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記者が行く!
~侮辱罪の法定刑の引上げについて~

皆さま、こんにちは!

今回は、令和4年6月13日に成立した「刑法等の一部を改正する法律」のうち侮辱罪の法定刑引上げに係る部分が同年7月7日に施行されましたので、担当者にお話を伺ってきました。

記 者

まず侮辱罪とは、どのような罪なのでしょうか?

担当者

事実を摘示せずに、不特定又は多数の人が認識できる状態で、他人に対する軽蔑の表示を行うと、侮辱罪の要件に当たることになります。過去に侮辱罪が適用された事例としては、駅の柱などに「ご注意 ○○(被害者名) 悪質リフォーム工事業者です」などと記載した紙片5枚を貼付したものがあります。

記 者

今回、なぜ侮辱罪の法定刑が引き上げられたのでしょうか?

担当者
イラスト

近時、インターネット上で人の名誉を傷つける行為が特に社会問題化していることをきっかけに、非難が高まり、抑止すべきとの国民の皆さまの意識が高まっています。

人の名誉を傷つける行為を処罰する罪としては、侮辱罪のほかに、名誉毀損罪があり、この罪は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」ことが要件となっています。

いずれも、人の社会的名誉を保護するものとされていますが、両罪の間には、事実の摘示を伴うか否かという点で差異があり、人の名誉を傷つける程度が異なると考えられることから、法定刑に差が設けられています。名誉毀損罪の法定刑は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」とされる一方、侮辱罪の法定刑は「拘留又は科料」とされてきたのです。

しかし、近年における侮辱罪の実情などに鑑みると、事実の摘示を伴うか否かによって、これほど大きな法定刑の差を設けておくことはもはや相当ではありません。

そこで、侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止するとともに、悪質な侮辱行為に厳正に対処するため、名誉毀損罪に準じた法定刑に引き上げることとされたものです。

改正の内容については、次の概要をご覧ください。

イラスト
記 者

私もSNS上で人を侮蔑する書き込みがされているのを見たことがあります。

加害者にならないように、発信する情報の内容や表現には気を付けるべきだと思いますが、今回の改正により表現の自由が侵害されるおそれはないのでしょうか?

担当者

表現の自由は、憲法で保障された極めて重要な権利であり、これを不当に制限することがあってはならないのは当然のことです。

今回の改正は、次のとおり、表現の自由を不当に侵害するものではありません。

(1)今回の改正は、侮辱罪の法定刑を引き上げるのみであり、侮辱罪が成立する範囲は全く変わりません。

(2)法定刑として拘留・科料を残すこととしており、悪質性の低いものを含めて侮辱行為を一律に重く処罰する趣旨でもありません。

(3)公正な論評といった正当な表現行為については、仮に相手の社会的評価を低下させる内容であっても、刑法35条の正当行為に該当するため、処罰はされず、このことは、今回の改正により何ら変わりません。

(4)侮辱罪の法定刑の引上げについて議論が行われた法制審議会においても、警察・検察の委員から、「これまでも、捜査・訴追について、表現の自由に配慮しつつ対応してきたところであり、この点については、今般の法定刑の引上げにより変わることはない」との考え方が示されたところです。

記 者

なるほど。今回の改正で侮辱罪として処罰される範囲が広がるというわけではないのですね。

担当者

そのとおりです。侮辱罪の要件は変わっていません。

法務省ホームページでは、侮辱罪の法定刑の引上げに関するQ&Aを公開しておりますので、もっと詳しく知りたいという方はご覧になってみてください。