CONTENTS

ミャンマーの刑務所改革進行中-民主化支援

ミャンマーの刑務所では,現在,職員たちが真剣に改革に取り組んでいます。国連アジア極東犯罪防止研修所(アジ研)は,国連薬物犯罪事務所(UNODC)と協力してこの改革を支援しています。

今回は,あかれんが第51号(平成27年11月)でお伝えした 「ミャンマーの民主化支援-刑務所改革」の続編をお伝えしたいと思います。

平成28年6月のヤンゴン研修施設でのセミナー開講式の写真

ヤンゴン研修施設でのセミナー開講式(平成28年6月)

これまでのアジ研の支援

アジ研は,UNODCと協力して,平成27年8月を皮切りに,ミャンマー現地において,刑務所職員を対象とするセミナーを現在までに12回開催しています。

このほか,日本の刑務所の運営状況を参考としてもらうために,平成27年11月に2名,平成28年9月には,行刑局長をはじめとする5名のミャンマー内務省行刑局幹部をアジ研に招いています。

今回は,ミャンマー現地で行っているセミナーについて,最新の状況をお伝えします。

セミナーでは何をするのですか

このセミナーは,特に,①刑務所に収容されている人の人権について定めた「国際的な取決めについての基礎知識」,②受刑者と職員,受刑者と受刑者の間で『ことば』や『感情』の行き違いによって引き起こされるさまざまなトラブルを解決するための「アンガーマネジメント」,そして,③犯罪の原因となった問題は,受刑者それぞれによって違っているということを理解して,ひとりひとりの受刑者に彼らが抱える問題を解決するために一番適切な処遇を行うために欠かすことができない「分類処遇制度」の3つを中心に,講義やグループワーク,ロール・プレイなどを通じて学んでいきます。

講師は,アジ研の教官,日本の大学の教職員,UNODC本部(ウィーン),タイ王国法務研究所(TIJ)及び日本の矯正局の専門家などが務めています。

参加者はどんな人ですか

参加者は,刑務所の副所長・課長クラスの中間監督者です。年齢は20から50歳代までです。若くして幹部になった職員から経験を積んで幹部になった職員までいます。

TIJの専門家の講義の写真

TIJの専門家の講義

大学の教職員の講義の写真

大学の教職員の講義

セミナー参加者の反応はどうですか

参加者に共通していることは,講師の話をうなずきながらとにかくよく聞くことです。そして,びっしりとノートを取っていることです。その姿は,まるで草花が太陽の光と水を吸収するような勢いでした。さらに,講義終了後には,参加者同士でノートの内容を確認し合っていました。

参加者からは,「セミナーで自分の感情をコントロールする方法を学んだことで,受刑者との関係が改善した。」「受刑者を分類して処遇する方法は,ミャンマーでも必要だと思った。」「我々の刑務所が行っている夫婦面会・家族面会といった取組は,世界的に見ても先進的なものだと知って,自信を持つことができた。」などの感想がありました。

講義に取り組むセミナー参加者の写真

講義に取り組むセミナー参加者

セミナーにはどんな成果がありましたか

ミャンマーのセミナー参加者は,初めは,自分の考えを伝えることが苦手な傾向にありました。しかし,セミナーのグループワークなどを通じて,自分の考えを正しく,効果的に被収容者や上司・部下に伝えることができるようになりました。

また,世界の刑務所の運営状況について,講義を通じて学ぶことで,参加者の「自分たちの力でミャンマーの刑務所をよりよいものへと変えていこう」という意識がどんどん強まっていくのを感じました。

何よりも自分たちの仕事が,社会の治安・安全のために非常に大切なものだということを再認識し,刑務所の職員としての誇りが高まったことが一番の成果と言えるでしょう。

グループワークの結果発表の写真

グループワークの結果発表

支援の意義とこれから

ミャンマーで刑務所改革が推進され人権状況の改善が進めば,刑務所のみならず国全体の人権状況の改善につながり,一見遠回りでも国全体の発展につながります。

今後は,セミナー開催を通じて得た知識や技術を基に,ミャンマーの人が自らセミナーを行うことができるようになるためのミャンマー語の研修教材を作成する取組を開始する予定です。

平成28年11月のヤンゴンの研修施設での開講式の写真

ヤンゴンの研修施設での開講式(平成28年11月)