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テロを継続するISIL の「ホラサン州」の動向

「ホラサン州」の最高指導者サナウッラー・ガファリ(出典:米国国務省「正義への報酬」プログラム)

「ホラサン州」の最高指導者サナウッラー・ガファリ(出典:米国国務省「正義への報酬」プログラム)

アフガニスタンを拠点とする「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)(注1)関連組織「ホラサン州」(注2)は、2015年頃、同国東部の一部を支配するに至ったが、同国治安部隊や米軍等による対テロ作戦で翌2016年にはその多くを喪失した。「ホラサン州」によるテロは、その後も続き2021年8月に「タリバン」(注3)がアフガニスタンの実権を掌握して以降は、「タリバン」への攻撃やシーア派住民等へのテロが各地で頻繁に実行されるなど、同国全土で確認されるようになったと指摘された(注4)

【テロを継続して存在感や影響力を誇示】

「ホラサン州」は、2021年8月、「タリバン」によるアフガニスタンの実権掌握を受けて国外退避を求める市民らが殺到していた同国首都カブールの空港付近で自爆テロを実行し、米兵13人を含む180人以上を殺害するなどして国際社会の注目を集めたほか、その後も、「多神教徒」として敵視するシーア派住民等へのテロを同国各地で繰り返している。

2022年3月の「ホラサン州」によるテロ発生後のパキスタン北西部・カイバル・パクトゥンクワ州のシーア派モスク(写真提供:EPA=時事)

2022年3月の「ホラサン州」によるテロ発生後のパキスタン北西部・カイバル・パクトゥンクワ州のシーア派モスク(写真提供:EPA=時事)

これ以外にも、2022年9月の首都カブールにおける教育センター内での自爆テロを始め、シーア派住民が多数居住する地域で発生した犯行声明未発出の複数のテロについても、その関与が指摘されている(注5)

「ホラサン州」は、アフガニスタン以外にも、パキスタン等周辺国でテロを実行しているほか、2022年には、アフガニスタン国内からウズベキスタン及びタジキスタンへそれぞれロケット弾を発射したと主張(両政府は同事案の発生を否定)しており、国際的な脅威を高める可能性も指摘されている(注6)

また、犯行声明においては、国籍や民族を示唆する表現を含めた形で実行犯名を発表するなどしており、国籍や民族を問わず多様なメンバーが自組織に所属することを誇示する形になっている。

【「ホラサン州」系メディアによる活発な宣伝活動】

「ホラサンの声」(英語版第13号)の一部

「ホラサンの声」(英語版第13号)の一部

「ホラサン州」系メディアと指摘のある「アル・アザイム」(注7)は、アフガニスタンで広く話されているパシュトゥー語やダリー語(ペルシャ語)のほか、アラビア語や英語、中央アジア諸国の言語を使用し、声明やオンライン誌等を頻繁に発出・発行している。これらのプロパガンダは、「タリバン」を「背教者」として敵視するなどのイデオロギーに基づく主義主張となっており、その中には、中国、パキスタン、インド等を敵視するものも見られる。2022年9月に発行されたオンライン誌「ホラサンの声」(英語版第13号)では、「帝国主義の中国の白昼夢」と題した記事が掲載され、中国について、「世界を征服し、独自の勢力範囲を確立するという将来的な野心がかい間見える」とし、「我々は、あなた(中国)が抑圧した罪のないウイグルのイスラム教徒のことを忘れていない」との主張が展開された。

【高まる脅威】

「タリバン」は、「ホラサン州」の存在について、「(同組織は)アフガニスタン国内に物理的に存在しない。そのイデオロギーに同調する個人がいるのみである」と主張するなど、アフガニスタン国内に存在することを認めていなかったが、「ホラサン州」の活動が活発化するのに伴い、国内における自組織の治安対策が万全であることを示すため、「ホラサン州」メンバーとされる者らの拘束を積極的に広報するようになり、その際に被拘束者についてISIL又は「ハワーリジュ派」(注8)と表現している。

しかしながら、「ホラサン州」は、カブールのロシア大使館付近での自爆テロ(2022年9月)や中国人が頻繁に利用するとされるホテル(注9)への襲撃(同年12月)等の注目を集めるテロを各地で継続し、「アル・アザイム」がこれらを“成果”として積極的に宣伝しており、「ホラサン州」の脅威が高まっている(注10)

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