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アジ研によるオンラインでの国際高官セミナー・保護司国際研修の開催
~多機関連携・官民協働による再犯防止についての国内外の経験の共有~

国際高官セミナーについて

本年度、国連アジア極東犯罪防止研修所(アジ研)では、海外の刑事司法の実務家に向けた国際研修を全てオンラインで実施しています。このうち、令和4年1月12日から同年2月3日まで開催された第177回国際高官セミナーには、12カ国から19名の研修員が参加し、研修テーマ「再犯防止のための多機関連携と官民協働」について議論しました。犯罪をした人が社会に戻ってから再び犯罪をしないようにするためには、住居や仕事探しなど、その社会復帰を支援することが必要になります。適切なケースにおいては、刑事施設への収容自体を避け、社会生活を送らせたまま更生を促す選択肢も考える必要があります。しかし、社会復帰に必要な支援は様々であり、刑事司法機関だけでなく、福祉などを担う公的機関や、地域の支援団体、ボランティアなどとの協働が欠かせません。こうした多機関連携や官民協働は、令和3年3月の京都コングレスで採択された京都宣言においてもその重要性が指摘されるなど、国際的にも注目されています。

オンラインでの研修の状況

オンラインでの研修は、時差の問題や、通常の職務にあたりながら参加する研修員への配慮などが必要になります。視聴時間を柔軟にできるよう録画講義を活用しつつ、双方向での討議が必要な場面ではライブでの研修の機会を多く設けました。海外研修員は、互いの国の制度や実務の実情と課題について発表して経験を共有するとともに、アジ研の教官や国内外の講師による講義や質疑応答セッションを通じて、テーマへの理解を深めていきました。

画像:英国の専門家ウィル・ヒューズ氏との質疑応答セッション
画像:英国の専門家ウィル・ヒューズ氏との質疑応答セッション

英国の専門家ウィル・ヒューズ氏との質疑応答セッション

オンラインでの研修の状況

日本の保護司8名がオンラインで参加したことも研修に多角的な視点をもたらしました。これは、アジ研と法務省保護局が共催する「保護司国際研修」という枠組みで、国際研修期間中に保護司に部分的に参加してもらい、保護司の活動を発表していただくとともに、保護司にも海外の制度や実情を知ってもらうことを目的として、過去30年以上にわたり開催されてきたものです。オンラインでの保護司国際研修の実施は今回が初めてでした。

保護司は、犯罪や非行をした人の立ち直りを地域で支えるボランティアです。保護観察を受けている人に寄り添いながら個別の支援を行うほか、更生を支援する大切さについて地域での理解を広げるための幅広い活動も行っています。参加した保護司には、現場の保護司活動の実際を海外の研修員に向けてオンラインで発信していただきました。保護司制度には、海外の研修員からも様々な質問が寄せられ、また、保護司の参加者の皆さんも、外国の制度説明に様々な刺激を受けたようでした。

犯罪をした人の再犯の防止は、どの国でもこれから益々重要になってきます。そのための鍵となる様々な分野の人達の協力関係をどうやって築き上げていくのか。今回の国際研修は、国を超えて、また官民を超えて、オンラインでこうしたテーマについて学び合う大変有意義な機会となりました。

画像:保護司に質問する海外参加者

保護司に質問する海外参加者