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法制度整備支援の現場から

ベトナム長期派遣専門家 茅根 航一

法務省は、独立行政法人国際協力機構(JICA)や関係機関とともに、外国の法制度の整備を支援する活動(法制度整備支援)を行っています。ベトナムは、その最初の対象国であり、令和6年は法務省による支援が開始されてから30年目の節目の年でした。また、法務・司法分野におけるJICAプロジェクトの枠組による支援は約28年間に及びます。このように、ベトナムの法務・司法分野における日本政府の支援には長い歴史があります。

現在は、令和3年1月から令和7年12月までの期間で、司法省、共産党中央内政委員会、首相府、最高人民裁判所、最高人民検察院、ベトナム弁護士連合会という6つのカウンターパート機関を相手に、「法整備・執行の質及び効率性向上プロジェクト」というJICAのプロジェクトが実施されています。このプロジェクトは、ベトナムの法・司法改革の促進と国家の国際競争力の強化に寄与するため、日本でいう法令に当たる法規範文書制度の質及びその効果的な執行が国際標準に照らして向上することを目標としています。私は、令和6年3月に法務省からベトナムに派遣され、ハノイにあるプロジェクトオフィスにおいてJICA専門家として勤務しています。

プロジェクトの活動として、日頃、現地において、各カウンターパート機関とセミナー、ワークショップ等を実施していますが、時には日本で研修を実施することもあります。令和6年11月には、共産党中央内政委員会から、副委員長を団長とする10名が、ベトナムで問題となっている金融・銀行取引分野の犯罪防止やマネーローンダリング対策に関する知見を得るために訪日し、関係機関の講義等からなる研修を受け、鈴木法務大臣に表敬する機会も得ました。

最近、日本で暮らすベトナム人の数が増えていることや、多数の日本企業がベトナムに進出していることに象徴されるように、日越両国の関係は密接です。令和5年には両国の関係が「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げされたばかりであり、ベトナムは今後も日本にとって重要なパートナーであり続けると思われます。私としては、現在従事しているプロジェクトを通じて、日越間の良好な関係の構築に少しでも貢献したいと考えています。

末筆ながら、ベトナムの法務・司法分野の支援の先駆者であり、JICAプロジェクトにも多大な貢献をされた森嶌昭夫名古屋大学名誉教授が令和6年5月に逝去されました。この場をお借りして心から哀悼の意を表します。