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アジ研による初めてのユース国際研修を開催しました

ユース国際研修について

国連アジア極東犯罪防止研修所(アジ研)は,令和3年8月2日から6日までの5日間,第1回ユース国際研修を開催しました。アジ研は,1962年の設立から60年近くにわたり,主に発展途上国の刑事司法実務家を対象とした数多くの国際研修を実施してきましたが,この度のユース国際研修は,日本の大学生や大学院生,海外からの留学生を対象として企画したもので,アジ研として初めての試みでした。新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえて,実施方式は完全オンラインとなりましたが,日本から学生12名,海外からの留学生11名の計23名が参加しました。

画像:森永所長のあいさつ

森永所長のあいさつ

薬物問題に関する講義とディスカッション

今回の研修テーマは,「薬物に関連する犯罪の防止及び薬物からの離脱のための若者の取組について」でした。薬物は,日本だけでなく国際的にも大きな課題です。薬物の製造・流通の実情や,そこに深く関わる犯罪組織の存在,薬物を規制する法制度の在り方,薬物使用による健康への深刻な影響や依存症からの回復支援など,様々な面からの対応が必要です。本研修では,こうした問題について理解を深めるために,多様な講義が実施されました。国連薬物・犯罪事務所・東南アジア大洋州地域事務所(UNODC ROSEAP)の海外専門家による講義では,東南アジア地域における薬物の情勢や薬物依存の治療の取組などについて学びました。また,法務総合研究所研究部からは国内の薬物犯罪について,統計や研究結果に基づいた解説が行われ,さらに,アジ研教官による講義を通じて,薬物犯罪に対する日本の刑事司法・犯罪者処遇機関における実務の実際について理解を深めてもらいました。

参加者は,こうした薬物問題への理解を土台にして,グループに分かれてディスカッションを行いました。薬物の問題を考える上では,薬物使用の防止と離脱支援の両面が重要であることから,グループワークでは,「青年の薬物使用を防止するための効果的な教育プログラムをどうデザインするか」,薬物使用を繰り返してきた仮想のケースに対する「最善の処遇の方法」について議論してもらいました。各グループとも,白熱した議論が行われ,その結果は最終日に全員の前で発表され,他のグループからの質疑や教官からの講評がなされました。

画像:研修の様子

研修の様子

おわりに

この度のユース国際研修は,アジ研にとって初めての試みでしたが,研修の受入れ規模を上回る多くの応募をいただくなど,学生の関心の高さがうかがえました。参加した学生は,講義でも積極的に質問をし,ディスカッションではそれぞれの考えをしっかりと伝え合って議論を深めるなど,皆さん研修に意欲的で,アジ研の職員にとっても大いに刺激となりました。今回の研修には,様々な専攻分野の学生が参加するとともに,多くの国の留学生も参加してくれて多様な参加者構成となったことも,学生にとって大いに刺激になったのではないかと思います。

国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて,様々な社会的な課題に関する議論や活動への若者の参加を後押しすることは,国際的にも重要なテーマとなってきており,これは刑事司法分野でも同様です。今回の研修に参加された皆さんが,薬物の問題への関心を高めるだけでなく,今後も様々な社会的な課題について学びを深め,次代を担う存在として活躍されるよう,心からエールを送りたいと思います。