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ベルギー

(1) 背景

ベルギーでは,2000年当時,首都ブリュッセルのイスラムセンターで,シリア系フランス人のバッサム・アヤシによる過激な説法が行われており,同人の影響を受けたベルギー在住のチュニジア人アブデサタール・ダーマンが,アフガニスタンに渡航して「アルカイダ」に参加し,「タリバン」と敵対していた「北部同盟」のマスード司令官を爆殺した(2001年9月,本人も死亡)。1999年にアヤシの紹介でダーマンと結婚していたモロッコ系ベルギー人女性マリカ・エル・アルードは,米国同時多発テロ事件後,ベルギーに帰国し,再婚相手のチュニジア人と共にフランス語の過激ウェブサイト「ミンバルSOS」を立ち上げ,アフガニスタンにおける「ジハード」への参加を呼び掛けるなどして,1,400人以上の会員を集め,同会員やモスクでリクルートしたベルギー人及びフランス人計6人を,パキスタンの「アルカイダ」訓練キャンプに送り込んだ。送り込まれたメンバーの1人は,2008年,同訓練キャンプで,米国人「アルカイダ」メンバーのブライアント・ニール・ビナスと共に,ブリュッセルの地下鉄に対するテロを計画するなどしたとされ,同年12月,ベルギー当局は,自爆テロを企図した疑いで,パキスタンでの訓練を終えて帰国したメンバーやアルードら14人を拘束した(フランス当局も関係者2人を拘束)。ベルギー国内には,過激化を扇動する人物が存在することに加え,「武器の闇市場」も存在し,武器の入手が容易とされる。

(2) テロ関連動向

2010年11月,ベルギー北部・アントワープ等で,同国内の標的に対するテロを計画した疑いでベルギー人ら11人が拘束された。容疑者らは,イスラム過激主義ウェブサイト「アンサール・アル・ムジャヒディン」の関係者とのつながりが疑われており,チェチェン系武装勢力に対するリクルート及び資金援助を行った可能性が指摘されている。また,2014年5月,ブリュッセルのユダヤ博物館で,フランス国籍所持者メディ・ネムシュが銃を乱射し,イスラエル人2人を含む4人が死亡した。同月,ネムシュはフランスで逮捕され,その後,ベルギー当局に身柄が引き渡された。逮捕の際,同人は,銃火器や大量の弾薬,犯行を自認する音声入りのビデオ等を所持していたほか,武器のうち一つは「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)名入りの布で覆われていた。同人は,シリアに1年以上滞在し,外国人戦闘員として活動していたとされる。2015年には,同国でのテロを計画していたグループや他国で発生したテロに関連していると疑われる者らが相次いで摘発された。1月には,ブリュッセル,東部・ヴェルヴィエ等国内12か所で,警察官の襲撃を計画していたグループが摘発され,2人が死亡,13人が拘束された。死亡した2人はシリアへの渡航歴があったとされる。また,11月以降には,「フランス・パリにおける連続テロ事案」に関連し,ブリュッセル郊外モレンベーク等での大規模な摘発で,複数人が逮捕された。2016年以降も,ISILによる組織的なテロやISILの影響を受けたとみられる者によるテロが発生した。同年3月,ブリュッセルの空港及び地下鉄駅で爆発物を用いた「ベルギー・ブリュッセルにおける連続テロ事案」が発生し,ISILが犯行声明を発出したほか,8月には,ブリュッセル南方のシャルルロワで,警察署が襲撃され,ISILと関連を有する「アーマク通信」が,ISILによる犯行と主張した。また,2017年6月,モロッコ人の男が地下鉄駅構内で所持していた爆発物を起爆させる事件が発生したほか,2018年5月には,東部・リエージュで,刑務所から一時出所中の男が,警察官を襲撃した後,学校に立て籠もるなどの事件を引き起こした。これ以降,ISILに関連したテロの発生は確認されていないが,2020年10月,東部・ユーペン及びケルミスで,警察に対するテロを計画した疑いで少年2人(16歳及び17歳)が逮捕された。2人は,ISILに忠誠を誓う動画を撮影していたとされる。

(3) 今後の展望

ベルギーでは,2016年以降,ISILに関連したテロが6件発生しているところ,移民の約6割が貧困や社会的に排除された状態にある (注26)こと等を背景に,過激主義の影響を受けやすいとされる移民系の若者を中心に,同組織の影響が相当程度浸透している状況にあるとみられ,今後も,過激思想に感化された者によるテロの発生には注意が必要である。また,シリアやイラクに渡航した498人のうち,子供を含め約165人が既に帰国したとされる中,現地でテロや戦闘の技術を習得した帰還者らがテロ活動に関与する危険性も懸念される。

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