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2021年の国際テロ情勢

2 最近の国際テロ情勢の注目点

(1) 「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)の動向

ISILは、一定の勢力を維持しながら、テロ及び宣伝活動を継続した。

ISILは、2019年3月にシリア及びイラクにおける支配地を喪失し、同年10月に最高指導者が交代した後も、両国に約1万人の戦闘員を擁し、約2,500万~5,000万ドルの資金を保持していると指摘されている。また、同組織は、両国において治安当局の活動が及びにくい山間部、砂漠地帯等に潜伏しつつ、治安部隊、同部隊に協力する住民等に対するテロを継続した。 特にイラクでは、1月に首都バグダッドで、3年ぶりにシーア派住民を標的とした自爆テロを実行後、4月、6月、7月にも相次いでテロを実行したほか、主にイラク北部及び東部で多数の送電塔を爆破し、市民生活に大きな影響を与えた。 宣伝活動においては、声明等の発出頻度の低下、使用する媒体の種類の減少が見られたが、2021年6月、広報担当アブ・ハムザ(当時)は、活発な活動が見られる「中央アフリカ州」及び「西アフリカ州」を称賛したほか、2020年に続き、全ての関連組織に対して収監されている同組織戦闘員の解放を呼び掛けた。また、アラビア語週刊誌で、関連組織を含むISILの戦果を定期的に配信し、自組織の影響力及びネットワークが維持されていることを誇示した。

ISIL関連組織の中では、特にモザンビーク等で活動する「中央アフリカ州」、ナイジェリアで活動する「西アフリカ州」及びアフガニスタン等で活動する「ホラサン州」の活動が注目された。「中央アフリカ州」は、3月、モザンビーク北部・パルマ市を襲撃し、一時的に同市の一部を占拠したほか、「西アフリカ州」は、5月、敵対する「ボコ・ハラム」の指導者を自爆に追い込み、同組織から多数の戦闘員を吸収したことで、勢力を拡大したとされる。また、「ホラサン州」は、8月、「タリバン」によるアフガニスタン掌握を受けて国外退避を求める市民らが殺到する空港付近で自爆テロを実行するなどした。

「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)の動向

(2) 「アルカイダ」の動向

「アルカイダ」は、声明等の発出件数こそ減少傾向にあるものの、声明、機関誌等において、各地の情勢等に触れつつ自派の思想を主張することで、影響力の維持、拡大を図った。

「アルカイダ」は、アフガニスタンで自派と協調する「タリバン」が8月に同国の実権を20年ぶりに掌握したことを受けて発出した声明(文書)において、「不信仰者」の筆頭たる米国に屈辱を与えて打ち負かしたと主張し、「タリバン」によるカブール制圧を「十字軍同盟に対する大勝利」と位置付けたほか、「タリバン」が「歴史的偉業」を果たしたとして、「タリバン」現最高指導者ハイバトゥッラー・アーフンドザーダのみならず、歴代の最高指導者を称賛した。アフガニスタン情勢の混乱が続く中、10月には、米国国防次官が、「アルカイダ」が1~2年で米国本土を攻撃する能力を持つ可能性を指摘するなど、「アルカイダ」の脅威について警鐘が鳴らされた。

「アルカイダ」は、米国同時多発テロ事件から20年目に当たる9月、最高指導者ザワヒリによる声明(映像)を発出し、同事件の実行犯を称賛したほか、パレスチナ情勢と絡めてイスラエル及び米国に対するテロを呼び掛けるなどした。ザワヒリをめぐっては、2020年に同人の死亡の可能性が指摘されていたところ、同声明では、1月にシリア北部・ラッカ県で発生したロシア軍基地襲撃テロへの言及が見られるなど、2020年に指摘された死亡説は否定された形となった。一方、11月に発出されたザワヒリによる声明(映像)では、最新情勢への言及は見られなかった。

「アルカイダ」の動向

(3) アジア地域における国際テロ関連動向

アジア地域では、「タリバン」がアフガニスタンで実権を掌握する中、同国が再びテロの温床となる可能性があるとの懸念が生じたほか、ISIL関連組織によるテロも各地で発生した。

アフガニスタンでは、「タリバン」が、同国全土で駐留外国軍の撤退が本格化した5月以降攻勢を強め、8月に入ると、短期間で各地の州都を陥落させ、同月15日には首都カブールを制圧した。その後「タリバン」は、「暫定内閣」を立ち上げ、国内統治に乗り出したが、ISIL関連組織「ホラサン州」が、「タリバン」やシーア派住民を標的とした攻撃やテロを繰り返すなど、不安定な治安情勢が継続した。こうした中で、「タリバン」の“傘”の下で活動する「アルカイダ」の活動の活発化が懸念されるなど、同国が再びテロの温床となる可能性が指摘された。

パキスタンでは、「パキスタン・タリバン運動」(TTP)が、4月、同国南西部・バルチスタン州に所在するホテルで自動車爆弾テロを実行したほか、8月には、「タリバン」のカブール制圧を受け、「改めて「タリバン」へ忠誠を誓う」との声明を発出した。他方、TTPは11月、「タリバン」の仲介でパキスタン政府との間で1か月間の停戦に合意したが、その後、パキスタン政府に合意違反があったなどとして停戦を延長しない旨発表した。

インドネシアでは、治安当局による「ジャマー・アンシャルット・ダウラ」(JAD)、「東インドネシアのムジャヒディン」(MIT)等ISIL関連組織に対する摘発が相次いだが、3月には、JADが同国中部・南スラウェシ州マカッサルのカトリック教会で自爆テロを実行するなど、これらの組織によるテロが継続した。一方、「ジェマー・イスラミア」(JI)は、近年テロを起こしていないが、活動基盤を堅持し、軍事活動を強化していたことが明らかになった。

フィリピンでは、治安当局による「アブ・サヤフ・グループ」(ASG)や「バンサモロ・イスラム自由戦士」(BIFF)の一部グループ、「マウテ・グループ」等ISIL関連組織に対する摘発に加え、メンバーの投降も相次いだが、これらの組織は、同国南部のミンダナオ島及びスールー諸島を拠点に活動を続け、治安当局や民間人を標的としたテロを継続した。

アジア地域における国際テロ関連動向

(4) 欧米諸国における国際テロ関連動向

欧米諸国では、引き続き、イスラム過激主義に感化されたとみられる者による「一匹狼」型テロや摘発事案が発生した。

フランスでは、4月、首都パリ近郊ランブイエの警察署で、イスラム過激主義の影響を受けていたとみられる男が職員を刃物で殺害した。英国では、10月、南東部・エセックス州リーオンシーで、ISILとの関連を自認していたとされる男が、下院議員を刃物で殺害した。

ISIL関連の摘発事案も相次いで発生し、ドイツでは、9月、ISILと関連を有するとされるシリア人の男が、南部・ハーゲンにおいてシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)の襲撃を計画したとして逮捕されたほか、10月には、西部・ボンにおいてISILに感化され、テロを計画していたとされる若者5人が家宅捜査を受けた。また、デンマーク及びドイツでは、2月、ISILの影響を受けたとみられる者を含む14人が、爆発物や火器を製造するための材料等を入手したなどとして逮捕されたほか、イタリアでは、12月、北東部ベネチア近郊において、ISILのメンバーとされるチュニジア人の男が逮捕され、スペインでは、10月、ISILを支持するとされる男が率いるテロ細胞のメンバー少なくとも4人が、カタルーニャ州バルセロナ及び首都マドリードにおいて、攻撃に用いる自動小銃の購入を企図したなどとして逮捕された。

ISILに参加した外国人戦闘員(FTF)の帰還をめぐっては、デンマークで、4月、シリアから帰還したFTFを含む6人が、テロ資金の移送に関与したなどとして逮捕されたほか、ギリシャでは、7月、シリアからの帰還後にモロッコでテロを計画していたとされるモロッコ出身のFTFが逮捕された。

欧米諸国における国際テロ関連動向

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