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記者が行く!
~八街少年院のGMaC(ジーマック)プログラムについて~

【記 者】

皆さま,こんにちは!

千葉県にある八街少年院では,非行を反省し,立ち直りに向けて教育を受けている少年たちと,動物愛護センターで保護された犬が,約3か月の訓練をとおして信頼関係を築きながら取り組むユニークなプログラムがあります。GMaC(ジーマック)といいます。

今号はこのプログラムについて,矯正局少年矯正課の担当者にお話を伺ってきました。

プログラム名GMaCとは,どのような意味ですか。

このプログラム名は,Give Me a Chance(「チャンスを僕に!」)という言葉の頭文字からとっています。

このプログラムの目的や具体的な内容について教えてください。

GMaCは,八街少年院が,ヒューマニン財団という犬の保護に関わる財団と連携して実施しているプログラムです。具体的には,動物愛護センターに保護されている犬を,ヒューマニン財団が引き取り,約3か月にわたり,週4回,少年院に財団の方と犬が来てくれます。少年1人と犬1匹がペアになり,その犬が家庭犬となるのに必要なしつけや社会科訓練を行います。

このプログラムは,在院者が,①犬の変化をとおして,自分自身の価値を再発見すること,②他人を思いやる心を育みつつ,忍耐力・責任感・コミュニケーション能力を身に付けること,③訓練をとおして,保護犬の社会化に繋げられる社会貢献活動への参加を自覚できることなどを目指すものです。

このプログラムがユニークなところは,犬の訓練に,八街少年院の少年と,ヒューマニン財団に加えて,サポートファミリーという一般の家庭も関与しているところです。週末は,それぞれの犬をサポートファミリーの家に預け,面倒を見てもらいます。少年はサポートファミリーと「引継書」を通して犬の情報を共有します。まるで交換日記のようなもので,犬を真ん中にして,少年とサポートファミリーとの間の交流が図られます。

プログラム終了後は,犬を引き取った新しい家族から少年宛に,お手紙をいただくこともあります。

このプログラムを始めるようになったきっかけは何ですか。

平成25年5月,大塚敦子氏(少年院における動物(犬)介在活動等検討会の外部アドバイザー)が,知人の鋒山佐恵氏(アメリカにて補助犬訓練士の専門的知識を学び,アメリカの女子少年院でインストラクターを経験)考案の本プログラムについて,少年院で実施できないかと提案したのがきっかけです。

八街少年院には,鋒山さん他,ヒューマニン財団から2名の方がインストラクターとして来てくれています。

このプログラムは全国の少年院で行われているのですか。

少年院で犬を介在させた教育活動を実施しているのは,八街少年院を含め,全国で8つあります。プログラムの内容はそれぞれの少年院により異なります。

プログラムに参加している犬たちは,何か特別な訓練を受けているのですか。

プログラムに参加する犬たちは,特別な訓練を受けていません。いずれの犬たちも,動物愛護センターなどからやってきています。

プログラムを受けた少年たちは,どのように変化しましたか。

少年と犬はペアで,ヒューマニン財団のインストラクターの指導を受けながらずっと一緒に訓練を続けます。そうした中で見られる変化はいくつかあります。

まず,少年たちには責任感が生まれます。犬の訓練はスムーズに進むものではなく,初めから課題が出てくるときもあれば,途中で急に壁に当たることもあります。そのようなとき,少年たちは,自分の担当する犬がここで終わってしまうのか,もしくはもっと先に行けるのか,それは自分自身にかかっていることを自覚するようになります。

また,少年たちには問題解決能力が養われるように見えます。今まで,困ったことがあっても,逃げたり,ごまかしたりしてきた少年も,犬の為ならとその先に進むことを諦めません。そして,何が問題であり,それを解決するには何が必要なのかを自ら考えるようになります。

ときには他の参加者たちと一緒に考え,他人に頼ってもいいことも学びます。

こうして,犬が課題や壁を乗り越え先に進むことができたとき,少年たちの中には,達成感と,自分でもやればできるのだという自己肯定感が生まれます。

少年たちは,自分が担当する犬に対し,ヒューマニン財団やサポートファミリーなど,様々な人が関わっていることにも気づきます。そして,自分の行動が社会に役立っているとの実感を得たように見えます。

少年と犬との訓練の様子①

少年と犬との訓練の様子①

少年と犬との訓練の様子②

少年と犬との訓練の様子②

少年と犬との訓練の様子③

少年と犬との訓練の様子③