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サイバー犯罪に対して国際的に取り組む!アジ研の第178回国際研修、オンラインで開催

アジ研の研修とは

国連アジア極東犯罪防止研修所(アジ研)は、国連との協定に基づき法務省が運営しており、開発途上国の刑事司法実務家を対象とした国際研修を実施しています。これまでの約60年間に、142か国から6,200人以上の研修員が参加しました。なお、新型コロナウイルス感染症の流行による渡航制限等のため、昨年度からオンラインで研修を実施しておりましたが、令和4年度の秋頃から対面での研修を再開するべく準備を進めております。

刑事司法研修

第178回国際研修は、刑事司法(捜査、訴追、裁判及び国際協力)に関する研修であり、「サイバー犯罪-電子証拠が問題となるあらゆる形態の犯罪」をテーマとして、令和4年6月14日から同年7月7日までの間実施し、14か国から28名の研修員が参加しました。

研修概要

情報通信技術の普及・発展により、新たな手口のサイバー犯罪が次々と出現し、それへの効果的な対処が各国における重要課題の一つとなっております。今回の研修では、サイバー犯罪対策における最先端の取組を紹介してもらうべく、ユーロジャスト(欧州司法機構)のリナ・アクス氏から「サイバー犯罪の捜査及び国境を越える電子証拠収集の諸問題」と題する講義を、米国司法省のトーマス・シャラ・ドハティ氏から「汚職事件の捜査・訴追における電子証拠の効果的活用」と題する講義をそれぞれ行っていただきました。いずれの講義でも最先端の知見や豊富な経験に基づく実務的取組等が紹介され、自国では得がたい内容も含まれていたため、研修員の関心も高く、積極的な質疑応答につながりました。研修の終盤には、研修員をグループ分けし、共通する課題の特定とその対応策を討議し、実行すべきアクションプラン(AP)を発表してもらいました。共通する主なAPとしては、①サイバー犯罪対策関連法制度の調和(サイバー犯罪条約の締結等)、②(国内外問わず)機関間の情報共有の促進、③能力向上のための研修等の実施が挙げられますが、いずれもサイバー犯罪対策にとって重要であり、研修の総括としてふさわしいものでした。

多くの研修員から、来日して研修を受けたかった旨の意見を頂きましたが、一方で、各種講義や討議が充実しており、オンラインであっても様々な知見等を得られて非常に有益だったとの感想も多く寄せられました。

画像:リナ氏の講義の様子

リナ氏の講義の様子

画像:グループワークの様子

グループワークの様子

おわりに

ヒト・モノ・カネが国境を越えて移動するグローバル社会では、サイバー犯罪を含む様々な犯罪も国境を越えて行われるため、国際協力が必要不可欠です。コロナ禍の影響でオンライン実施となりましたが、各国の近時のサイバー犯罪対策における知見やベスト・プラクティス等を共有できたことは非常に有意義でした。今回の研修で得られた知見を、各研修員の自国の制度の発展・充実化に活用してもらえれば幸甚です。

今後もアジ研は、国際研修を通じて、社会や経済の発展を阻害する各種犯罪の撲滅に取り組むとともに、世界各地をつないで刑事司法関係者のネットワーク構築に尽力します。

画像:研修終了時の様子

研修終了時の様子