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(債権譲渡登記)Q&A


 

Quetion

債権譲渡登記制度について

Q1.債権譲渡登記により具備された第三者対抗要件の効力は、民法による第三者対抗要件具備方法によるものに優先するのですか。

 

Q2.債権譲渡登記により第三者対抗要件を具備する場合、民法による方法と異なり、債務者の関与なく具備することができるとのことですが、なぜそのようなことが可能なのですか。

 

Q3.債権譲渡登記の対象となる債権について制限はありますか。

 

Q4.担保目的のために債権を譲渡した場合でも、債権譲渡登記をすることができますか。

 

Q5.債権譲渡登記の譲受人が当該債権の債務者に支払を請求するには、どのような手続が必要ですか。

 

Q6.債権譲渡登記の証明書は、証明書に記載された債権の存在を証明するものですか。

 

Q7.債権譲渡登記の証明書は、不動産登記の証明書のように、譲渡された債権ごとに作成されるのですか。

  

登記申請手続について

Q8.債権譲渡登記が完了した後に、譲渡された債権に変更が生じた場合や誤りがあることを発見した場合、あるいは、譲渡人又は譲受人の商号・本店等に変更があった場合には、変更又は更正の登記をすることはできますか。

 

Q9.債権譲渡登記申請書の添付書面について、原本の還付請求をすることはできますか。また、他の登記申請書の添付書面を援用することにより添付書面の添付を省略することや、登記申請書に会社法人等番号を記載することにより資格証明書の添付を省略することはできますか。

 

Q10.債権譲渡登記の登記申請書の添付書面として法人の破産管財人の資格証明書及び印鑑証明書を添付する必要がある場合、裁判所書記官が交付する「破産管財人選任及び印鑑証明書」を資格証明書及び印鑑証明書として添付することは認められますか。

 

Q11.民事再生手続の申立てがあった法人たる再生債務者に対し、裁判所が監督委員による監督を命ずる処分を行い、当該再生債務者が監督委員の同意を得なければすることができない行為として、「再生債務者の財産に係る権利の譲渡」が指定されている場合において、当該再生債務者が譲渡人となる債権譲渡登記を申請するときは、登記申請書に、再生債務者が当該登記の申請をすることについて監督委員が同意していることを証する書面(同意書)を添付する必要がありますか。

 

Q12.登記申請の際に取下書を添付するメリットは何ですか。

 

Q13.「申請人プログラム」の「データチェック」メニューによりチェックを行い、正常終了した場合,申請データに不備はなく、登記申請が受理されることとなりますか。

 

Q14.債権譲渡登記の申請の際に、債権譲渡登記所に提出する電磁的記録媒体(CD-R又はCD-RW)に記録する申請データにパスワードを設定することはできますか。



登記事項について

Q15.譲渡の対象となる債権は、どのように特定すればよいのですか。

 

Q16.投資事業有限責任組合の組合財産として債権を譲り受けたので、その債権譲渡について債権譲渡登記を申請しようと考えていますが、その場合の申請書への記載及び申請データとして記録すべき申請人たる譲受人の表示は,どのようにすればよいのですか。

 

Q17.債権額500万円の既発生の債権を有していますが、そのうち300万円分について譲渡し、債権譲渡登記をしたいと考えています。この場合には、登記事項証明書において譲渡の対象が500万円の債権のうちの300万円であることを表示させるためには、どのような方法がありますか。

 

Q18.債権譲渡登記を申請するに当たり、登記申請書とともに提出する申請データの「登記共通事項ファイル(COMMON.xml)」の「備考」欄に、当該登記の登記原因である譲渡担保に係る被担保債権の債務者を記録して、登記の申請をすることができますか。

 

Q19.債権譲渡契約の締結後に商号変更及び本店移転をしている法人を譲渡に係る債権の原債権者として債権譲渡登記の申請を行う場合には、原債権者の商号及び本店は、どのように記録すればよいのですか。

 

Q20.譲渡に係る債権の発生の時の債務者である法務太郎が債権譲渡登記の申請の前に死亡してしまいました。その債務については、法務一郎が相続したので、譲渡に係る債権の債務者を「法務一郎」として債権譲渡登記の申請をすべきでしょうか。



登記事項証明書の交付・通知を受けた債務者の対応について

Q21.自分が債務者であると記載された登記事項証明書の交付・通知を受けました。このほかにも、私を債務者とする同じ債権について債権譲渡の通知が届いたのですが、誰に弁済すべきかをどのように判断すればよいでしょうか。

 

Q22.交付・通知を受けた登記事項証明書に自分が債務者であると記載されていました。記載された債権は存在しないはずなのですが、証明書に記載された譲受人から支払の請求があった場合、これに応じなければならないのでしょうか。

 

Q23.登記事項証明書に記載されている債権につき、自分が債務者に当たるかどうかを判断するには、どこを見て確認すればよいのですか。



先行する債権譲渡登記の存在の調査について

Q24.譲り受けようとする債権について、先行する債権譲渡登記が存在しないことを調査する方法を教えてください。

 

Q25.登記事項証明書の交付を求めることができる者が制限されている理由は何ですか。

 

Q26.債権譲渡登記の登記事項証明書の交付申請書の添付書面として法人の破産管財人の資格証明書及び印鑑証明書を添付する必要がある場合、裁判所書記官が交付する「破産管財人選任及び印鑑証明書」を資格証明書及び印鑑証明書として添付することは認められますか。

 

Q27.先行する債権譲渡登記の存在の調査のため、債権譲渡登記に関する証明書の内容を確認するに当たって、登記情報提供サービスを利用することはできますか。



登記事項概要証明書等について

Q28.登記事項概要証明書と概要記録事項証明書には、どのような違いがあるのですか。

 

Answer

債権譲渡登記制度について

Q1.債権譲渡登記により具備された第三者対抗要件の効力は、民法による第三者対抗要件具備方法によるものに優先するのですか。

 A1. 
 債権譲渡登記により具備された第三者対抗要件の効力と、民法による第三者対抗要件の効力の優劣は、具備した時の先後により決せられ、債権譲渡登記の効力が常に優先するものではありません。

 

 

Q2.債権譲渡登記により第三者対抗要件を具備する場合、民法による方法と異なり、債務者の関与なく具備することができるとのことですが、なぜそのようなことが可能なのですか。

 A2. 
 民法による対抗要件具備方法では、債権を譲渡したことについての債務者対抗要件の具備はもちろん、第三者対抗要件を具備するためにも債務者を関与させる必要があります(具体的には債務者への通知又は債務者の承諾が必要です。)。  
 これに対し、債権譲渡登記による場合は、第三者対抗要件と債務者対抗要件の具備方法が分離されており、第三者対抗要件については、債務者を関与させることなく、譲渡人と譲受人との共同申請により債権譲渡登記をすることで具備することができる仕組みが採られています。

 

 

Q3.債権譲渡登記の対象となる債権について制限はありますか。

 A3.
 債権譲渡登記の対象となる債権については、譲渡人が法人であり、譲渡する債権が金銭債権であって、民法第三編第一章第四節の規定により譲渡されるものに限られます(特例法第4条第1項)。

 

 

Q4.担保目的のために債権を譲渡した場合でも、債権譲渡登記をすることができますか。

 A4.
 可能です。この場合、譲渡担保設定者を譲渡人、譲渡担保権者を譲受人とし、登記原因を「譲渡担保」として、債権譲渡登記を申請することとなります。

 

 

Q5.債権譲渡登記の譲受人が当該債権の債務者に支払を請求するには、どのような手続が必要ですか。

 A5.
 債務者は、債権譲渡登記の譲受人が債務者対抗要件を具備するまでは、譲受人に対する支払を拒むことができ、従前の債権者(譲渡人)を債権者として取り扱えばよいことになります。債権譲渡登記の譲受人が債務者対抗要件を具備するためには、債権の譲渡及びその登記をしたことにつき、譲渡人又は譲受人が債務者に対して登記事項証明書を交付して通知するか、債務者が承諾する必要があります(特例法第4条第2項)。

 

 

Q6.債権譲渡登記の証明書は、証明書に記載された債権の存在を証明するものですか。

 A6.
 債権譲渡登記の申請に際しては、譲渡された債権自体の存在を証する書面やその譲渡があったことを証する書面の添付は必要とされていません。したがって、債権譲渡登記は、譲渡された債権が真実に存在することや真実に譲渡がされたことまでを公示・証明するものではありません。

 

 

Q7.債権譲渡登記の証明書は、不動産登記の証明書のように、譲渡された債権ごとに作成されるのですか。

 A7.
 不動産登記の証明書が土地・建物ごとに作成されるのと異なり、債権譲渡登記の証明書は、譲渡された債権ごとに作成されるものではありません。債権譲渡登記の証明書には、証明書交付申請書において指定した検索条件に応じて、譲渡された債権が記載されます。

 

 


登記申請手続について

Q8.債権譲渡登記が完了した後に、譲渡された債権に変更が生じた場合や誤りがあることを発見した場合、あるいは、譲渡人又は譲受人の商号・本店等に変更があった場合には、変更又は更正の登記をすることはできますか。

 A8.
 債権譲渡登記が完了した後に、譲渡された債権に変更が生じた場合や誤りがあったことを発見した場合であっても、変更又は更正の登記をすることはできません。そのような場合は、変更・修正後の譲渡の対象となる債権を特定した上で、新たに債権譲渡登記を申請する必要があります。
 なお、譲渡された債権を誤った債権譲渡登記については、実体関係を欠くものであり、無効な登記となりますので、特例法第10条第1項第1号に規定する「譲渡が効力を生じないこと」に準じて、抹消登記の申請をすることができると考えられます。この場合の抹消登記の登記原因は、「錯誤」とし、登記原因年月日を記載しないこととして差し支えないものと考えられます。
 また、債権譲渡登記が完了した後に、譲渡人又は譲受人の商号又は本店等に変更が生じた場合も、変更の登記をすることはできません。譲渡人に係る商号・名称の変更の登記又は本店・主たる事務所の移転の登記がされたときは、その譲渡人の登記事項概要ファイルの記録が連動して変更されます(登記規則第7条)。

 

 

Q9.債権譲渡登記申請書の添付書面について、原本の還付請求をすることはできますか。また、他の登記申請書の添付書面を援用することにより添付書面の添付を省略することや、登記申請書に会社法人等番号を記載することにより資格証明書の添付を省略することはできますか。

 A9.
 いずれもできません。なお、同時に数個の債権譲渡登記申請をする場合において、各債権譲渡登記申請書の添付書面に内容の同一のものがあるときは、一個の登記申請書に一通の添付書面の原本を添付することで足り、他の登記申請書については、添付書面の原本の添付を省略することができます。ただし、当該申請書には、添付書面の原本の写しに相違ない旨を記載した謄本を添付する必要があります(登記規則第13条の2)。

 

 

Q10.債権譲渡登記の登記申請書の添付書面として法人の破産管財人の資格証明書及び印鑑証明書を添付する必要がある場合、裁判所書記官が交付する「破産管財人選任及び印鑑証明書」を資格証明書及び印鑑証明書として添付することは認められますか。

 A10.
 裁判所書記官が交付する「破産管財人選任及び印鑑証明書」は、資格証明書として添付することは認められますが、印鑑証明書として添付することは認められません(破産規則第23条第4項、不動産登記規則第48条第1項第3号参照)。印鑑証明書については、商業登記所又は市町村長の作成した当該破産管財人に係る印鑑証明書(作成後3か月以内のもの)を添付する必要があります。  
 なお、資格証明書に記載されている破産管財人の氏名及び住所と印鑑証明書に記載されている破産管財人の氏名及び住所は一致することを要するので、印鑑証明書に破産管財人の自宅の所在地のみが記載されている場合は、資格証明書として、破産管財人の事務所の所在地のほかに自宅の所在地が併記されている「破産管財人選任及び印鑑証明書」を添付するなどの必要があります。

 

 

Q11.民事再生手続の申立てがあった法人たる再生債務者に対し、裁判所が監督委員による監督を命ずる処分を行い、当該再生債務者が監督委員の同意を得なければすることができない行為として、「再生債務者の財産に係る権利の譲渡」が指定されている場合において、当該再生債務者が譲渡人となる債権譲渡登記を申請するときは、登記申請書に、再生債務者が当該登記の申請をすることについて監督委員が同意していることを証する書面(同意書)を添付する必要がありますか。

 A11.
 同意書を添付することを要します。  債権譲渡登記により対抗要件を具備する行為は債権を譲渡する行為の一部であるといえるので、当該譲渡に係る債権譲渡登記の申請行為についても、監督委員の同意を要する行為に含まれると考えられます。  
 よって、監督委員の同意書は、当該再生債務者が債権譲渡登記の申請をするための権限を有していることを登記官が確認するための書面として添付する必要があると考えられます(監督委員の同意書は、当該再生債務者の代表者の資格証明書(登記事項証明書)と併せて「法人の代表者の資格を証する書面」(登記令第8条第1号)として取り扱われます。)。

 

 

Q12.登記申請の際に取下書を添付するメリットは何ですか。

 A12.
 債権譲渡登記制度においては、登記申請事件の即時処理が要請されることから、補正(登記申請書等の誤りを正すこと)の制度がありません。そのため、登記申請の内容に不備(却下事由)があると、当該登記申請は直ちに却下されます。そして、登記申請が却下されると、申請人は登記申請書や添付書面等の返却を受けることができません。  
 ただし、申請人が、登記申請の内容に却下事由が存在すると登記官が認めたことを停止条件として登記申請を取り下げる旨を記載した取下書を登記申請書に添付した場合には、登記官が登記申請の内容に却下事由があることを発見したときであっても、当該登記申請は却下されず、当該登記申請は取り下げられたこととなります。その結果、申請人は、登記申請書や添付書面等の返却を受けることができることになります(取下書の記載内容については、記載例をご参照ください。)。

 

 

Q13.「申請人プログラム」の「データチェック」メニューによりチェックを行い、正常終了した場合,申請データに不備はなく、登記申請が受理されることとなりますか。

 A13.
 「申請人プログラム」の「データチェック」メニューによるチェックは、申請データの形式が所定の記録方式に適合しているかを形式的にチェックするものであって、例えば、申請データの内容が法令に照らして不備がないかどうか等をチェックすることはできません。したがって、当該チェックが正常終了したとしても、申請データに不備はなく、登記申請が受理されることが保証されるものではありません。  
 もっとも、当該チェックを行うことにより、申請データの形式が所定の記録方式に適合していないため登記申請が受理されない(実務上、このような例が多く見られます。)というリスクを軽減することができるので、登記申請前には、必ず当該チェックをするようにしてください。

 

 

Q14.債権譲渡登記の申請の際に、債権譲渡登記所に提出する電磁的記録媒体(CD-R又はCD-RW)に記録する申請データにパスワードを設定することはできますか。

 A14.
 申請データにパスワードを設定して債権譲渡登記所に提出することはできません。  
 債権譲渡登記システムでは、登記令第7条第1項の規定により提出された電磁的記録媒体(CD-R又はCD-RW)に記録されている申請データを用いて自動的に処理をしているため、提出された申請データにパスワードが設定されていると、当該パスワードを解除することができず、登記申請の受付処理ができないためです。

 

 


登記事項について

Q15.譲渡の対象となる債権は、どのように特定すればよいのですか。

 A15.
 申請データに記録する債権の原債権者、債務者、債権の種類、債権発生原因、債権の発生年月日、債権額等により特定します(債権の種類及び債権発生原因については、以下の記録例をご参照ください。)。   
    
 債権を特定する方法の記録例(令和元年7月更新)[PDF]

 

 

Q16.投資事業有限責任組合の組合財産として債権を譲り受けたので、その債権譲渡について債権譲渡登記を申請しようと考えていますが、その場合の申請書への記載及び申請データとして記録すべき申請人たる譲受人の表示は,どのようにすればよいのですか。

 A16.
 投資事業有限責任組合契約に関する法律第2条第2項に規定する投資事業有限責任組合は、法人格を有せず、私法上の権利義務の主体となることはありませんので、当該組合が登記名義人となることはできません。したがって、譲受人としての表示については、当該債権の共有者たる組合員全員を表示するか、組合員からの受託者としての地位において一部の業務執行者の名義によって、債権譲渡登記を申請することになります。  
 ただし、債権譲渡登記においては、債権譲渡登記申請に当たって提出する申請データとして作成する「登記共通事項ファイル(COMMON.xml)」中の「備考」欄(「債権個別事項ファイル(CREDIT.xml)」中の「備考」欄ではないので、注意してください。)に、債権譲渡の契約内容等を特定するために有益な事項を記録することができ、当該事項は債権譲渡登記ファイルに記録され、登記事項証明書及び登記事項概要証明書にも記載されます。そこで、この有益事項として、例えば、「譲受人△△及び□□は、○○投資事業有限責任組合(事務所:東京都千代田区丸の内○丁目○番○号)が組合財産として譲り受けた債権の準共有者である。」、あるいは「譲受人△△は○○投資事業有限責任組合(事務所:東京都千代田区丸の内○丁目○番○号)の無限責任組合員であり、同組合が組合財産として譲り受けた債権につき、組合員からの受託により同譲受人の名義で登記するものである。」等と記録して、債権譲渡登記を申請することが可能です。

 

 

Q17.債権額500万円の既発生の債権を有していますが、そのうち300万円分について譲渡し、債権譲渡登記をしたいと考えています。この場合には、登記事項証明書において譲渡の対象が500万円の債権のうちの300万円であることを表示させるためには、どのような方法がありますか。

 A17.
 「債権個別事項ファイル」(CREDIT.xml)の「備考」欄には、他の項目に記録すべき事項以外のものであって、債権を特定するために有益な事項を記録することができますので(登記規則第12条第2項)、債権譲渡登記申請に当たって提出する申請データとして作成する「登記共通事項ファイル(COMMON.xml)」の「備考」欄及び「債権個別事項ファイル(CREDIT.xml)」の「備考」欄に譲渡する金額を記録するという方法を採ることが考えられます。  
 既発生の債権に係る債権譲渡登記の場合には、「債権個別事項ファイル(CREDIT.xml)」の「譲渡時債権額」欄に、譲渡対象債権の「譲渡の時における債権額」を記録することとされています(登記規則第9条第1項第6号)。このため、本件のように、債権の一部を譲渡する場合であっても、「譲渡時債権額」欄には「5000000」と記録することとなります。このような場合において、譲渡する金額が300万円であることを登記事項証明書等において公示するためには、「債権個別事項ファイル(CREDIT.xml)」の「備考」欄に「譲渡額300万円」と記録した上、「登記共通事項ファイル(COMMON.xml)」の「備考」欄にも「譲渡総額300万円」と記録する方法が考えられます。  
 なお、数個の債権に係る登記事項を一括して証明する登記事項証明書(登記事項証明書(一括))には、「登記共通事項ファイル(COMMON.xml)」の「備考」欄に記録された事項は記載されますが、「債権個別事項ファイル(CREDIT.xml)」の「備考」欄に記録された事項は記載されませんので、注意する必要があります。

 

 

Q18.債権譲渡登記を申請するに当たり、登記申請書とともに提出する申請データの「登記共通事項ファイル(COMMON.xml)」の「備考」欄に、当該登記の登記原因である譲渡担保に係る被担保債権の債務者を記録して、登記の申請をすることができますか。

 A18.
 申請データの「登記共通事項ファイル(COMMON.xml)」の「備考」欄に、当該債権譲渡登記の登記原因である譲渡担保に係る被担保債権の債務者を記録することはできないものと考えられます。  
 債権譲渡登記の登記原因である譲渡担保に係る被担保債権の債務者については、特例法第8条第2項各号並びに登記規則第9条第1項及び第12条第2項に規定されている登記すべき事項ではありません。  
 また、債権譲渡登記の登記原因である譲渡担保に係る被担保債権の債務者については、譲渡人及び譲受人以外の第三者に係る事項であり、「債権譲渡の契約内容等を特定するために有益な」事項であるとはいえないことから、申請データの「登記共通事項ファイル(COMMON.xml)」の「備考」欄にも記録することはできません。  
 さらに、「備考」欄に記録した内容は、登記事項証明書(特例法第11条第2項)及び登記事項概要証明書(特例法第11条第1項)に記載されることから、申請当事者ではない債務者に係る情報が「備考」欄に記録されると、本人のあずかり知らないところでその情報が公示されてしまうこととなる点からも問題があるということができます。

 

 

Q19.債権譲渡契約の締結後に商号変更及び本店移転をしている法人を譲渡に係る債権の原債権者として債権譲渡登記の申請を行う場合には、原債権者の商号及び本店は、どのように記録すればよいのですか。

 A19.
 原債権者の商号・名称及び本店・主たる事務所は、譲渡に係る債権の発生の時における商号・名称及び本店・主たる事務所を記録することとなります(登記規則第9条第1項第2号及び第3号)。  
 ところで、譲渡に係る債権の内容を確認するための資料としては、契約書、債務者に対する請求書の控え等が考えられるところですが、これらの資料には、当然ながら、譲渡に係る債権の発生の時における商号・名称及び本店・主たる事務所が記載されているでしょうから、原債権者の表示も、それらの資料を参考にして記録することとなるのが通常と考えられます。

 

 

Q20.譲渡に係る債権の発生の時の債務者である法務太郎が債権譲渡登記の申請の前に死亡してしまいました。その債務については、法務一郎が相続したので、譲渡に係る債権の債務者を「法務一郎」として債権譲渡登記の申請をすべきでしょうか。

 A20.
 債権譲渡登記の申請の時においては、譲渡に係る債権の発生の時における債務者である法務太郎が死亡しており、法務一郎が当該債務を相続しているというのですから、譲渡に係る債権の債務者として「法務一郎」を記録して、債権譲渡登記の申請をすることになると考えられます。  
 なお、第三者において当該債権に係る契約の同一性を容易に判断できるようにするため、「債権個別事項ファイル(CREDIT.xml)」の「債権発生原因」欄に「平成○年○月○日付け(亡)法務太郎と締結した○○契約」等と記録することが考えられます。

 

 



登記事項証明書の交付・通知を受けた債務者の対応について

Q21.自分が債務者であると記載された登記事項証明書の交付・通知を受けました。このほかにも、私を債務者とする同じ債権について債権譲渡の通知が届いたのですが、誰に弁済すべきかをどのように判断すればよいでしょうか。

 A21.
 一般的な判断基準についていえば、債務者は、まだ弁済等により消滅していない債権につき弁済の請求を受けた場合は、(1)債務者対抗要件を具備した債権者に対して弁済すれば足ります。その上で、同一の債権につき複数の債権者から弁済の請求を受けているときは、(2)第三者対抗要件を具備した債権者と具備していない債権者が存在する場合は、具備した債権者に対して弁済することになり、(3)第三者対抗要件を具備した債権者が複数存在する場合は、第三者対抗要件の具備時点が最も早い債権者に対して弁済することになります。  
 なお、具体的な判断に際しては、法律の専門的知識が必要になる場合もありますので、そのようなときは法律専門家に相談することもご検討ください。

 

 

Q22.交付・通知を受けた登記事項証明書に自分が債務者であると記載されていました。記載された債権は存在しないはずなのですが、証明書に記載された譲受人から支払の請求があった場合、これに応じなければならないのでしょうか。

 A22. 
 債権譲渡登記は、譲渡された債権が真実に存在することや真実に譲渡がされたことまでを公示・証明するものではないので(Q6を参照)、登記事項証明書に記載されている債権については、その債権がそもそも存在しない場合や、その債権が弁済済みで消滅している場合もあり得ます。そのため、登記事項証明書に自分が債務者であると記載されているからといって、支払義務があるとは限りません。  
 なお、具体的な対応については、法律の専門的知識が必要になる場合もありますので、そのようなときは法律専門家に相談することもご検討ください。

 

 

Q23.登記事項証明書に記載されている債権につき、自分が債務者に当たるかどうかを判断するには、どこを見て確認すればよいのですか。

 A23.
 譲渡された債権の内容は、登記事項証明書の2枚目に「債権個別事項」として記載されています。「債権個別事項」には、原債権者、債務者(債務者が特定されていない債権の場合は、具体的な債務者名は記載されません。この場合は、債権の種類や債権発生原因の記載から、自分が債務者に当たるかどうかを判断します。)等が記載されているので、これらの記載に基づき、自分が債務者に当たるかどうかを確認します。

 


先行する債権譲渡登記の存在の調査について

Q24.譲り受けようとする債権について、先行する債権譲渡登記が存在しないことを調査する方法を教えてください。

 A24.
 債権譲渡登記の概要記録事項証明書は誰でも請求することができる(特例法第13条第1項)ので、まず、当該債権を譲渡しようとする法人に係る概要記録事項証明書の交付を請求します。そして、当該法人を譲渡人とする債権譲渡登記の記録が全く存在しない場合には、その旨の証明書の交付を受けることにより、先行する債権譲渡登記が存在しないことを確認することができます。他方、債権譲渡登記の記録が存在する場合は、譲り受けようとする債権が先行する債権譲渡登記の対象になっていないかどうか確認するため、当該債権を譲渡しようとする法人に対し、登記事項証明書の提示を求め、その登記事項の内容を確認することなどが考えられます。

 

 

Q25.登記事項証明書の交付を求めることができる者が制限されている理由は何ですか。

 A25.
 登記事項証明書の交付の請求をすることができる者は、特例法第11条第2項各号に掲げられた債権譲渡の当事者や利害関係人等に限られています。これは、登記事項証明書には、債務者のプライバシーに関する情報、あるいは譲渡人の営業秘密や事業戦略に関わる情報が記載されているためです。

 

 

Q26.債権譲渡登記の登記事項証明書の交付申請書の添付書面として法人の破産管財人の資格証明書及び印鑑証明書を添付する必要がある場合、裁判所書記官が交付する「破産管財人選任及び印鑑証明書」を資格証明書及び印鑑証明書として添付することは認められますか。

 A26. 
 Q10と同様の回答となります。Q10を参照してください。

 

 

Q27.先行する債権譲渡登記の存在の調査のため、債権譲渡登記に関する証明書の内容を確認するに当たって、登記情報提供サービスを利用することはできますか。

 A27.
 概要記録事項証明書の内容については、指定法人(一般財団法人民事法務協会)が運営する「登記情報提供サービス」により、インターネットを使用して確認することができます(詳細は「登記情報提供サービス」のホームページをご覧ください。)。他方、債権譲渡登記の登記事項証明書及び登記事項概要証明書の内容については、同サービスを利用して確認することはできません。

 

 



登記事項概要証明書等について

Q28.登記事項概要証明書と概要記録事項証明書には、どのような違いがあるのですか。

 A28. 
 債権譲渡登記の概要事項を証明したものとして、債権譲渡登記所で発行する「登記事項概要証明書」と、譲渡人の本店(主たる事務所)を管轄する登記所等で交付する「概要記録事項証明書」の2つがあり、いずれも、譲渡に係る債権を特定するために必要な事項は記載されておらず、誰でも請求することができるという共通点があります。  
 主な違いとしては、以下のようなものが挙げられます。  
 a (記載内容)  
   記載内容について、「登記事項概要証明書」には、登記原因、その日付、登記の存続期間及び債権の総額が記載されますが、「概要記録事項証明書」には、これらの事項は記載されません。また、譲受人が複数いる場合、「登記事項概要証明書」には全ての譲受人が個別に記載されますが、「概要記録事項証明書」には全ての譲受人が記載されるわけではありません。  
 b (譲渡人の商号本店)   
   「概要記録事項証明書」は債権譲渡登記事項概要ファイルが商業・法人登記簿の記録とリンクしているため、商業・法人登記において譲渡人の商号変更や本店移転の登記がされた場合には、これに連動して記載内容が変更されます。  
   一方、債権譲渡登記所で交付する「登記事項概要証明書」については、商業・法人登記において、譲渡人の商号や本店移転の登記がされても、その記載内容は変更されません。  
 c (交付時期)   
   「登記事項概要証明書」は、債権譲渡登記が完了した後、直ちに交付を受けることができますが、「概要記録事項証明書」は、債権譲渡登記が完了した後、債権譲渡登記所から譲渡人の本店等所在地を管轄する登記所に対して債権譲渡登記事項概要ファイルに記録すべき事項が通知され、これに基づいて同ファイルへの記録がされた後に交付を受けることができます。  
   なお、「概要記録事項証明書」は、譲渡人の本店等所在地を管轄している登記所でなくても、不動産登記又は商業・法人登記を取り扱っている登記所であれば、いずれの登記所に対しても請求することができます。
 d(証明書の作成方法)
  「概要記録事項証明書」は、譲渡人ごとに作成され、同一の譲渡人に係る債権譲渡登記等がまとめて記載されます。
  一方、「登記事項概要証明書」は、譲渡登記に付された登記番号ごとに作成されるため、同一の譲渡人に係る債権譲渡登記であっても、その登記番号が異なる場合は、それぞれ別の「登記事項概要証明書」として交付されます。

  (債権譲渡登記)証明書交付請求の手続については、こちらを御確認願います。