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第1回日ASEAN刑事司法セミナーを開催しました!
日ASEAN刑事司法セミナーとは?
令和5年7月に東京で開催された日ASEAN特別法務大臣会合において、「共同声明」及び「日ASEAN法務・司法ワークプラン」が採択されました。これらに基づき、ASEAN域内の法制度・実務の発展を目指し、現在する課題解決に向けた各国の取組を支援するべく創設されたのが「日ASEAN刑事司法セミナー」です。令和6年12月に国連アジア極東犯罪防止研修所(アジ研)が独立行政法人国際協力機構(JICA)と共同で第1回目となるセミナーを開催し、捜査共助(MLA)及び犯罪者処遇(OTR)の2つのセッションを並行して行いました。

日ASEAN特別法務大臣会合(本会合)
MLAセッションの概要
MLAセッションでは、「ASEANにおける国際協力の強化:効果的な捜査共助のための新たなツールの活用」を主要課題とし、ASEAN各国の捜査共助中央当局及びASEAN事務局から計10名が参加しました。ASEANにおいては捜査共助条約(ASEAN-MLAT)が締結されていますが、近時、犯罪の巧妙化や国際化等を受け、より効果的な捜査共助の実施が課題となっています。これを受けて、UNODC(国連薬物・犯罪事務所)東南アジア大洋州地域事務所(バンコク)とASEAN事務局では、ASEAN-MLATに基づく捜査共助要請書のモデルテンプレートを策定中であるところ、本セッションでは、UNODCと連携し、架空の薬物密輸事案を題材に、最新のモデルテンプレート案を用いた参加国間相互の捜査共助要請書の起案・講評を行うとともに、講義や施設見学を実施しました。
セミナー参加者からは、起案前後の相互の情報交換やフィードバックを始めとする実務的なカリキュラムや参加国間のネットワークの構築等につき、肯定的な意見が多く寄せられたほか、モデルテンプレート案についても率直な意見交換がなされました。

MLAセッションの様子
OTRセッションの概要
OTRセッションは、「ASEANにおける過剰収容対策、とりわけ非拘禁措置を活用した加害者処遇の実情とその課題」を主要課題とし、ASEAN各国及び東ティモールから11名、日本人2名の計13人が参加しました。ASEAN域内の多くの国では、刑務所の過剰収容が課題となっています。そのため、本セミナーでは、社会内処遇などの非拘禁措置の活用、適切な刑務所運営や犯罪者の社会復帰の促進を念頭に、ASEAN各国における現状と課題、グッドプラクティス等の情報や経験の共有、ASEAN各国の実務改善のための継続的な情報交換に向けたネットワーク構築を図りました。
セミナー参加者からは、国別発表や講義、施設見学などを通じて、更生保護ボランティア制度や多機関連携を含む非拘禁措置や犯罪者処遇に関するグッドプラクティスが共有され、ASEAN地域で犯罪者処遇に携わる実務家のネットワークを築くことができたと肯定的な意見が多く寄せられました。

OTRセッションの様子
結びに代えて
本セミナーは今年度が第1回目の開催でしたが、MLAセッションにおいては、各国で捜査共助に携わる若手・中堅の実務家の参加を得て、模擬事例の起案と意見交換を行うことにより、近くASEAN関連会合において採択される見込みのASEAN―MLATモデルテンプレートの策定に寄与するとともに、ASEAN地域における薬物不正取引やマネーローンダリング等の国際組織犯罪対策の取組に貢献することができました。
また、OTRセッションにおいては、ASEAN諸国と日本からの参加者による具体的な知見の共有や相互理解を通じて、よりよい犯罪者処遇制度をともに確立していこうとする機運が醸成され、そのための人的ネットワークが形成されるなどの成果をあげることができました。
アジ研においては、引き続き、本セミナーを着実に実施し、ASEAN地域の刑事司法実務家の能力構築と協力促進に努めてまいります。

集合写真