フランス
フランスでは、1979年、共産主義者やアナキスト等が、極左過激組織「直接行動」(AD)を設立した。同組織は、1985年1月に国防省高官を殺害、1986年11月にルノー自動車会長を殺害するなど、政府機関や企業関係者等を標的にした銃撃や爆弾テロを実行した(注9)。
また、1962年にフランスから独立したアルジェリアでは、1992年半ば以降、イスラム過激組織「武装イスラム集団」(GIA)(注10)がテロを本格化させ、フランスに居住するアルジェリア出身者のコミュニティを通じて、GIA支持者らが戦闘員や資金の調達を企図したとされる(注11)。さらに、1994年12月、エールフランス航空機ハイジャック事件が発生したほか、1995年7月には、首都パリの地下鉄サンミッシェル駅爆弾テロ、同年8月には同凱(がい)旋門駅爆弾テロ等、GIAが関与するテロが続発した。
2000年代後半には、「アルカイダ」やGIAを起源に持つ「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」(AQIM)が、フランス軍のアフガニスタン駐留や「ブルカ等禁止法(注12)」等を背景に、累次にわたる声明においてフランスを攻撃対象として名指しした。
フランスでは、2015年1月に週刊紙「シャルリー・エブド」社襲撃事件(注13)が発生し、「アラビア半島のアルカイダ」(AQAP)が犯行を主張する声明を発出したほか、「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)に関連したテロが相次いで発生しており、同年8月には、シリアへの渡航歴があるとされるモロッコ人(注14)が、ISILのメンバーから指示を受けて、国内を走行中の国際高速列車内で銃撃しようとした事件のほか、同年11月には、フランス・パリにおける連続テロ事件(注15)が発生した。2016年7月には、南部・ニースで発生した群集への車両突入事件により、84人が死亡したほか、ISILメンバーからの通信アプリ等を介した指示に基づいて計画されたイラクやシリアに渡航経験のあるフランス人によるテロも発生した。2017年には、治安当局を標的としたテロが相次いだほか、2018年には、ソフトターゲットを標的としたテロが続発し、2019年5月にも、南東部・リヨンで、ISILに影響を受けた者による爆弾テロが発生するなどした。
また、「シャルリー・エブド」社が預言者ムハンマドの風刺画を再掲載したことを受け、2020年9月に同社社員を標的としたテロが発生したほか、同年10月には同風刺画を授業で使用した中学校教師が斬首されるなど、風刺画に関連したテロも相次いで発生した。さらに、2021年4月には、パリ近郊・ランブイエの警察署で、イスラム過激主義の影響を受けていたとされる男(注16)が職員を刃物で殺害するなど、ISIL等イスラム過激組織と直接の関連を有しない者によるテロも相次いだ。
近年、フランスで発生した主なテロは下表(当庁作成)のとおりである。
【主なテロ(2020年以降)】
年月日 | 場 所 | 概 要 |
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20. 4.27 | パリ | フランス人が、自動車で警察車両に突入(3人負傷) |
20. 9.25 | パリ | パキスタン人が、「シャルリー・エブド」旧本社前にいた市民を襲撃(2人負傷) |
20.10.16 | パリ | チェチェン系の男が、授業で預言者ムハンマドの風刺画を使用した中学校教師を斬首して殺害 |
20.10.29 | ニース | チュニジア人が、教会を襲撃(3人死亡) |
21. 4.23 | パリ | チュニジア人が、警察署で職員を刺殺 |