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ロシア

ロシアでは、1991年のソビエト連邦崩壊以降、チェチェンの分離独立をめぐる紛争が続いてきた。1999年の第2次チェチェン紛争後に親ロシアのチェチェン人アフマド・カディロフがチェチェン共和国の大統領に就任したことを契機として、チェチェン人を中心としたイスラム過激主義者は、2002年10月の首都モスクワでの劇場占拠事件、2004年5月のカディロフ・チェチェン共和国大統領爆殺事件、同年9月の北オセチア共和国ベスランでの学校占拠事件等、チェチェン共和国内外でテロを頻発させるとともに、「アルカイダ」等国際テロ組織ともつながりを持つようになった。

その後、チェチェン独立派のドク・ウマロフ(2013年9月死亡)が、北コーカサス地方にイスラム国家の建設を目指す「コーカサス首長国」(注1)の「建国」を一方的に宣言した。「コーカサス首長国」は、ダゲスタン共和国を始めとする北コーカサス地方のほか、首都モスクワ等でロシア当局等に対するテロを実行し、2011年1月にモスクワ・ドモジェドボ国際空港の国際線到着ロビー付近で発生した自爆テロ(35人が死亡、約180人が負傷)について、ウマロフが「コーカサス首長国」最高指導者(当時)として事実上の犯行声明を発出した(注2)。ウマロフは、2013年7月にインターネット上に声明を発出し、ソチ冬季オリンピック(2014年2月)開催阻止に向けた攻撃も呼び掛け、その後の2013年10月及び12月に、ロシア南部・ボルゴグラードの路線バス、駅舎内等で計3件の自爆テロ(合わせて41人が死亡、110人以上が負傷)が発生し、12月に発生した2件については、「コーカサス首長国」がオリンピック開催阻止を企図したものである旨主張した。ウマロフの死亡後に最高指導者となったアリアシャブ・ケベコフは、2014年5月、シリア等で戦闘に参加しているチェチェン人に対し、故郷での戦闘を優先すべきとの考えを表明した。ケベコフは、2015年4月に殺害され、その後継者も同年8月に殺害された。こうした中で、同年6月には、「コーカサス首長国」の有力司令官(ダゲスタン、チェチェン、イングーシ及びカバルダ・バルカルの各地方司令官)が「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)最高指導者アブ・バクル・アル・バグダディ(当時)に忠誠を表明し、ISIL関連組織「コーカサス州」(注3)が設立された。

2015年9月のロシアによるシリアでの空爆の開始を受けて、ISIL等がロシアに対する報復を呼び掛ける中、同年10月には、エジプト・シナイ半島上空でのロシア旅客機爆破について、ISIL関連組織「シナイ州」(注4)が犯行声明を発出した。

ロシアでは、2017年の北西部・サンクトペテルブルクの地下鉄爆破テロ(14人が死亡、60人以上が負傷)以降、大規模なテロは発生していないものの、2019年には、チェチェン共和国の首長公邸付近での襲撃事件(1人が死亡、複数が負傷)を始め、「コーカサス州」が犯行声明を発出するテロが北コーカサス地方で複数回発生した。また、2020年12月には、カラチャイ・チェルケス共和国のロシア連邦保安庁(FSB)支部庁舎付近で自爆テロが発生した(6人が負傷)ほか、チェチェン共和国で「コーカサス州」による警察官襲撃事件(1人が死亡、1人が負傷)が発生するなど、テロが散発している。さらに、ロシア極東地域では、2017年4月にハバロフスクのFSB庁舎で銃撃が発生し、ISILと関連を有する「アーマク通信」が、ISILによる犯行である旨報じた。

このほか、ロシアでは、中央アジアから受け入れている多数の移民労働者が、低賃金労働等による不満を背景にISILからリクルートされ、イラク又はシリアへ渡航した事例も多いとされる(注5)

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