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レバノン

レバノンでは、「アブドラ・アッザム旅団」(AAB)(注69)等の武装組織が活動している。AABは、2009年2月に発生したレバノン南部からイスラエルに対する5件のロケット弾攻撃について、同組織の一部である「ジヤード・アル・ジャッラーハ大隊」が犯行を主張するなど、イスラエルに対する強硬姿勢を示した。

2013年以降は、隣国シリアの情勢の影響を受けた衝突事案やテロが発生している。すなわち、レバノンを拠点とするシーア派組織「ヒズボラ」(注70)がシリア政府への軍事支援を本格化させると、「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)等スンニ派過激組織による「ヒズボラ」を標的とした攻撃事案が相次いだ。AABは、2013年から2014年にかけて、イラン大使館やイランが運営する文化施設を標的とした自爆テロを実行し、「イランがアサド政権に対する支援をやめなければ、一層の攻撃を行う」などと警告した。2014年8月には、レバノンに潜伏していたシリア反体制派勢力の幹部(注71)がレバノン当局に拘束されたことを受け、ISIL、「ヌスラ戦線」(現「タハリール・アル・シャーム機構」(HTS))等が、同幹部の釈放を要求し、レバノン領内に侵入して治安部隊との戦闘の末に北東部・ベッカー県アルサルを占拠した。ISIL、「ヌスラ戦線」等は、レバノンのスンニ派聖職者等による調停を受け入れ、同月、アルサルからシリアとの国境地帯に撤退したが、その際、ISIL及び「ヌスラ戦線」は、それぞれの組織が拘束していたレバノン兵や警察官らを連れ去り、その一部を殺害した。

このほか、ISILに関連した事件では、2015年11月のベイルート南郊の繁華街における連続自爆テロ(少なくとも43人が死亡、240人が負傷)、2016年6月のキリスト教徒が多い北部・アル・カーアにおける連続自爆テロが発生したほか、2016年9月には、ISIL関係者が金融機関、飲食店、カジノ等を標的としたテロを計画していたことが明らかになった。一連の事件を受け、レバノン軍は、同年9月、アルサル郊外の山岳地帯でISIL掃討作戦を開始し、同組織の拠点を次々と奪還した。また、2019年6月には、北部・北レバノン県トリポリで、イラク及びシリアから帰還したレバノン人戦闘員による同国での初めてのテロとなる銀行、警察署及び軍車両に対する襲撃事件(警察官2人及び軍関係者2人の計4人が死亡)が発生した。2020年8月及び9月には、北部・北レバノン県で、ISILと関係を有するとされるグループが、治安部隊の検問所等を襲撃した(注72)。その後、2022年12月には、ISIL最高指導者アブ・アル・ハッサン・アル・ハシミ・アル・クラシに忠誠を誓う集団の画像が、「ISILレバノン」名で公開された。

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