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4. 公判段階での被害者支援

  検察官が事件を裁判所に公判請求(起訴)した後は、裁判所で公判が行われます。検察官は、公判で犯罪を証明する証拠を提出し、証人尋問を行ったりして適正な刑罰の適用を求めます。

1 犯罪被害者等に関する情報の保護

  裁判所は、性犯罪などの被害者の方の氏名等(被害者特定事項)について、公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができます。決定された場合には、起訴状の朗読などの訴訟手続は、被害者の方の氏名等の情報を明らかにしない方法で行われます。
  検察官は、証人尋問請求に先立ち、弁護人に対し、証人の氏名及び住居を知る機会を与えなければならず、また、証拠書類等の取調請求等に先立ち、弁護人にこれを開示しなければなりませんが、被害者特定事項が明らかにされることにより、被害者の方などの名誉又は社会生活の平穏が著しく害されるおそれや、その身体又は財産に害を加えられるなどのおそれがあると認められるときは、弁護人に対し、その旨を告げ、被告人の防御に関して必要がある場合を除いて、被害者特定事項が他の人に知られないようにすることを求めることができます。ただし、被告人に知られないようにすることを求めることができるのは、被害者特定事項のうち起訴状に記載された事項以外のものに限られます。
 また、検察官は、被害者の方などの身体又は財産に害を加えられるなどのおそれがあると認められるときは、被告人の防御に実質的な不利益を生じるおそれがある場合を除き、弁護人に被害者の方などの氏名又は住居を開示した上で、これを被告人に知らせてはならない旨の条件を付することができ、特に必要があるときは、当該氏名等を弁護人にも開示せず、代替的な呼称等を知らせることもできます。
  これらの制度等についてご相談がある場合には、担当する検察官にお申し出ください。

2 証人尋問

 被告人の犯罪を証明するため、被害者の方には、被害に遭った状況や被告人に対する気持ちを、目撃者の方には事件、事故を目撃した状況などを裁判所で証言していただくことがあります。

Q1 警察や検察庁で事件の状況を説明して、調書も作成してもらったのに、裁判でまた証言しなければならないのですか。

A 警察や検察庁で作成した供述調書は、被告人の同意がなければ、通常、証拠として裁判所に提出することができないと法律で定められており、被害の状況等を証明するためには、被害者や目撃者の方に公判で証言してもらわなければならないことがあります。また、裁判官や裁判員に被害者の方の生の声を聞いてもらい、被害の様子をよく理解してもらった方がよい場合もあります。このような事情から、被害者や目撃者の方に証言をお願いすることがありますので、ご理解ください。

Q2 私は、性犯罪の被害を受けましたが、被告人の前で証言するのはとても不安です。何か配慮してもらうことができますか。

A 証言してくださる方の精神的な負担を軽くするため、裁判所の判断によって、(1)証人への付添い、(2)証人の遮へい、(3)ビデオリンク方式での証人尋問の措置をとることができ、これらが併用されることもあります。

○証人への付添い
  性犯罪の被害者の方や小さなお子様などが、刑事事件の証人として法廷で証言するときは、大きな不安や緊張を覚えることがありますので、このような不安や緊張を和らげるため、証人が証言している間、家族や心理カウンセラーなどが、証人のそばに付き添うことができるようにするものです。

証人への付添い

『証人への付添い』



○証人の遮へい
 証人が、法廷で証言する際に、被告人や傍聴人から見られていることで心理的な圧迫を受けるような場合に、その精神的な負担を軽くするため、証人と被告人や傍聴人との間についたてなどを置き、相手の視線を気にしないで証言できるようにするものです。

証人の遮へい

『証人の遮へい』



○ビデオリンク方式
 性犯罪の被害者の方などが、関係者の全員そろった法廷で証言することに大きな精神的な負担を受けるような場合、このような負担を軽くするため、証人に別室で在席していただき、法廷と別室とをケーブルで結び、モニターを通じて尋問を行うという証人尋問の方法です。

『ビデオリンク方式』

3 傍聴


『傍聴』
 裁判は、公開の法廷で行われますので、誰でも傍聴することができます。そして、被害者やご遺族等の方々は、優先的に裁判を傍聴できる制度が設けられています。

Q 被害者等が優先的に裁判を傍聴できる制度とはどのようなものですか。

A 社会の関心の高い事件では、傍聴希望者が多いために、裁判所により抽選で傍聴券が発行される場合があります。
  しかし、被害者やご遺族等の方々のお立場を考え、裁判所は、被害者やご遺族等の方々の傍聴席の確保について、可能な限り配慮することとしています。
  被害者やご遺族等の方々が傍聴を希望される場合で、傍聴希望者が多数に上ることが予想される場合には、あらかじめ、事件を担当する裁判所や検察官・検察事務官又は被害者支援員にご相談ください。

4 被害者参加制度

  被害者参加制度とは、一定の事件の被害者やご遺族等の方々が、刑事裁判に参加して、公判期日に出席したり、被告人質問などを行うことができるというものです。
  なお、刑事裁判への参加を許可された被害者やご遺族等の方々は「被害者参加人」と呼ばれます。

Q1 誰が被害者参加制度を利用できるのですか。

A 殺人、傷害、危険運転致死傷などの故意の犯罪行為により人を死亡させたり傷つけた事件や、強制性交等・強制わいせつ、逮捕・監禁、過失運転致死傷などの事件の被害者の方、被害者が亡くなった場合及びその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹などの方々です。


Q2 どのような手続で刑事裁判に参加するのですか。

A 被害者やご遺族等の方々から、刑事裁判への参加について、あらかじめ、事件を担当する検察官にお申し出ください。申出を受けた検察官は、被害者が刑事裁判に参加することに対する意見を付して裁判所に通知します。


Q3 希望すれば必ず刑事裁判に参加できますか。

A 裁判所が、被告人又は弁護人の意見を聴き、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮し、相当と判断して許可した場合には、被害者参加人として刑事裁判に参加できます。また、参加が許可されて被害者参加人となった場合でも、希望される手続によっては、参加が許可されない場合があります。


Q4 被害者参加人は刑事裁判でどのようなことができますか。

A 
 ア 原則として、公判期日に、法廷で、検察官席の隣などに着席し、裁判に出席することができます。
 イ 証拠調べの請求や論告・求刑などの検察官の訴訟活動に関して意見を述べたり、検察官に説明を求めることができます。
 ウ 情状に関する証人の供述の証明力を争うために必要な事項について、証人を尋問することができます。
 エ 意見を述べるために必要と認められる場合に、被告人に質問することができます。
 オ 証拠調べが終わった後、事実又は法律の適用について、法廷で意見を述べることができます。

『被害者参加制度』
Q5 被害者参加制度を利用する際に弁護士から援助を受けられますか。

A 被害者参加に際して、弁護士(被害者参加弁護士)に委託して援助を受けることができ、また、経済的に余裕のない方については、裁判所が被害者参加弁護士を選定し、国がその費用を負担する制度(被害者参加人のための国選弁護制度)もあります。
   被害者参加人の方が弁護士に援助を依頼された場合には、検察官は、被害者参加弁護士と連絡・協力して裁判に臨みます。


Q6 被害者参加人のための国選弁護制度はどのような場合に利用できるのですか。

A 被害者参加人が、公判期日への出席や被告人質問などの行為を弁護士に委託しようとする場合であって、被害者参加人の資力(現金、預金等。6か月以内に犯罪行為を原因として治療費などの費用を支出する見込みがあれば、その費用は資力から控除されます。)が200万円に満たないときには、裁判所に対して国選被害者参加弁護士の選定を求めることができます。
  ご希望がある場合は、日本司法支援センター(法テラス)にお申し出ください(連絡先等はこちらをご覧ください。)。

『被害者参加人のための国選弁護制度』
Q7 被害者参加制度を利用する際に、交通費などは支払われるのですか。

A 被害者参加制度を利用して刑事裁判に出席された方に、日本司法支援センター(法テラス)から旅費、日当など(被害者参加旅費等)が支払われる制度があります。


Q8 支給の対象となるのはどういった場合ですか。

A 被害者参加人が公判期日等に出席した場合です。ただし、被害者参加人が傍聴席で傍聴したにとどまる場合や「被害者等」として法廷で心情等の意見陳述を行ったのみの場合は対象となりません。もっとも、被害者参加人として公判期日等に出席した際に心情等の意見陳述をした場合には、支給の対象となります。

『被害者参加人のための旅費等支給制度』
 

Q9 請求の方法を教えてください。

A  「被害者参加旅費等請求書」[PDF]に所定の必要事項を記載して、必要書類と共に、裁判に出席した際に、出席した裁判所へ提出してください。制度の詳細や書類の記載方法などは、「被害者参加旅費等のお知らせ」[PDF]、「被害者参加旅費等請求書の記載方法」[PDF]をご覧ください。

 

Q10 請求に期限はありますか。

A  裁判があった日から30日以内です。

5 心情等の意見陳述制度

  被害者やご遺族等の方々が法廷で心情等の意見を述べることができる制度があります。

Q 心情等の意見陳述制度とはどのようなものですか。

 A 被害者やご遺族等の方々が、被害についての今の気持ちや事件についての意見を法廷で述べたいという希望を持っている場合に、このようなお気持ちやご意見を述べてもらう制度です。
  これにより、裁判が被害者やご遺族等の方々の気持ちや意見をも踏まえた上で行われることがより一層明確になりますし、さらに、被告人に被害者やご遺族等の方々の気持ちなどを直接聞く機会を与えることで、被告人の反省を深めることにも役立ちます。
  被害者の親族の方は、被害者の方が亡くなったときに限らず、被害者の心身に重大な故障がある場合にも意見を述べることができます。意見陳述の希望がある場合には、あらかじめ、担当する検察官にお申し出ください。 
  これ以外に、被害者やご遺族等の方々が刑事裁判に参加する制度についてこちらをご覧ください。

『心情等の意見陳述制度』

6 冒頭陳述の内容を記載した書面の交付

  被害者やご遺族等の方々は、検察官が公判でどのような事実を立証しようとしているのか、その内容について深い関心を持たれていると思います。
  そこで、検察庁では、検察官が冒頭陳述(裁判の初めに、検察官が証明しようとしている事実を明らかにすること)に際して、被害者やご遺族等の方々の希望があるときには、原則として、冒頭陳述実施後に、その内容を記載した書面を交付することとしております。同書面の交付を希望される方は、担当の検察官・検察事務官又は被害者支援員にご相談ください。

7 公判記録の閲覧・コピー

  公判中の記録を被害者やご遺族等の方々が閲覧・コピーできる制度があります。

Q1 公判中の記録の閲覧・コピーができる制度について教えてください。

A 被害者やご遺族等の方々から申出がある場合で、正当でない理由による場合、相当と認められない場合を除き、刑事事件が裁判所で審理されている間に、原則として、被害者やご遺族等の方々が、その裁判所の保管する公判記録を閲覧・コピーすることが認められています。
  ご希望がある場合は、裁判所に申し出てください。
  また、被害者やご遺族等の方々は、被害に遭われた事件と同種の犯罪行為に係る、その被告人の刑事事件についても、損害賠償請求の必要があって、相当と認められるときは、公判中の記録を閲覧・コピーすることが認められています。ご希望がある場合は、担当する検察官・検察事務官又は被害者支援員にお申し出ください。


Q2 公判中の記録の全ての部分を閲覧・コピーすることができるのですか。

A 裁判の進行上支障があったり、関係者のプライバシーを侵害するおそれがあるなどと裁判所が判断した場合には、閲覧・コピーが制限されることもあります。

8 刑事和解

 
 刑事手続においても、民事裁判での和解と同じ効力を与える制度があります。

Q 刑事和解とはなんですか。

A 被告人と被害者やご遺族等の方々との間で、犯罪から生じた損害などに関する民事上の請求について、裁判外で和解(示談)が成立した場合には、事件を審理している刑事の裁判所に申し立てると、裁判所にその合意の内容を公判調書に記載してもらうことができます。
 この公判調書には、民事裁判で裁判上の和解が成立したのと同じ効力が与えられます。
 こうすることで、被告人が和解(示談)した際の約束を守らずにお金を払わない場合には、被害者やご遺族等の方々は、別の民事裁判を起こさなくても、この公判調書を利用して、強制執行の手続をとることができるようになります。
 なお、一定の重大犯罪については、刑事裁判所に対し、被告人に対する損害賠償を申し立てることができます(詳しくは次項「損害賠償命令制度」を参照してください)。

民事訴訟について
  • 刑事和解

『刑事和解』

9 損害賠償命令制度

 
  刑事手続に付随して、被害者やご遺族等の方々による損害賠償請求に係る民事訴訟手続の特例として、紛争を刑事手続の成果を利用して簡易かつ迅速に解決すべく設けられた制度があります(通常の民事訴訟手続についてはこちらをご覧ください。)。

Q1 損害賠償命令制度とはどのようなものですか。

A  損害賠償命令制度は、刑事裁判の起訴状に記載された犯罪事実に基づいて、その犯罪によって生じた損害の賠償を請求するものです。申立てを受けた刑事裁判所は、刑事事件について有罪の判決があった後、刑事裁判の訴訟記録を証拠として取り調べ、原則として4回以内の審理期日で審理を終わらせて損害賠償命令の申立てについて決定をします。この決定に対して、当事者のいずれかから異議の申立てがあったときは、通常の民事訴訟の手続に移ります(この場合でも審理に必要な刑事裁判の訴訟記録が民事の裁判所に送付されます。)。
  このように、損害賠償命令制度は
(1) 刑事手続の成果を利用するため、被害者やご遺族等の方々による被害の事実の立証がしやすく、基本的に損害の賠償額を中心とした審理をすることになるので、簡易迅速に手続を進めることができる
(2) 申立手数料が2,000円であるなど利用しやすい
(3) 通常の民事訴訟の手続に移った場合でも、訴訟記録をコピーして民事の裁判所に提出する手間が省ける

など、被害者やご遺族等の方々の損害賠償請求に関する労力を軽減する仕組みになっています。


Q2 誰が損害賠償命令制度を利用できるのですか。

A 殺人、傷害などの故意の犯罪行為により人を死亡させたり傷つけた事件などの被害者又はその相続人等の方です。


Q3 どのような手続で申立てを行うのですか。

A 刑事事件を担当している裁判所に対して、損害賠償命令の申立書を提出する必要があります。
  なお、損害賠償命令制度を利用する際に、その手続などについて弁護士に依頼することもでき、経済的な理由で弁護士費用等のお支払いが困難な方については、日本司法支援センター(法テラス)の「民事法律扶助」による費用立替制度を利用できる場合があります。「民事法律扶助」について、詳しくは法テラスへお問い合わせください(連絡先等はこちらをご覧ください。)。


Q4 申立てに期限はありますか。

A 申立ては、対象となる刑事事件が起訴された時から審理手続(判決宣告を含まない。)が終結するまでに行う必要があります。
  • 損害賠償命令制度

『損害賠償命令制度』

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