ISIL による刑務所等襲撃事件の続発
【刑務所等襲撃の呼び掛け】
「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)(注1)は、2019年3月に全ての支配地を喪失して以降、最高指導者や広報担当の声明において、刑務所等への襲撃による自組織メンバーの解放を最優先事項に位置付け、その実行を頻繁に呼び掛けている(注2)。ISILには、2012年から2013年にかけてイラクで実行した刑務所襲撃によって解放した自組織メンバーを即戦力として再加入させたことがテロ実行能力の向上につながり、その後のISIL台頭の一因になったという“成功体験”があり(注3)、このような襲撃による勢力回復及び拡大をもくろんでいるとみられている(注4)。
【2022年に入り相次ぐ刑務所等襲撃事件】
ISILによる刑務所等襲撃事件はこれまでにも発生していたが、2022年には、度重なる呼び掛けに呼応するかのように立て続けに発生した。
2022年1月には、シリアで、ISILが自組織メンバーが収容されている施設を襲撃し、数百人のメンバーが脱走する事件が発生し、当時の最高指導者が主導したと指摘された(注5)。当該施設を含めシリア北東部におけるISILメンバーが収容されている施設(注6)の中には、収容を本来の目的としない大学施設等を利用したものもあり、警備や管理体制が十分ではないと指摘されていた(注7)。
また、7月には、ナイジェリアで、ISIL関連組織「西アフリカ州」(注8)が首都アブジャ近郊の刑務所を襲撃し、自組織メンバーを含め879人が脱走する事件が発生した。
さらに、8月には、コンゴ民主共和国で、ISIL関連組織「中央アフリカ州」(注9)が東部・北キブ州の刑務所を襲撃し、自組織戦闘員を含め約800人が脱走する事件が発生した。
ISIL及び同関連組織は、今後も、勢力回復の手段として刑務所等襲撃による自組織メンバーの解放を企てる可能性が高いと指摘されている(注10)。