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特別機動警備隊(SeRT(サート))の熱海市への派遣について

〇特別機動警備隊(SeRT(サート))とは

法務省矯正局特別機動警備隊(Special Security Readiness Team:通称「SeRT(サート)」)は,矯正施設での非常事態(暴動,逃走,天災事変等)における警備活動,災害復旧その他の救援活動を行うため,平成31年4月1日に創設された矯正局長直轄の部隊です。

SeRT(サート)は発足からこれまでに,あらゆる非常事態に対応できるよう,各種訓練を積み重ねてきました。訓練の目的は先に述べたとおりですが,大規模な災害発生時には,訓練の成果を地域支援という形で発揮することができました。1回目は,令和元年10月の台風19号による被害を受けた長野県須坂市への派遣(「あかれんが第67号」に掲載),そして2回目が令和3年7月1日からの大雨による土砂災害からの復旧支援のため,SeRT(サート)隊員(以下,「隊員」とする。)を派遣した静岡県熱海市での活動です。今回は,その熱海市での活動をお伝えしたいと思います。

〇派遣に至るまで

熱海市では,令和3年7月3日の伊豆山地区における土砂災害発生後,同地区において,捜索関係者による行方不明者の捜索活動が連日実施されましたが,二次災害の危険性を伴う捜索活動現場付近に,捜索関係者以外の人が立ち入り,捜索活動が一時中断するなどの事態が発生し,新たな課題となっていました。矯正局から静岡刑務所を通じて静岡県へ支援の申入れを行ったところ,熱海市から捜索活動現場周辺警備の支援要望がなされました。同月18日,要望を受けて直ちに,隊員18名及びリエゾンの本部員1名が現地に派遣され,熱海市及び熱海警察署と連携しつつ,主に①立入禁止区域(救助活動区域)の明確化,②立入禁止区域への関係者以外の立入規制,③立入禁止区域周辺の交通規制の3つの支援活動を行い,円滑な捜索活動が行えるよう努めました。

〇警備活動の様子

派遣初日は,立入禁止区域の明確化のため,規制線を張るとともに,警備箇所付近の状況確認等を行いました。警備箇所は,被災箇所を両側から警備できるよう,3方面に分けて配置しました。派遣2日目以降は,連日の炎天下の中,午前6時から午後6時までの間,関係機関とも協力の上,警備活動等を実施しました。

警備活動をする中で,隊員は,常に柔軟な対応を意識していました。本来,立入禁止区域ですので,立ち入ろうとする人に対して,一律に立入禁止を告知することも可能ですが,円滑な捜索活動の援助という警備活動の目的を達成できる限りにおいて,被害を受けた地域住民のニーズ,そして気持ちに寄り添うことが第一であると考え,救助活動に支障をきたさない範囲で,自宅まで付き添うなど安全を確保しつつ,要望をできる限り受け入れることとしました。また,受け入れられない要望については,立ち入ることができない理由を示すなど,丁寧に説明を行い,立入禁止であることを理解してもらいました。

このような隊員の柔軟な対応は,地元紙である熱海新聞の紙面にも取り上げられるなど,多くの皆さまから感謝の意を表していただけました。

立入制限区域における警備活動の様子

立入制限区域における警備活動の様子

危険箇所の通行規制の様子

危険箇所の通行規制の様子

〇これから

SeRT(サート)は,これからも矯正施設における非常事態に備えた多種多様な訓練を積み重ね,災害対処能力向上にも一層力を入れてまいります。そして,訓練で得た知識や技術等を地域から求められることがあれば,最大限発揮し,地域に貢献することができれば,大変嬉しく思います。