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アジ研で新たな国際研修が始動しました(包摂的社会研修)

1 アジ研の研修とは

国連アジア極東犯罪防止研修所(アジ研)は、国連との協定に基づき法務省が運営しており、約60年間、開発途上国の刑事司法実務家を対象とした国際研修を実施してきました。令和3年度からは、新型コロナウイルス感染症の流行による海外からの渡航制限のため、オンラインで研修を実施しています。

2 包摂的社会研修(被害者保護)

今回の研修は、持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)、特に目標16[平和]の「平和と公正をすべての人に」に対して、刑事司法の観点から貢献し、包摂的社会を構築することを目標として、令和3年度から新たに始動したものです。今回は第1回の研修として、令和4年3月2日から同月17日まで、海外8か国から13名が参加して実施され、児童を含む犯罪被害者の権利保護を促進するための効果的な方策について集中的に議論しました。

3 オンラインでの講義及びロールプレイ

今回の研修では2名の外部講師をお招きしました。

まず、米国カリフォルニア州立大学フレズノ校名誉教授(犯罪学)のジョン・P・J・ドゥーシッチ氏は、「国際被害者学の過去、現在及び未来」について様々な国の取組を紹介しつつ、示唆深いお話をしてくださいました。

また、立命館大学OIC総合研究機構教授の仲眞紀子氏は、「弱者への面接 ―司法面接の基礎―」についてお話しくださるとともに、聴取技法を含めた司法面接への理解を深めるべく、講義にロールプレイを取り入れてくださいました。ロールプレイでは、目撃者である児童に対する聴取を想定し、目撃者役の参加者のみが模擬事件の動画を視聴しました。その後、動画を視聴していない聴取者役及び補助スタッフ役の参加者が、目撃者役に対し、動画の内容について、講義で触れられた聴取技法に沿った聴取を試み、仲教授による講評が行われました。オンラインであっても実践的な研修が実施できて、研修員にとっての深い学びとなり、大変好評でした。

4 おわりに

参加者からは、来日での研修であればなおよかったが、オンライン研修であっても様々な知識を得ることができ、貴重な学びの機会となったとの感想が多く寄せられました。

児童を含む犯罪被害者の権利保護は、日本を含む世界各国の刑事司法における重要課題の一つであり、それぞれの国の事情を踏まえながら、よりよい制度や運用を目指して絶えず見直されていくべきものです。研修を通じて、アジ研教官一同も、日本とは異なる法制度を背景とした各参加者の発表や指摘によって既存の法制度の課題等に気づかされました。参加者の皆さんが、この研修で得た知見を、各国における被害者権利保護の発展のために活用してくれることを願っています。

令和4年度も、当面はオンライン形式の活用が見込まれますが、充実した研修を目指し、さらにバージョンアップを図ってまいります。


【研修風景】

【研修風景】