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平成15年版犯罪白書のあらまし 〈第1編〉平成14年の犯罪の動向

〈第1編〉平成14年の犯罪の動向

 刑法犯の概況第1図第2図第1表参照

 (1)  概説
   平成14年の刑法犯の認知件数は,369万3,928件(前年比3.1%増),一般刑法犯は285万4,061件(同4.3%増)であり,戦後の最多記録を7年連続で更新した。ただし,その増加のペースは前年比10%前後であった12,13年に比べると弱まっている。
 14年の刑法犯の認知件数を罪名別に見ると,窃盗(64.4%)と交通関係業過(22.7%)が多く両者で全体の約87%を占める。
 14年の刑法犯の検挙人員は4年連続で戦後最多を更新し,121万9,564人となっており,これを罪名別に見ると,交通関係業過が最も多く,次いで窃盗となっており,両者で全体の約86%を占めている。
 14年の刑法犯の発生率(人口10万人当たりの認知件数)は,2,899件(前年比85件増)と戦後最高水準にあり,一般刑法犯の発生率も前年比91件増の2,240件と高水準にある。
 検挙率は近年低下傾向にあり,14年は前年に比べて若干上昇したものの,刑法犯で38.8%(0.03ポイント上昇),一般刑法犯で20.8%(0.9ポイント上昇)となお低い水準にある。

 (2)  窃盗を除く一般刑法犯の動向第3図参照
   平成14年における窃盗を除く一般刑法犯の認知件数は,47万6,573件(前年比20.6%増),検挙件数は,18万8,809件(同8.2%増),検挙人員は,16万7,155人(同6.9%増)である。
 近年,検挙件数,検挙人員は横ばいないしは増加傾向にあるが,認知件数がそれ以上のペースで急激に増加しているため,検挙率が低下して14年は39.6%となった。主要罪名について見ると,殺人の認知件数は横ばいないし微増傾向であり,検挙率は94~98%台で安定しているが,強盗,傷害,暴行,脅迫,恐喝,強姦,強制わいせつ,器物損壊,住居侵入といった暴力的色彩の強い9罪種は,ここ数年は認知件数の増加と検挙率の低下が著しく,14年もほぼ同様の傾向が続いているが,その中では,13年に5割を割った強盗の検挙率が51.1%に回復したことが特徴となっている。

 (3)  窃盗の動向第4図参照
   窃盗は,ここ数年,認知件数の急増,検挙率の急落という傾向が続いていたが,平成14年は,認知件数の増加のペースが弱まり237万7,488件(前年比1.6%増)となり,検挙率も前年に比べて若干上昇して17.0%(1.3ポイント増)となっている。なお,重要窃盗犯(侵入盗・すり・ひったくり・自動車盗)は窃盗全体の20.1%を占め,検挙率は,28.0%で窃盗全体よりも高い水準を維持している。重要窃盗犯の中では,侵入盗が33万8,294件,ひったくりが5万2,919件と,それぞれ過去30年間で最多を記録した。

 特別法犯の概況

   平成14年における特別法犯の検察庁新規受理人員総数は,97万6,232人で前年比3万3,618人減となっている。この減少は道交違反の受理人員の減少によるところが大きい。罪名別では,道路交通法違反が86万1,143人(88.2%),覚せい剤取締法違反が2万4,801人(2.5%)と,両者で特別法犯の90%以上を占めている。なお,廃棄物処理法違反は,前年比530人増の4,341人となっている。道交違反を除く特別刑法犯の構成比を見ると,薬物関係が最も高く,以下,保安関係(銃刀法違反等),外事関係(入管法違反等)の順となっている。

3 各種犯罪の概況

 (1)  交通犯罪
   交通事故の発生件数は,昭和53年以降増加傾向にあったが,平成14年は前年に比べ減少した。負傷者数は,ここ数年は過去最多記録を更新していたが,14年は前年に比べ減少し,死亡者数は,5年以降減少傾向にあり,14年も前年より減少した。交通関係業過及び危険運転致死傷の検挙人員は,12年に戦後初の80万人を突破し,14年には87万2,006人となった。
 道交違反の送致件数では,交通三悪(飲酒運転,無免許運転,速度超過)が76.1%を占めている。

 (2)  薬物犯罪
   覚せい剤取締法違反の検挙人員は,昭和29年に最初のピークを迎えた後急激に減少したが,45年以降再び増加に転じて59年には第2次乱用期を迎え,63年まで2万人台で推移した。その後,減少したが,平成7年以降,増加傾向に転じて9年には第3次乱用期を迎えた。14年は前年比6.3%減の1万6,964人となっている。
 薬物押収量を見ると,覚せい剤は前年よりも約23キログラム増加し約442キログラム,大麻は過去最高を記録した13年よりも減少し約621キログラムとなり,MDMA等錠剤型合成麻薬は,過去最高の19万281錠となった。
 また,麻薬特例法違反に係る没収・追徴金額は,合計で約15億4,095万円である。

 (3)  財政経済犯罪
   税法違反の平成14年における検察庁新規受理人員は,法人税法違反が222人(前年比114人減),地方税法が93人(同64人増),所得税法が50人(同43人減),消費税法が16人(同14人増),相続税法が5人(同2人減)となっており,14年度における脱税額3億円以上の事件は26件,5億円以上の事件は13件となっている。

 (4)  ハイテク犯罪
   ハイテク犯罪の検挙件数は,平成7年以降増加傾向が続いており,14年は1,039件で初めて1,000件を超えた。罪名別では,児童買春・児童ポルノ禁止法違反,次いで詐欺が多く,一方では,インターネットを通じて取引されたけん銃が115丁押収されるなどコンピューター・ネットワークの悪用が多様化する傾向もうかがわれる。

 (5)  銃器犯罪
   平成14年の銃器犯罪は,銃器発砲事件数が前年の215件から158件に,また,これによる死亡者数が39人から24人に,それぞれ減少した。銃器使用犯罪の検挙件数に占める暴力団以外の者の比率は,42.3%(前年比0.1ポイント上昇)であり,押収けん銃に占める真正けん銃の割合は,90.4%である。

4 各種の犯罪者による犯罪の動向

 (1)  暴力団犯罪
   暴力団構成員等(暴力団構成員及び準構成員をいう。)は,平成8年から増加傾向を示し,14年末現在の暴力団構成員等は,約8万5,300人であり,その中でも準構成員が増加傾向にある。
 また,同年における暴力団相互の対立抗争事件の発生回数は,前年比53回減の28回であり,銃器使用率は,75.0%(前年比12.7ポイント低下)である。
 交通関係業過及び交通関係法令違反を除く暴力団構成員等の検挙人員は,平成元年以降3万人台を推移しており,14年は,3万824人(前年比93人減)となっている。

 (2)  外国人犯罪
   外国人による一般刑法犯検挙件数・人員を見ると,来日外国人以外の外国人では長期減少傾向にある。しかし,来日外国人では,昭和55年以降大きく増加しており,検挙人員において平成3年から,また,検挙件数において5年から,来日外国人がその他の外国人を超えている。14年の来日外国人による一般刑法犯の検挙人員は7,691人,検挙件数は2万4,259件であり,特別法犯の送致人員は8,522人,送致件数は1万488件である。一般刑法犯の検挙件数では,過去最高を記録した11年に次ぐ件数を,それ以外はそれぞれ過去最多を記録した。
 14年における来日外国人の検察庁終局処理人員を罪名別に見ると,一般刑法犯では,窃盗(4,270人),傷害(753人),強盗(372人)の順に多く,道交違反を除く特別刑法犯では,入管法違反(1万326人),覚せい剤取締法違反(830人),大麻取締法違反(256人)の順に多い。

 (3)  公務員犯罪
   平成14年の公務員犯罪は,検察庁新規受理人員が,前年比939人(3.4%)増の2万8,253人であり,罪名別では,自動車による業務上過失致死傷が84.4%を占める。
 14年に起訴された公務員の総数は,前年比68人減の3,222人である。また,14年の起訴率は11.6%である。

 (4)  精神障害者の犯罪
   平成14年における一般刑法犯検挙人員のうち,精神障害者は820人,精神障害の疑いのある者は1,539人で,両者の一般刑法犯検挙人員に占める比率は0.68%である。また,罪名別検挙人員に占める比率を見ると,放火の14.0%,殺人の8.5%が特に高くなっている。
 平成14年に検察庁で不起訴処分になった被疑者のうち,精神障害により,心神喪失と認められた者は360人であり,罪名別で見ると,殺人(70人)が最も多く,傷害(66人),放火(57人)の順となっている。また,精神障害により,心神耗弱と認められ,不起訴処分となった者は304人であり,罪名別では,傷害(69人)が最も多い。第一審裁判所で心神喪失を理由として無罪となった者は1人(強盗)であり,心神耗弱を理由として刑を減軽された者は69人であった。これを罪名別に見ると,殺人(22人)が最も多い。これらの総数734人を精神障害名別で見ると,多い順に,精神分裂病(465人),そううつ病(58人),アルコール中毒(42人)となっている。


 諸外国の犯罪動向との対比 

   フランス,ドイツ,英国,米国及び日本における2001年の犯罪について,主要な犯罪,殺人及び窃盗について対比した。主要な犯罪の認知件数は,比較対象国すべてにおいて前年を上回っているが,我が国の認知件数及び発生率は,近年上昇しているものの,他の4か国を大きく下回っている。検挙率はすべての国において低下している。殺人については,我が国は,5か国中,認知件数・発生率ともに最も低く,検挙率は,ドイツとともに9割を超え高い水準を維持している。窃盗については,我が国における検挙率はフランス,英国と同様低下傾向にあるが,認知件数,発生率は5か国中,最も低い。


● 目次
 
○ 〈はじめに〉
○ 〈第1編 平成14年の犯罪の動向〉
○ 〈第2編 犯罪者の処遇〉
○ 〈第3編 犯罪被害者の救済〉
○ 〈第4編 少年非行の動向と非行少年の処遇〉
○ 〈第5編 変貌する凶悪犯罪とその対策〉