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法制度整備支援の現場から
インドネシア長期派遣専門家 國井 陽平
法務省は、独立行政法人国際協力機構(JICA)や関係機関とともに、相手国の法制度の整備を支援する活動に取り組んでいます。この活動のために法務省から法律の専門家が派遣される国もあり、インドネシアはそのうちの一つになります。私は、令和5年9月にインドネシアの最高裁判所に派遣され、裁判官としての職務経験を生かしながら現地で活動しています。
インドネシアにおいては、同国最高裁判所との間で、特許権、商標権、著作権などといった知的財産権に関する紛争(裁判)における裁判官の法的判断及び訴訟運営に関する能力の向上を目的とするプロジェクト活動が実施されています。インドネシアにおいても知的財産に関する法律は制定されているものの、その運用に課題があるため、上記プロジェクト活動は、この課題を解決して、法律が適切に運用されることを目指しています。
具体的な活動として、インドネシア側のワーキンググループのメンバーと一緒になって、裁判官に対する知的財産法の研修を実施しています(写真①は、地方における知的財産法の研修の一場面になります。)。また、執務参考資料の作成にも取り組んでおり、これまで、日本・インドネシア両国における知的財産に関する判決をまとめた判決集や、商標事件における審理の手引書としてのガイドブックが作成されました。現在は、著作権事件のガイドブックを作成しています(写真②は、ガイドブック作成会議の様子です。)。
知的財産法は、ビジネスの場面で問題となることが多く、また、一国内の取引にとどまらず国際的な取引において問題となることも多くあります。知的財産法の安定した運用は、国内外のビジネス関係者等にとって法的な予見可能性を高めることになり、ひいては当該国の発展につながるものです。経済成長著しいインドネシアが更に発展する一助となれるように、日々精進したいと思います。

