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イタリア

イタリアでは、1970年代に極左過激組織「赤い旅団」(BR)(注35)が、モロ・イタリア元首相誘拐・殺害事件(1978年5月)を引き起こすなど、要人暗殺事件や民間企業に対する放火を繰り返した。1992年に設立された「新赤い旅団・戦闘的共産主義者中核」(NBR-NCC、別称「新赤い旅団」)(注36)は、1993年9月にイタリア北部にある米軍基地に対して、小火器及び手りゅう弾によるテロを実行したほか、1994年1月には、首都ローマにあるNATO防衛大学で爆弾テロを実行した。NBR-NCCは、1999年5月に同国の労働相顧問を殺害するなど政府関係者の暗殺等を実行したほか、2009年6月には、イタリア中部・ラクイラで開催された主要国首脳会議(G8サミット)を狙ったテロを計画したとしてそのメンバーが逮捕された。

さらには、欧州の現行体制を敵視するアナキスト系過激組織等によるテロ関連事件も発生しており、2017年12月には、ローマの警察署周辺で爆発物が爆発し、「非公式アナキスト連盟」(FAI)(注37)が「国際革命戦線」(FRI)(注38)と共に実行した旨主張した。

また、イタリアでは、1991年に同国に亡命したエジプトのイスラム過激組織「イスラム集団」(GI)(注39)幹部アンワル・シャーバンが、北部・ミラノを拠点として活発にリクルート活動を展開し、北アフリカ系移民らをアフガニスタンの軍事訓練キャンプやボスニア内戦に送り込んだ(注40)。シャーバンは、1995年にボスニアで死亡したが、その後、アフガニスタンでの戦闘経験を持つチュニジア出身者エッシド・サミ・ベン・ヘマイス(2001年4月逮捕)(注41)らが、ミラノを拠点に志願者をチェチェン内戦に送り込んだ(注42)

2003年のイラク戦争開始後は、イラク等海外のテロ組織への支援やこれらの地域でのテロを目的としたグループが形成され、こうしたグループの摘発のほか、イタリア国内でのテロ計画事案の摘発も相次いだ。

2007年以降は、「アルカイダ」の思想に触発されて過激化したグループが、ミラノのイタリア軍駐屯地で手製爆弾を爆発させ、兵士1人を負傷させる事件が発生する(2009年)など、過激化した個人やグループによる事件も発生した。

近年は、イスラム過激組織による大規模なテロは発生していないが、2016年4月のモロッコ系移民4人によるローマのイスラエル大使館等へのテロ計画、2017年3月のコソボ出身の男らによる観光名所の爆破計画等、「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)等イスラム過激組織に関連したテロを計画した者が摘発されているほか、ISILの宣伝活動を行う者やISILに参加したイラクやシリアからの帰還者の摘発等、テロ関連事案も相次いで発生している。

2020年7月には、ISILの宣伝活動を拡散させ暴力的な攻撃の実行を奨励した容疑で男が逮捕されたほか、同年11月には、南部・コゼンツァで、ISILの処刑動画や爆弾製造のマニュアルを所持するなど、テロ目的の活動を行った容疑でイタリア人が逮捕された。2021年1月には、元「アルカイダ」メンバーのイタリア人が、イラク及びシリアにおけるテロ活動の容疑で逮捕されたほか、7月には、南西部・カンパニア州バティパーリアで、ISILで指導者的立場にあったとされるモロッコ人が逮捕された(注43)

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