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Q&A

更生保護、更生保護ボランティアについて

なぜ仮釈放や少年院からの仮退院は必要なのですか?

 仮釈放や少年院からの仮退院とは、矯正施設に収容されている人を収容期間が満了する前に矯正施設から仮に釈放する措置で、刑務所から仮に釈放することを「仮釈放」、少年院から仮に釈放することを「仮退院」と言います。いずれの場合の人も、釈放後は保護観察に付され、保護観察官や保護司から生活指導等を受けながら、自らの犯罪や非行について反省を深め、更生に努めていくことになります。また、仮釈放期間中に違法行為等があった場合には、仮釈放等を取り消され、再び矯正施設に戻されることがあります。
 仮釈放等とならずに収容期間を満了して矯正施設から出所した人は、保護観察が受けられません。矯正施設を出所した人が、保護観察による指導や援助を受けられず、社会への適応が図られないまま再犯に至ってしまうことは、出所した本人、社会の両者にとって不幸なことです。仮釈放等の制度は、矯正施設に収容された人の更生を助け、再犯を防止し、もって社会を保護することを目的とした制度なのです。
 なお、仮釈放は、具体的には、悔悟の情及び改善更生の意欲があり、再び犯罪をするおそれがなく、かつ、保護観察に付することが改善更生のために相当であると認められ、社会の感情もこれを是認すると認められるときに許されます。

なぜ恩赦は必要なのですか?

 恩赦にはいくつかの役割がありますが、その中で最も重要なものとして、「罪を犯した人たちの改善更生の状況などを見て、刑事政策的に裁判の内容や効力を変更する」というものがあります。具体的に説明しますと、裁判で有罪の言渡しを受けた人たちが、その後深く自らの過ちを悔い、行状を改め、再犯のおそれがなくなったと認められる状態になった場合などには、被害者や社会の感情も十分に考慮した上で、残りの刑の執行を免除したり、有罪裁判に伴って制限された資格を回復させたりということが行われます。
 このように恩赦は、有罪の言渡しを受けた人々にとって更生の励みとなるもので、再犯抑止の効果も期待でき、犯罪のない安全な社会を維持するために重要な役割を果たしているといえます。

保護観察ではどのような指導や援助をするのですか?

 犯罪や非行をした人が社会の中で健全な一員として更生するように、保護観察官と保護司が協働して、保護観察対象者と面接を行うなどして生活状況を把握し、保護観察の決まりごと(遵守事項)を守るよう指導することや、自立した生活ができるように住居の確保や就職の援助等を行います。
 また、保護観察対象者の問題性に応じて、認知行動療法(自己の思考のゆがみを認識させて行動パターンの変容を促す心理療法)に基づく、「専門的処遇プログラム」を行っています。
 専門的処遇プログラムには、性犯罪再犯防止プログラム、薬物再乱用防止プログラム、暴力防止プログラム及び飲酒運転防止プログラムがあります。

更生保護施設とはどのような施設ですか?

「更生保護施設等」を御覧ください。

更生保護女性会とはどのような活動をしているのですか?

 更生保護女性会とは、犯罪や非行のない明るい社会の実現に寄与することを目的として、地域の犯罪予防活動と犯罪をした人や非行のある少年の更生支援活動を行うボランティア団体です。(→更生保護女性会
  主な活動内容は、次のようなものです。
〇犯罪予防活動
 地域住民を対象に、家庭や非行問題をテーマとした「ミニ集会」、青少年への声掛け運動、親子で参加できるワークショップ等、犯罪や非行の未然防止を目的とした様々な活動を行っています。また、毎年7月を強調月間として行われる「社会を明るくする運動」~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~にも積極的に参加しています。
〇子育て支援地域活動
 誰もが夢を持ち安心して子育てができる環境づくりを実現するため、子育てをテーマとした講演会や座談会の開催、若い世代の親に対する相談助言や支援活動などを行っています。
〇社会貢献活動・社会参加活動
 保護観察対象者や問題を抱えた少年を対象に、社会奉仕活動、体験活動等を実施して、その健やかな心の成長を手助けしています。
〇矯正施設・更生保護施設への訪問
 被収容者への激励や施設の行事への参加協力を通じて、被収容者の立ち直りを支援しています。また、更生保護施設に対しては、日用品の援助や炊事補助等、運営面の協力をしたり、料理教室の開催等、処遇に資する援助を実施したりしています。
 この他にも、保護司活動やBBS会員の活動にも協力をしています。
 詳しくは、最寄りの保護観察所までお問い合わせください。

BBS会とはどのような活動をしているのですか?

 BBSとは「兄」や「姉」のような身近な存在として、少年たちと一緒に遊んだり、悩みを聴いたり、『同じ目の高さ』で接しながら、少年たちが健やかに成長するための支援をするとともに、非行防止活動を行う青年ボランティア団体です。(→BBS会
 主な活動内容は次のとおりです。
〇ともだち活動
 BBS運動を特色づける実践活動です。通常は保護観察所、家庭裁判所、児童相談所などからの依頼を受けて、非行少年等と「ともだち」の立場で良き話し相手・相談相手となります。
〇非行防止活動
 青少年や地域に広く働き掛け、青少年の健全な成長の支援や犯罪や非行のない明るい社会環境づくりを行う活動です。具体的には、グループワークの手法を用いたイベント等を企画したり、広報活動、環境浄化活動などを行っていますが、近年は、BBS会の活動の場が広がりつつあり、上記活動以外にも、地域に根ざした様々な活動を行っています。
〇自己研鑽活動
 ともだち活動、非行防止活動を支える大切な活動です。この活動によって、BBS運動の意義・目的に対する共通の理解と実践活動に必要な知識と技術を習得し、会員の資質向上と組織のリーダー養成を図っています。
 詳しくは、最寄りの保護観察所までお問い合わせください。

協力雇用主とはどのような活動をしているのですか?

 保護観察対象者や更生緊急保護の対象者の前歴等の事情を理解した上で、待遇や稼動面において他の労働者との差別をすることなく、積極的に彼らを雇用することで、彼らが仕事に就き、社会の一員として生活することに協力しています。(→協力雇用主
 ※協力雇用主になるには?
 まずは、最寄り又は事業所の所在地を管轄する保護観察所に御連絡ください。
 詳しくは、「協力雇用主を募集しています。」を御覧ください。

保護観察官について

非行少年の改善更生に関わる仕事がしたいのですが家裁の調査官や少年院の法務教官、保護観察官の仕事の違いがよく分からないので教えてください。

 家庭裁判所で少年保護事件の審判及び家事事件の審判・調停に必要な調査を行っているのが、家庭裁判所調査官です。
 家庭裁判所調査官は、審判前の調査を行うことが中心の仕事であるのに対して、保護観察官は、審判後に、少年が非行から立ち直ることを支えることが中心の仕事です。
 また、少年院で収容されている少年の矯正教育に携わっているのが少年院の法務教官です。少年院の法務教官は、少年院に在院している少年の教育に当たっているのに対し、保護観察官は、少年院から仮退院した少年が、施設から出た後も再び非行に陥ることなく社会生活を送れるように指導監督しています。
 さらに、保護観察官の特徴としては、家庭裁判所で保護観察に付された少年、少年院からの仮退院を認められた少年のほか、刑務所からの仮釈放を認められた人及び地方裁判所等で保護観察付執行猶予の判決を受けた人等成人の保護観察にも携わっていることが挙げられます。
 加えて、保護観察を受けている人が社会生活の中で抱える様々な問題に一緒に向き合う仕事であることや、保護司を始めとする多くの民間ボランティアの人たちと一緒に仕事をしていることも、保護観察官の特色です。

どうすれば保護観察官になれるのですか?

 保護観察官になるためには、主に法務省専門職員(人間科学)採用試験(保護観察官区分)、国家公務員採用総合職試験又は一般職試験を受験して合格し、法務省保護局又は更生保護官署(地方更生保護委員会及び保護観察所)に採用されることが必要です。採用後、一定期間は法務事務官として法務省保護局や更生保護官署等において行政事務に従事した後、保護観察官に任命されます。なお、法務省専門職員(人間科学)採用試験受験者及び国家公務員採用一般職試験受験者の採用事務は各地方更生保護委員会事務局総務課において、国家公務員採用総合職試験受験者の採用事務は法務省保護局総務課において行っています。

保護観察官になるために必要な知識や技能はありますか?

 保護観察官は、「医学、心理学、教育学、社会学その他の更生保護に関する専門的知識に基づき、保護観察、調査、生活環境の調整その他犯罪をした者及び非行のある少年の更生保護並びに犯罪の予防に関する事務に従事する」(更生保護法第31条第2項)と規定されているとおり、高い専門性が必要とされています。しかしながら、必要な知識や技能は採用後の研修や実務を通して身に付けることができますので、犯罪をした者や非行のある少年の更生、犯罪の防止及び安全・安心な地域社会の実現に強い熱意を持つ方、行動力のある方に、保護観察官を目指していただきたいと考えています。

保護観察官の研修制度はどうなっていますか?

 保護観察官を命ぜられてから定められた研修等を修了するまでの期間を、保護観察官として必要な基礎的能力を身に付けるための育成期間と位置付けています。育成期間中には、合宿形式の保護観察官中等科研修及び保護観察官専修科研修に参加するほか、所属庁において第一線の保護観察官としての勤務を行いながら、統括保護観察官等から実務指導を受けます。また、矯正施設や地方検察庁など他の刑事司法機関への短期派遣研修も用意されています。

保護観察官のキャリアステップはどうなっていますか?

 保護観察官になった後は、勤務成績や実務経験に基づき、統括保護観察官、統括審査官、企画調整課長等を経て、保護観察所長や地方更生保護委員会事務局長、さらには地方更生保護委員会委員・同委員長等へとキャリアアップしていきます。また、この間、法務本省や法務総合研究所、法務省の他組織(地方検察庁、矯正施設、地方法務局、出入国在留管理局等)、他府省庁等で勤務することもあります。

保護司について

保護司にはどのような人がなっているのですか?

 更生保護は、犯罪や非行をした人を取り巻く地域社会の事情をよく理解した上で行うことが望まれます。そこで、地域の事情に詳しい民間のボランティアである保護司と公務員である保護観察官が協力して、保護観察や犯罪予防活動等を行っています。
 保護司の平均年齢は65.6歳で、会社員、主婦(夫)、農林水産業、宗教家、定年退職された方など幅広い年齢・分野の方々が保護司として活躍されています。それぞれの分野における豊富な人生経験を、犯罪や非行をした人の理解、指導及び援助に役立てていただいています。また、地域住民の一人として、犯罪や非行をした人を受け入れ、再び過ちを起こさせない地域づくり(犯罪予防活動)に取り組んでいただいています。
 



保護司は何人くらいいるのですか?

 令和5年1月1日現在、全国で約47,000人の保護司が活動しています。そのうち、男性が79.2%(34,382人)、女性が26.8%(12,574人)となっています。

保護司になりたいのですがどうすればよいのですか?

 保護司は、
  人格及び行動について、社会的信望を有すること
  職務の遂行に必要な熱意及び時間的余裕を有すること
  生活が安定していること
  健康で活動力を有すること
のすべての条件を満たしている方について、保護観察所長が、地方裁判所長、地方検察庁検事正、弁護士会長、学識経験者等で構成される保護司選考会に諮問した後、法務大臣に推薦して委嘱されます。禁錮以上の刑に処せられた人は保護司になれないなどの欠格条項もありますので、保護司の仕事に関心をお持ちの方は、まずは最寄りの保護観察所企画調整課までお気軽におたずねください。

犯罪被害者等施策について

各制度を利用したことや相談内容の秘密は守られますか?

 専任の担当者には守秘義務がありますので、相談内容や個人の秘密は守られます。また、利用者のご意向に反して、加害者に制度の利用が知られることはありませんので、ご安心ください。

意見等聴取制度や心情等聴取・伝達制度の聴取の際は、地方更生保護委員会又は保護観察所まで行かなくてはならないのですか?

 ご意見等を記述した書面のご提出も可能ですが、ご意見やお気持ちをより正確に伝えていただくためにも、仮釈放等の審理を行っている地方更生保護委員会又はお住まいの地域にある保護観察所にお越しいただき、直接お話しされることをお勧めします。なお、両制度の利用のためにお越しいただく場合は、所定の交通費をお支払いすることができます。

制度を利用するにあたって、何かサポートは受けられますか?

 意見等聴取制度においては、お住まいの地域にある保護観察所で、専任の担当者がご相談に応じたり、ご意見等をお聴きする場所への付添い又は同席のほか、ご意見等を記述する書面の代筆を行うことができます。また、心情等聴取・伝達制度においても同様に、ご相談に応じたり、心情等をお聴きする場所に同席することができます。

被害を受けたのは子どもで、現在は18歳ですが、親は意見等聴取制度や心情等聴取・伝達制度を利用できますか?

 意見等聴取制度や心情等聴取・伝達制度の申出をする時点でお子様が18歳以上の場合、保護者の方は法定代理人にあたりませんので、いずれの制度もご利用いただくことはできません。なお、保護者の方が成年後見人などの場合には、法定代理人にあたりますので、いずれの制度もご利用いただくことは可能です。

意見等聴取制度や心情等聴取・伝達制度の聴取の際に、事件のことを最初から話さなければなりませんか?

 ご意見やお気持ちをお聴きする職員は、被害にあわれた事件のことについて把握しています。事件については、必ずしも最初からお話しいただく必要はなく、ご意見やお気持ちのみをお話しいただいても差し支えありません。

意見等聴取制度や心情等聴取・伝達制度の聴取の際に第三者の同席は可能ですか?

 ご親族、弁護士や被害者支援センターの職員等の同席を特に希望される場合は、一定の条件の下、可能となる場合がありますので、あらかじめご相談ください。

心情等聴取・伝達制度を利用したのですが、再度、保護観察中の加害者に対し心情等を伝達することは可能ですか?

 保護観察中の加害者に対して心情等を伝達した結果や、伝達の際に加害者が述べたことなどを踏まえて、再度、加害者に対し心情等の伝達を希望される場合や前回とは異なる心情等の伝達を希望される場合などは、再度、心情等聴取・伝達制度をご利用いただくことが可能です。ご希望がある場合は、あらかじめご相談ください。

医療観察について

この制度の目的は何ですか。

 本制度は、最終的には対象となる人の社会復帰を促進することを目的としています。
 精神の障害のために善悪の区別がつかないなど、通常の刑事責任が問えない状態のうち、まったく責任を問えない場合を心神喪失、限定的な責任を問える場合を心神耗弱と呼びます。このような状態で重大な他害行為が行われることは、被害者に深刻な被害を生ずるだけでなく、その病状のために加害者となるということからも極めて不幸な事態です。そして、このような人については、必要な医療を確保して病状の改善を図り、再び不幸な事態が繰り返されないよう社会復帰を促進することが極めて重要であると言えます。
 本制度ができる以前は、精神保健福祉法に基づく措置入院制度等によって対応することが通例でしたが、(1)一般の精神障害者と同様のスタッフ、施設の下では、必要となる専門的な治療が困難である、(2)退院後の継続的な医療を確保するための制度的仕組みがないなどの問題が指摘されていました。
 この制度では、(1)裁判所が入院・通院などの適切な処遇を決定するとともに、国の責任において手厚い専門的な医療を統一的に行い、(2)地域において継続的な医療を確保するための仕組みを設けることなどが盛り込まれています。

どのような人がこの制度の対象となるのですか。

 本制度は、心神喪失又は心神耗弱の状態で重大な他害行為を行った人が対象となります。
 「重大な他害行為」とは、殺人、放火、強盗、不同意性交等、不同意わいせつ、傷害(軽微なものは対象とならないこともあります。)に当たる行為をいいます。
 これらの重大な他害行為を行い、(1)心神喪失者又は心神耗弱者と認められて不起訴処分となった人、(2)心神喪失を理由として無罪の裁判が確定した人、(3)心神耗弱を理由として刑を減軽する旨の裁判が確定した人(実刑になる人は除きます。)について、検察官が地方裁判所に対して、この制度による処遇の要否や内容を決定するよう申し立てることによって、この制度による手続が開始されます。
 これらの対象となる行為については、個人の生命、身体、財産等に重大な被害を及ぼすものであり、また、このような行為を行った人については、一般に手厚い専門的な医療の必要性が高く、仮に精神障害が改善されないまま、再び同様の行為が行われることとなれば、本人の社会復帰の大きな障害ともなります。
 そこで、国の責任による手厚い専門的な医療と、退院後の継続的な医療を確保するための仕組み等によって、その円滑な社会復帰を促進することが特に必要であるとして、本制度の対象とされたものです。

対象となる人の入院や通院はどのような手続で決定されるのですか。

 この制度では、対象となる人の入院や通院を、地方裁判所で行われる審判で決定することとしています。
 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行い、不起訴や無罪になった人については、検察官から地方裁判所に、適切な処遇の決定を求める申立てがなされます(個別の事情により申立てがなされないこともあります。)。申立てを受けた裁判所では、裁判官と精神科医(「精神保健審判員」といいます。)それぞれ1名から成る合議体を構成し、両者がそれぞれの専門性をいかして審判を行うことになります。
 審判の過程では、合議体の精神科医とは別の精神科医による詳しい鑑定が行われるほか、必要に応じ、保護観察所による生活環境(居住地や家族の状況,利用可能な精神保健福祉サービスなどその人を取り巻く環境をいいます。)の調査が行われます。裁判所では、この鑑定の結果を基礎とし、生活環境を考慮して、更に、必要に応じ精神保健福祉の専門家(「精神保健参与員」といいます。)の意見も聴いた上で、この制度による医療の必要性について判断することになります。
 また、対象となる人の権利擁護の観点から、当初審判では、必ず弁護士である付添人を付けることとし、審判においては、本人や付添人からも、資料提出や意見陳述ができることとしています。

指定医療機関とは何ですか。指定医療機関での医療はどのようなものなのですか。

 この制度における医療は、厚生労働大臣が指定する指定入院医療機関又は指定通院医療機関で行われます。これらを併せて「指定医療機関」といいます。
 入院決定を受けた人について、入院による医療を提供するのが「指定入院医療機関」です。指定入院医療機関は、国、都道府県又は特定(地方)独立行政法人が開設する病院のうちから指定され、対象となる人の症状の段階に応じ、人的・物的資源を集中的に投入し、専門的で手厚い医療を提供することとしています。
 入院中に、指定入院医療機関又は本人等からの申立てにより、入院による医療の必要性がないと認められたときは、裁判所により直ちに退院が許可されます。入院を継続する場合にも、少なくとも6か月に1回はその要否について裁判所が判断することとしています。
 一方、退院許可決定又は通院決定を受けた人については「指定通院医療機関」において、必要な医療を受けることになります。指定通院医療機関は、地域バランスを考慮しつつ、一定水準の医療が提供できる病院、診療所等から指定されます。
 これら指定医療機関が提供する医療については、いずれも全額国費により賄われることとされています。

保護観察所はこの制度でどのような役割を担っているのですか。

 精神障害者の地域ケアには、医療機関のほか、精神保健福祉センター、保健所など精神保健福祉関係の多くの機関が関わっているところですが、この制度では、対象となる人をめぐり、これら関係機関の連携が十分に確保されるよう、保護観察所が処遇のコーディネーター役を果たすこととされています。
 具体的には、関係機関と協議の上、対象となる一人ひとりについて、地域社会における処遇の具体的内容を定める「処遇の実施計画」を作成したり、地域での医療や援助に携わるスタッフによる「ケア会議」を随時開催するなどして、必要な情報の共有や処遇方針の統一を図ることとしています。このほか、本人と面談したり関係機関から報告を受けるなどして、その生活状況等を見守り(「精神保健観察」といいます。)、地域において継続的な医療とケアを確保していくこととしています。
 これらの業務を適切に実施するため、保護観察所には、精神保健や精神障害者福祉等の専門家である「社会復帰調整官」が配置され、本制度の処遇に従事しています。

指定入院医療機関からの退院はどのようにして進められるのですか。

 この制度では、指定入院医療機関に入院した人が、その地元等において円滑に社会復帰できるよう、入院当初から、退院に向けた取組を継続的に行うこととしています。
 具体的には、保護観察所が、指定入院医療機関や地元の都道府県・市町村などの関係機関と連携して「生活環境の調整」を行い、退院地の選定・確保や、そこでの処遇実施体制の整備を進めることとしています。
 対象となる人の社会復帰の促進のためには、退院後の医療を確保することはもとより、必要な生活支援を行うことも重要です。このため、精神保健福祉センターや保健所などの専門機関を通じ、その地域における精神保健福祉サービス等の現況も確認しつつ、具体的な援助の内容について検討することになります。
 調整の過程では、退院先の社会復帰調整官が、定期的又は必要に応じて指定入院医療機関を訪問し、本人から調整に関する希望を聴取したり、指定入院医療機関のスタッフと調整方針などについて協議します。また、入院中における外泊等の機会を利用して、本人と退院後の処遇に携わる関係機関のスタッフとが面談する機会を設けるなど、地域社会における処遇への円滑な移行に配慮することとしています。

地域社会における処遇はどのようにして進められるのですか。

 地域社会においては、指定通院医療機関が本制度の「入院によらない医療(通院医療)」を担当し、必要となる専門的な医療を提供することとなります。
 対象となる人の病状の改善と社会復帰の促進を図るためには、この必要な医療の継続を確保することが重要です。本制度では、継続的な医療を確保するため、保護観察所の社会復帰調整官が、必要な医療を受けているかどうかや本人の生活状況を見守り、必要な指導や助言を行う(「精神保健観察」といいます。)こととしています。
 ところで、対象となる人の社会復帰を促進するためには、医療を確保するだけでは十分ではありません。本人がその障害と向き合いつつ社会生活を営んでいくためには、必要な精神保健福祉サービス等の援助が行われることが大切です。
 これら地域社会において行われる通院医療、精神保健観察及び精神保健福祉サービス等の援助の内容や方法を明らかにするため、保護観察所では、関係する機関と協議して、対象となる一人ひとりについて「処遇の実施計画」を作成することとしています。地域社会における処遇は、この実施計画に基づいて、関係機関が相互に連携協力して進めることとしています。

関係機関の連携が重要だと思いますが、この制度ではどのようにして連携を確保することとしているのでしょうか。

 地域社会における処遇が円滑かつ効果的に行われるためには、これを担う指定通院医療機関、保護観察所、精神保健福祉関係等の諸機関が相互に連携協力して取り組むことが極めて重要です。
 本制度では、保護観察所が、指定通院医療機関や都道府県・市町村を始めとする精神保健福祉関係等の諸機関と協議して、対象となる一人ひとりについて「処遇の実施計画」を作成することとしています。この実施計画では、地域社会において必要となる処遇の内容と関係機関の役割を明らかにすることとしています。
 また、処遇の経過に応じ、保護観察所は、関係機関の担当者による「ケア会議」を開くこととしています。ケア会議では、各関係機関による処遇の実施状況などの必要な情報を相互に共有しつつ、処遇方針の統一を図ることとしています。
 関係機関相互の連携協力が重要であるとはいっても、このような体制が一朝一夕に整うはずはありません。このため、保護観察所では、あらかじめ指定通院医療機関、都道府県・市町村など精神保健福祉関係の諸機関との間で連絡協議の場を持つなどして、必要な情報交換を行い、平素から緊密な連携が確保されるよう、努めていくこととしています。

処遇の実施計画には、どのような内容が盛り込まれるのですか。

 保護観察所が、指定通院医療機関や、都道府県・市町村などの精神保健福祉関係等の諸機関と協議して作成する「処遇の実施計画」には、対象となる一人ひとりの病状や生活環境に応じて、必要となる医療、精神保健観察、援助の内容等が記載されます。  具体的には、例えば、医療については、治療の方針、必要とされる通院の頻度や訪問看護の予定などが、精神保健観察については、本人との接触方法(面接予定等)などが、援助については、利用する精神保健福祉サービスの内容や方法などが記載事項とされています。また、病状の変化等により緊急に医療が必要となった場合の対応方針や、関係機関及びその担当者の連絡先、ケア会議の開催予定なども盛り込むこととされています。
 実施計画の内容については、本人への十分な説明と理解が求められますし、作成した後も処遇の経過に応じ、関係機関相互が定期的に評価し、見直しを行うことが必要です。また、本制度による処遇終了後における一般の精神医療・精神保健福祉への円滑な移行についても視野に入れて、その内容を検討することも大切になります。

関係機関によるケア会議とは、どのようにして行われるのですか。

 地域社会における処遇を進める過程では、保護観察所と指定通院医療機関、精神保健福祉関係等の諸機関の各担当者等による「ケア会議」を行うこととしています。
 ケア会議を通じ、関係機関相互間において、処遇を実施する上で必要となる情報を共有するとともに、処遇方針の統一を図っていくこととしています。
 具体的には、処遇の実施計画を作成するための協議を行うほか、その後の各関係機関による処遇の実施状況や、本人の生活状況等の必要な情報を共有し、実施計画の評価や見直しについての検討を行います。また、保護観察所が裁判所に対して行う各種申立て(本制度による処遇の終了、通院期間の延長、(再)入院)の必要性についての検討や、病状の変化等に伴う対応などについても検討されます。
 ケア会議は、保護観察所が、定期的又は必要に応じて、あるいは関係機関等からの提案を受けて開催され、本人やその家族等も協議に加わることがあります。
 ケア会議で共有される本人に関する情報の取扱いについては、個人情報の保護の観点から特段の配慮が必要となります。

この制度による地域社会における処遇は、どのようにして終了するのですか。

 本制度による地域社会における処遇を受けている期間(以下「通院期間」といいます。)は、裁判所において退院許可決定又は通院決定を受けた日から、原則3年間となります。ただし、保護観察所又は対象者本人等からの申立てに応じ、裁判所において処遇終了決定がなされた場合には、その期間内であっても、本制度による処遇は終了することになります。
 一方で、3年を経過する時点で、なお本制度による処遇が必要と認められる場合には、裁判所の決定により、通じて2年を超えない範囲で、通院期間を延長することが可能とされています。
 処遇終了決定や通院期間の満了などにより、本制度に基づく地域社会における処遇が終了したとしても、引き続いて一般の精神医療や精神保健福祉サービスが必要である場合が通例であると考えられます。
 本制度による処遇の終了に当たっては、一般の精神医療や精神保健福祉サービス等が、必要に応じ確保されるように、本人の意向も踏まえながら、関係機関が相互に協議するなどして、十分に配慮することが大切です。

この法律と精神保健福祉法の関係について教えてください。

 この制度による入院決定を受けて、指定入院医療機関に入院している期間中は、精神保健福祉法の入院等に関する規定は適用されません。
 一方、通院決定又は退院許可決定を受けて、地域社会における処遇を受けている期間中は、原則として、この法律と精神保健福祉法の双方が適用されます。地域社会における処遇の実施体制は、精神保健福祉法に基づく精神保健福祉サービスを基盤として形づくられるものとも言えます。
 また、任意入院、医療保護入院、措置入院などの精神保健福祉法に基づく入院についても、地域社会における処遇の期間中は妨げられることはありませんので、これらを適切に行う必要があります。例えば、本人の病状の変化等により緊急に医療が必要となった場合などは、まず、精神保健福祉法に基づく入院を適切に行い、一定期間、病状の改善状況を確認するといった対応が考えられます。
 精神保健福祉法に基づく入院の期間中も、精神保健観察は停止することなく続けられ(通院期間も進行します。)、この場合、指定通院医療機関や保護観察所は、本人が入院している医療機関と連携し、必要とされる医療の確保とその一貫性について留意することとしています。