4. 公判段階での被害者支援
1 犯罪被害者等に関する情報の保護
2 証人尋問
Q1 警察や検察庁で事件の状況を説明して,調書も作成してもらったのに,裁判でまた証言しなければならないのですか。
A 警察や検察庁で作成した供述調書は,被告人の同意がなければ,通常証拠として裁判所に提出することはできず,被害の状況等を証明するためには,被害者や目撃者の方に公判で証言してもらわなければならないことがあります。また,裁判官に被害者の方の生の声を聞いてもらい,被害の様子をよく理解してもらった方がよい場合もあります。このような事情から,被害者や目撃者の方に証言をお願いすることがありますので,ご理解ください。
Q2 私は,性犯罪の被害を受けましたが,被告人の前で証言するのはとても不安です。何か配慮してもらうことができますか。
A 証人の精神的な負担を軽くするための措置として,(1)証人への付添い,(2)証人の遮へい,(3)ビデオリンク方式での証人尋問があります。
証人への付添い
性犯罪の被害者の方や子どもの方などが,刑事事件の証人として法廷で証言するときは,大きな不安や緊張を覚えることがありますので,このような不安や緊張を和らげるため,証人が証言している間,家族や心理カウンセラーなどが,証人のそばに付き添うことができるようにするものです。

証人への遮へい
証人が,法廷で証言する際に,被告人や傍聴人から見られていることで心理的な圧迫を受けるような場合に,その精神的な負担を軽くするため,証人と被告人や傍聴人との間につい立てなどを置き,相手の視線を気にしないで証言できるようにするものです。

ビデオリンク方式
性犯罪の被害者の方などが,関係者の全員そろった法廷で証言することに大きな精神的な負担を受けるような場合,このような負担を軽くするため,証人に別室で在席していただき,法廷と別室とをケーブルで結び,モニターを通じて尋問を行うという証人尋問の方法です。

3 傍聴

Q 被害者等が優先的に裁判を傍聴できる制度とはどのようなものですか。
A 社会の関心の高い事件では,傍聴希望者が多いために,裁判所により抽せんで傍聴券を発行される場合があります。
しかし,被害者やご遺族等の方々のお立場にかんがみ,裁判所は,被害者やご遺族等の方々の傍聴席の確保について,可能な限り配慮することとしています。
被害者やご遺族等の方々が傍聴を希望される場合で,傍聴希望者が多数に上ることが予想される場合には,あらかじめ,事件を担当する裁判所や担当の検察官・検察事務官又は被害者支援員にご相談ください。
4 冒頭陳述の内容を記載した書面の交付
そこで,検察庁では,検察官が冒頭陳述に際してあらかじめ書面を作成してこれを裁判所に提出した場合において,被害者やご家族・ご遺族等の方々の希望があるときには,原則として,冒頭陳述実施後に,その内容を記載した書面を交付することとしております。同書面の交付を希望される方は,担当の検察官・検察事務官又は被害者支援員にご相談ください。
5 公判記録の閲覧・コピー
Q 公判中の記録の閲覧・コピーができる制度について教えてください。
A 被害者やご遺族等の方々から申出がある場合で,正当でない理由による場合,相当と認められない場合を除き,刑事事件が裁判所で審理されている間に,原則として,被害者やご遺族等の方々が,その裁判所の保管する公判記録を閲覧・コピーすることが認められています。
ご希望がある場合は,裁判所に申し出てください。
また,いわゆる同種余罪の事件の被害者やそのご遺族等の方々についても,損害賠償請求の必要があって,相当と認められるときは,公判中の記録を閲覧・コピーすることが認められています。ご希望がある場合は,担当する検察官・検察事務官又は被害者支援員にお申し出ください。
6 被害者の意見陳述制度

Q 被害者の意見陳述制度とはどのようなものですか。
A 被害者やご遺族等の方々が,被害についての今の気持ちや事件についての意見を法廷で述べたいという希望を持っている場合に,このようなお気持ちやご意見を述べてもらう制度です。
これにより,裁判が被害者やご遺族等の方々の気持ちや意見をも踏まえた上で行われることがより一層明確になりますし,さらに,被告人に被害者やご遺族等の方々の気持ちなどを直接聞く機会を与えることで,被告人の反省を深めることにも役立ちます。
なお,これまで被害者の親族の方には,被害者の方が亡くなったときのみ意見を述べることができましたが,これに加えて,被害者の心身に重大な故障がある場合にも意見を述べることができることになりました。意見陳述の希望がある場合には,あらかじめ,担当する検察官にお申し出ください。
7 被害者参加制度

Q1 被害者参加制度とはどのようなものですか。
A 一定の事件の被害者やご遺族等の方々が,刑事裁判に参加して,公判期日に出席したり,被告人質問などを行うことができるというものです。
なお,刑事裁判への参加を許可された被害者やご遺族等の方々は「被害者参加人」と呼ばれます。
Q2 誰が被害者参加制度を利用できるのですか。
A 殺人,傷害などの故意の犯罪行為により人を死亡させたり傷つけた事件や,強姦・強制わいせつ,逮捕・監禁,自動車運転過失致死傷などの事件の被害者の方,被害者が亡くなった場合及びその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者,直系の親族若しくは兄弟姉妹などの方々です。
Q3 どのような手続で刑事裁判に参加するのですか。
A 被害者やご遺族等の方々から,刑事裁判への参加について,事件を担当する検察官にお申し出ください。申出を受けた検察官は,被害者が刑事裁判に参加することに対する意見を付して裁判所に通知します。
Q4 希望すれば必ず刑事裁判に参加できますか。
A 裁判所が,被告人又は弁護人の意見を聴き,犯罪の性質,被告人との関係その他の事情を考慮し,相当と判断して許可した場合には,被害者参加人として刑事裁判に参加できます。また,参加が許可されて被害者参加人となった場合でも,希望される手続によっては,参加が許可されない場合があります。
Q5 被害者参加人は刑事裁判でどのようなことができますか。
A
ア 原則として,公判期日に,法廷で,検察官席の隣などに着席し,裁判に出席することができます。
イ 証拠調べの請求や論告・求刑などの検察官の訴訟活動に関して意見を述べたり,検察官に説明を求めることができます。
ウ 情状に関する証人の供述の証明力を争うために必要な事項について,証人を尋問することができます。
エ 意見を述べるために必要と認められる場合に,被告人に質問することができます。
オ 証拠調べが終わった後,事実又は法律の適用について,法廷で意見を述べることができます。
8 被害者参加人のための国選弁護制度

Q 被害者参加人のための国選弁護制度はどのような場合に利用できるのですか。
A 被害者参加人は,公判期日への出席や被告人質問などの行為を弁護士に委任することもできますが,資力(現金,預金等。3か月以内に犯罪行為を原因として治療費などの費用を支出する見込みがあれば,その費用は資力から控除されます。)が150万円に満たない場合には,弁護士(「被害者参加弁護士」と呼ばれます。)の選定を求めることができます。
ご希望がある場合は,日本司法支援センター(法テラス)にお申し出ください。
電話:0570−079714
9 刑事和解

Q 刑事和解とはなんですか。
A 被告人と被害者やご遺族等の方々との間で,犯罪から生じた損害などに関する民事上の請求について,裁判外で和解(示談)が成立した場合には,事件を審理している刑事の裁判所に申し立てると,裁判所にその合意の内容を公判調書に記載してもらうことができます。
この公判調書には,民事裁判で裁判上の和解が成立したのと同じ効力が与えられます。
こうすることで,被告人が和解(示談)した際の約束を守らずにお金を払わない場合には,被害者やご遺族等の方々は,別の民事裁判を起こさなくても,この公判調書を利用して,強制執行の手続をとることができるようになります。
なお,一定の重大犯罪については,刑事裁判所に対し,被告人に対する損害賠償を申し立てることができます(詳しくは次項「損害賠償命令制度」を参照してください)。
→民事訴訟について
10 損害賠償命令制度
Q 損害賠償命令制度とはどのようなものですか。
A 殺人,傷害などの故意の犯罪行為により人を死亡させたり傷つけた事件などの被害者又はその相続人などの方は,刑事裁判所に対し,起訴後,刑事裁判の弁論が終わるまでの間に,被告人に対する損害賠償命令を申し立てることができます。
この申立ては,刑事裁判の起訴状に記載された犯罪事実に基づいて,その犯罪によって生じた損害の賠償を請求するものです。申立てを受けた刑事裁判所は,刑事事件について有罪の判決があった後,この申立てについての審理をそのまま担当し,刑事裁判の訴訟記録をこの審理においても取り調べた上,原則として4回以内の審理期日で審理を終わらせて損害賠償命令の申立てについて決定をすることになります。この決定に対して,両当事者から異議の申立てがあった場合などは,通常の民事訴訟の手続に移ります(この場合でも審理に必要な刑事裁判の訴訟記録が民事の裁判所に送付されます)。
この制度では,刑事裁判所が民事の損害賠償の審理を担当し,刑事裁判の訴訟記録を取り調べることなど刑事手続の成果を利用することにより,被害者やご遺族等の方々による被害の事実の立証がしやすく,基本的に損害の賠償額を中心とした審理をすることになるので,簡易迅速に手続を進めることができます。さらに,申立手数料が2,000円であるなど利用しやすい制度であり,また,通常の民事訴訟の手続に移った場合でも,訴訟記録をコピーして民事の裁判所に提出する手間が省けるなど,被害者やご遺族等の方々の損害賠償請求に関する労力を軽減する仕組みになっています。
