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東ティモール現地セミナーを開催しました

アジ研による東ティモール民主共和国の刑務所改革支援

国連アジア極東犯罪防止研修所(通称「アジ研」)は、国連と日本国政府との協定に基づき昭和37年に設立された、国連の犯罪防止・刑事司法プログラム・ネットワーク機関の一つで、現在は法務省法務総合研究所が運営しています。アジ研では主に途上国の刑事司法実務家に対し、犯罪防止や犯罪者処遇に関する国際研修を実施しているほか、特定の国や地域を対象とする二か国支援も実施しており、東ティモールに対する刑務所改革支援もその一つです。

現在、アジ研は、かねてより東ティモール当局から要望のあった暴力防止プログラムの導入に向けて支援を行っており、今年度、東ティモールで実施した、現地矯正職員等を対象としたワークショップ(7月24日と25日の2日間実施)では、参加者にグループワークのファシリテーターを体験してもらう取組も行いました。

さらに、東ティモールにおいては、現在、少年用の矯正施設の建築計画が進んでいるところ(現在は少年も成人用の矯正施設に収容)、今年度のワークショップでは、非行少年や若年犯罪者の処遇についてより高い専門性を提供するため、東京矯正管区の池田管区長にも同行していただきました。池田管区長によるこれまでの経験に裏打ちされた日本の少年矯正の処遇理念等に関する講義に、参加者はとても熱心に聞き入り、終了時間を超過しても質問を求める挙手が相次ぎました。

池田東京矯正管区長による講義の様子

池田東京矯正管区長による講義の様子

目に見える成果

アジ研では、東ティモールに対する支援を平成30年から開始し、コロナ禍での中断を経つつも、毎年東ティモールを訪れ、また東ティモールから研修員を招へいして信頼関係を構築してきました。そして、今回の出張では、日本で見た矯正施設の取組を柔軟に自国に取り込む東ティモール当局の応答性の高さに驚かされました。

例えば、首都にあるベコラ刑務所では、日本の多摩少年院の取組を参考に、敷地内に農地が開墾されたほか、刑務所による指導の一環として、受刑者が塀の外で清掃作業を実施していました。また、府中刑務所で見た所内模型図を参考に作成したベコラ刑務所の所内模型図が所長室にあり、法務省で見たキャピックショップを参照したキオスクまでもが敷地内に建築されていました。さらに、首都郊外にあるグレノ刑務所では、受刑者が職業訓練で作成したパソコンケースをお土産としていただきました。このアイデアは川越少年刑務所で学んだもので、受刑者が作業で作成したものをお土産として参観者に渡すという取組を反映したものとのことでした。

このように、彼らが日本で見聞きしたものを自国に持ち帰り、日本で得た知見をもとに、自らの組織を主体的に発展させていく姿は、まさに法務省が実施する「寄り添い型支援」の成功例の一つと言えると思います。

アジ研ではこれからも、東ティモールの歴史や文化的背景、目指す未来像を尊重しながら、東ティモールの生活に根付く丁寧な支援を実践していきたいと考えています。

ベコラ刑務所模型図
(府中刑務所の所内模型図を参考に作成)
ベコラ刑務所模型図
(府中刑務所の所内模型図を参考に作成)
グレノ刑務所で受刑者が作成した
パソコンケース
グレノ刑務所で受刑者が作成した
パソコンケース