする各地において、ISIL、「アルカイダ」、HTS等に関連した「寄附」名目の資金調達活動の事例が散見される。また、国連テロ対策当局者の中には、「(2022年の)数年前はテロを実行するための資金調達方法として暗号資産が利用された、又はデジタル資産が関連した割合は5%にすぎなかったが、今や約20%に達すると考えられている。」と述べる者もいる。

ビットコインを硬貨化したイメージ(写真提供:Umit Turhan Coskun/NurPhoto/共同通信イメージズ)

ビットコインを硬貨化したイメージ
(写真提供:Umit Turhan Coskun/NurPhoto/共同通信イメージズ)

こうした中、ブロックチェーン技術を活用した新たな技術として、2027年までに4.4倍超の規模に成長するとの予測も伝えられるNFT(注9)への注目が集まっている。米国財務省は、2022年2月、NFTがマネーロンダリング等に利用されるリスクがある旨指摘したほか、同年半ばには、アフガニスタン等で活動するISIL関連組織「ホラサン州」(注10)の活動を称賛する画像が、NFTとしてISIL支持者によって関連サイト上に出品されたとされる(注11)

暗号資産等のブロックチェーン技術については、今後も発展が見込まれている一方で、取引内容を完全に把握することが技術的に困難な面があること等から、テロ組織等による資金調達活動への利用拡大に使用され続けることが懸念されている(注12)

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