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法整備支援の現場から

カンボジア長期専門家 戸部友希

日本のカンボジアに対する法制度整備支援は、民法・民事訴訟法の起草支援に始まり、25年を超える歴史があります。制定された法が深く理解され、正しく運用され、そして社会に根付くためには、それだけ多くの時間とステップを要するのです。

そのステップの重要な一つが、司法を担う人材の育成です。カンボジアは、その歴史の中で多くの司法人材を失いました。日本はこれまで、裁判官や検察官を養成する学校の教育の制度を一から築き、この養成校の教官を育成する支援を行いました。そして、現プロジェクトでは、養成校の教育をより良いものにし、将来的にも持続可能な養成の体制を築くことで、司法を担う人材の育成を強化することを目指しています。

令和4年11月に現プロジェクトが開始してから、約1年が経ちました。この間、私たちは、養成校の教育改善に反映させるため、カンボジアの裁判官や弁護士、司法省の方々とワーキンググループを作り、民事裁判や養成校における教育について、現状抱えている課題を調査し、その課題をじっくりひもとくことを試みてきました。具体的には、裁判官や養成校職員へのインタビュー、学生に対するセミナー、新しい教材の作成、カリキュラムやシラバスの検討、日本の経験の共有などの活動をしています。養成校や裁判実務の現場で日々奮闘している法律家や職員からは、民法や民事訴訟法に関する質問や、裁判実務や教育の課題が途切れることなく寄せられます。議論の場では、過去の支援で養成された当時には若手であった中堅裁判官がリードしてくださり、若手裁判官もとても熱心に議論に参加しており活気が感じられます。ときに議論が熱くなり緊張感が生まれることもありますが、それも、より正しく法を理解したい、自分たちの手でより良いものを築きたいという思いの表れに感じられます。こうした思いが、カンボジアの一人一人が守られることにつながると信じ、全力で支えるべく、二人の専門家(※) 、聡明で心優しい現地スタッフのチームと共に、邁進してまいります。

※ 現在、カンボジアの法制度整備支援のプロジェクトには、執筆者である戸部友希専門家のほか、伊藤みずき専門家、川上司専門家が派遣されています。

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