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法制度整備支援の現場から

スリランカ民主社会主義共和国(以下「スリランカ」といいます。)は,インドの南東に浮かぶ島国であり,26年間続いた内戦が2009年に終結し,平和構築と社会再建に取り組んでいます。スリランカでは,現在,刑事訴訟手続に深刻な遅延が生じているという問題も抱えており,国際協力機構(JICA)が刑事司法実務の改善を目的に2019年度から支援を開始し,法務総合研究所国際協力部(ICD)も研修等に協力しています。

このような協力の一環として,第2回本邦研修(以下「本研修」といいます。)が,本年3月及び4月に合計4日間,新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からオンラインで実施され,約21名が参加しました。本研修では,法務総合研究所所長による講義をはじめ,日本の公判前整理手続の制度や刑事司法の実務を紹介したほか,刑事弁護の経験の豊富な弁護士とICDの教官が参加するパネル・ディスカッションを行い,スリランカの研修参加者からもプレゼンテーションが行われました。

特に印象深かったのは,短期間,しかも非対面という制約の下でしたが,スリランカの裁判官,検事,弁護士が同じテーブルについて熱心に議論をしていた姿です。スリランカの実務では検事と弁護士が話し合う機会は必ずしも多くないと聞いています。実際,3月の研修には,検事と裁判官,司法省の職員は参加しましたが,当初予定されていた弁護士の参加は得られませんでした。しかし,3月の研修に参加した検事たちから,弁護士の参加を望む声が上がり,JICAの現地事務所の働きかけもあって,4月の研修にはスリランカの法曹三者(裁判官,検事,弁護士)がそろい,訴訟遅延の解消という共通の課題について率直に意見を述べ合うことができました。

本研修の様子①

本研修の様子①

本研修の様子②

本研修の様子②

本研修最後の振り返りの機会において,スリランカの研修参加者の1人は,「参加する前はオンライン研修の効果に懐疑的だったが,今は参加できたことを感謝している。」と発言しており,研修に参加した成果を感じてもらうことができました。

JICAによる支援は2021年度以降も継続することが決まっていますので,今後も,本研修の参加者たちを含め,スリランカの法曹関係者が共通の課題について議論を続けていけるよう,ICDも引き続き協力をしてまいります。

法務総合研究所国際協力部教官
河野 龍三