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再研修及び交代制による研修に係る要件の明確化について

法務省入国管理局
平成18年3月


 研修制度を活用して,我が国で技術,技能又は知識を学ぶ外国人は,「研修」の在留資格で在留することとなるが,同在留資格については,出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令(以下「基準省令」という。)の定める基準として,

 (1)

「修得しようとする技術,技能又は知識が同一の作業の反復のみによって修得できるものではないこと。」,

 (2)

「帰国後本邦において修得した技術,技能又は知識を要する業務に従事することが予定されていること。」,

 (3)

「国籍又は住所を有する地域において修得することが不可能又は困難である技術,技能又は知識を修得しようとすること。」

等が定められている。
 これらの基準は,人材育成を通じた国際協力・国際貢献を目的とする現行研修制度の趣旨を具体化し,我が国での研修により,母国に技術,技能等の移転がはかられることを確保するとの観点から定められているものである。
 このように,研修生は,母国においては学ぶことが困難な技術,技能等を我が国で学び,それを母国に戻って活用し,母国の発展に尽くすことが必要とされており,それ故に,同じ研修を何回も受けることは想定されていない。しかしながら,産業上の技術・技能の高度化等もあり,我が国で研修を修了し帰国した後,あまり期間が経過しない時期に,再度,我が国で同一分野のより高度の研修や別の業種についての研修を受けることを必要とする場合等がある。
 また,研修は「本邦の公私の機関により受け入れられて」「技術,技能又は知識」の修得をするものであり,このことは業務に従事する実務研修についても異なるところはなく,したがって,報酬を受けて働く労働者と同様に活動をするべきものではない。それ故,研修は,原則として,昼間に行うこととし夜間又は早朝に研修を行うことは通常認められていないが,効果的な研修を行う上で,例えば交替制により,特別な時間帯に研修を行うことが必要となる場合もある。
 このような再研修や交替制による研修は,従来から個々に審査し合理的な事情があるときに,例外的に認めてきているものであるが,今般,この「再研修」及び「交替制による研修」が認められる場合を明確化すべきとの指摘があったことから,当局での審査に当たってのガイドラインを下記のとおり定め,公表することとした。

 再研修について

 

 (1

) より上級の又は関連する技術,技能等の修得を目的とする再研修であること
 前回,我が国で学んだ研修と同じものを繰り返すのであれば,研修制度の趣旨に適さない上,前回の研修が適切に実施されていたかどうかという問題も生じ,適当ではない。
 したがって,再研修を受けようとする場合は,原則として,さらに上級の又は関連する前回とは異なる技術,技能等を我が国において学ぶものであり,かつ,その者が母国において従事している業務との関係において,実際に,その必要性が合理的に説明されることが必要である。例えば,再研修を修了し,母国に戻った後の職務上の立場等から,新たな研修の成果に係る活用の必要性が認定できることが必要となる。
 なお,再研修を実施する機関については,再研修が効果的に実施されると判断されれば,必ずしも,前回の研修を実施した機関と同一の機関である必要はない。

 (2

) 前回研修で学んだ技術等が,母国において活用されていること
 再研修を受けようとする場合は,それを受けようとする者が前回の研修で学んだ技術,技能等を,母国において既に活用していることが必要であり,母国において活用した期間のみで判断されるものではないが,相当の期間,前回の研修の成果を活かした活動を行っていることが必要である。
 母国で研修の成果を活かして活動を行っている期間が我が国での研修及び技能実習期間と比較して,あまりに短い場合(例えば,我が国において3年間にわたる研修及び技能実習を修了した後,母国において復職し,その3か月後に再研修を受けたいとする場合)や,全く前回の研修で学んだ技術,技能等を活用する活動に従事していない場合(例えば,復職せず,全くの異業種に就職していたような場合)については,その理由に合理性がなければ,再研修を相当と認めることはできない。
 *特に,前回の研修で学んだことが全く活用されていない場合は,前回の研修に係る申請が虚偽でなかったことについて合理的な説明ができることが必要である。

 (3

) 従前と全く異なる業種に係る研修ではないこと
 原則として,前回と同一又は関連する業種についての研修であることが必要であるが,我が国において,従前と全く異なる業種(関連性のない業種)に係る研修を,受けたいとする場合は,当該研修を受けようとする者が,このような研修を受けることが必要となったことについて合理的な理由があること及び前回の研修(技能実習)修了後,前回の研修の成果を母国において活用し,又は少なくとも活用しようとしたが事情の変化により活用できなくなったことを,合理的に説明することができなければならない。

 

(参

考)「再研修」が認められた事例としては,以下のようなものがある。

 

事例1

 

 本邦の電機部品メーカーの合弁企業の技術者であるAが,半年間,我が国において金型のメンテナンスを中心とした仕上げ組立ての研修(実務研修を含む。)を受け,帰国してから母国の合弁企業の工場において金型部門スタッフとして従事し,その4年後に,金型製作,加工に関する加工機プログラムの技術,知識修得を目的とした1年間にわたる研修(実務研修を含む。)を受けることが認められたもの。
 なお,研修実施先は,2回とも同一の機関である。

 

事例2

 

 ミャンマーにあるコンピュータソフト開発会社であるA会社は,アメリカにあるコンピュータソフト開発会社であるB会社との間において,研修・教育等に関する契約を締結している関係から,A会社に所属するCが,B会社の本邦にある子会社であるD会社において,1年間,C言語を中心とした初級プログラミングの研修(非実務研修のみ。)を受け,帰国してからA会社においてB会社のソフトウェア製品に関するプロジェクトに加わり,そのプロジェクトを遂行する上で必要であるとして,1年4か月後に,プログラミングのみではなく,全体的な工程に係るプロジェクトマネージャーとしての研修(非実務研修のみ。)を1年間にわたり受けることが認められたもの。
 なお,研修実施先は,2回とも同一の機関である。

 

事例3

 

 本邦の化学・プラスチックメーカーA会社の中国にある現地法人B会社の技術者であるCが,半年間,A会社に受け入れられて,反射シートの操作,製造技術の研修(実務研修を含む。)を受け,帰国してからB会社において当該業務に従事し,その約5年後に,A会社において,設備管理(機械,電機関係の保守管理)に係る知識修得を目的とした約2か月の研修(非実務研修のみ。)を受けることが認められたもの。

 

 2

 交替制による研修について
 研修生は,あくまで技術,技能等を学ぶ者であり,実務研修であっても当然に,労働者と同様な勤務形態で研修を行うべきものではなく,夜間や早朝の研修は,原則としては認められない。しかし,業務の特殊性から,次のいずれにも該当する場合で,交替制による研修を実施した方がより効果的な研修が行われると判断される場合には,認められる。

 

  (1

)日本人従業員の代替として研修生を従事させるなどのおそれが全くないこと。
*研修制度の趣旨から当然のこととして求められる。

  (2

)深夜(22時から5時まで)に研修が実施されることがないこと。

  (3

)当該研修が研修指導員が勤務する時間帯に行われるものであること。
*研修は研修指導員の指導・監督の下に,行われる必要があることから,研修指導員が不在の時間帯に研修を行うことは認められない。

  (4

)研修効果の観点から,交替制による研修を行うことを真に必要とする合理的な理由,必要性が認められること。

  (5

)交替制による研修時間が総研修時間に比して著しく長期にわたるものではないこと。

 

 (参

考)「交替制」が認められた許可事例としては,以下のようなものがある。

 

事例1

 

 民法第34条の規定により設立された法人を研修事業主体とし,繊維製品メーカーである企業を受入れ機関として行われる紡績技術(綿糸,織布等の繊維製品製造)の研修に関して,品質の安定,コスト低減を図るため,その製造工程において連続操業を行っていることから,交替制による研修が,その品質管理及びコスト管理の手法を学ぶ上で有効であるとして,(1)6時から14時まで(休憩時間8時より45分)と(2)14時から22時まで(休憩時間18時30分より45分)の交替制による研修が認められたもの((2)の形態は夜間にわたる部分が多いため,研修生の健康と事故防止に配慮し,(2)の形態は(1)の3分の1以下の割合としている。)。
 なお,日本人従業員の勤務形態は,次のとおりであり,研修指導員についても各シフトの中にそれぞれ配置されている。
 また,研修修了後,復職予定の本国の会社においても,交替制により作業を行っている。

 



・日本人従業員のシフトパターン(労働基準法第32条の4に規定する変形労働時間制)

 

始業時間

終業時間

休憩時間

 昼勤

 8:00

16:40

12:00から40分
14:50から10分

 先番

 6:00

14:00

 8:00から45分

 後番

14:00

22:00

18:30から45分

 深夜勤

22:00

 6:00

00:30から30分
 3:15から15分

 

事例2

 

 (1)8時30分から17時30分までと(2)13時から22時までの交替制勤務をとっている本邦にある精密機器製造会社が,海外の現地法人の精密機器組立て工を受け入れて実施した3か月の研修(実務研修を含む。)において,当該会社の生産計画との関係上,実務研修で使用する生産ラインを日中は使用することが難しい5日間について,ラインに余裕が出る(2)の時間帯にて実務研修を行う必要があるとして認められたもの。

 

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