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法整備支援の現場から

カンボジア長期派遣専門家 金納 達昭

日本のカンボジアに対する法整備支援の歴史は古く,平成8年に開始してから現在まで25年間にわたり続いています。これまでに,日本の支援により,民法や民事訴訟法といった重要な法律が成立しました。もっとも,法整備支援の活動は,法律が成立したからといって終わりではありません。現地の方々が,成立した法律を理解し,正しく運用できるように手助けすることも,法整備支援の重要な活動の一部です。

私は,カンボジアの裁判官や弁護士の方々と一緒に,カンボジアでよくある類型の民事事件について,訴状や判決書等の書式例を作る活動をしています。これらの書式例を活用することにより,カンボジアの法律家の間で民法や民事訴訟法の理解が進み,適切な訴訟手続が行われることを期待しています。これらの書式例は,完成したものから順番に,裁判官を対象としたセミナーで周知されるほか,司法省のホームページでも公開されています。

上記のセミナーについては,新型コロナウイルス感染症の影響により,開催をすることが難しい時期もありましたが,令和3年8月にオンラインで開催することができました。セミナーのテーマは民事執行と民事保全で,関連する書式例と手続が紹介されました。参加者からは実務上の問題点について様々な質問や意見が寄せられましたが,特に印象に残ったのは,過去に法整備支援の活動に関与した経験がある裁判官が積極的に発言してくれたことです。法律の起草支援のようにわかりやすいものではないですが,現地の法律家が法整備支援の活動を通じて知識を深め,活躍していくことも,法整備支援の重要な成果の1つだと感じました。

法整備支援の活動は,法律の起草支援から法律を活用できる人材の育成まで多岐にわたり,成果が現れるまでに時間がかかるものも少なくありません。しかし,現地には自国の司法をよりよいものにしようという熱意を持った法律家がたくさんいます。私達は,そのような法律家と協力しながら,カンボジアの司法を改善するため,日々活動を続けています。

オンラインセミナーの様子①

オンラインセミナーの様子①

オンラインセミナーの様子②

オンラインセミナーの様子②