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世界保護司会議の開催及びその成果を踏まえた今後の取組について

世界保護司会議とは

令和3年3月7日(日),第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)のサイドイベントとして,世界保護司会議が開催されました。

本会議は,保護司を始めとする地域ボランティアが再犯防止の取組に参画することの有用性や,これらの制度を世界に広めていくための方策などについて議論するための会議です。

本会議は,来場参加とオンライン参加を組み合わせて行われ,世界各国の刑事司法実務家や研究者,国連関係者,保護司等が参加し,本会議の様子はインターネットを通して世界各地に配信されました。

会議概要

開会

上川陽子法務大臣から,保護司を始めとする地域ボランティアの活動は,SDGsに掲げられたマルチステークホルダー・パートナーシップを体現するものであり,本会議の成果が地域ボランティアの輪を世界に広げていくための礎となることを期待しているとの歓迎挨拶がありました。それに引き続き国連薬物犯罪事務所(UNODC)ガーダ・ワーリー事務局長から,本会議が犯罪者の社会への再統合における地域ボランティアの国際ネットワークの構築につながることへの期待が述べられました。続いて,谷垣禎一全国保護司連盟理事長からは,誰もが再チャレンジできる社会を築くために常日頃から地道な活動を続けておられる保護司の方々は,人間社会にとって「エッセンシャル」な存在であるとのビデオメッセージが流されました。

上川陽子法務大臣

谷垣禎一全保連理事長

ゲストスピーチ

タイ法務研究所ナティー・チッサワン次長から,日本の保護司制度が再犯防止に効果があるという評価とともに,保護司制度を支えるインフラを整備する必要があるとの指摘がありました。

ナティー・チッサワン氏

基調講演

国際矯正司法心理学協会前会長フランク・ポポリーノ博士(カナダ)から,犯罪者処遇においては,信頼関係を築くこととそれによって相手の変化に影響を及ぼすことが重要であり,これを実践している日本の保護司制度は革新的であるという発表がありました。

フランク・ポポリーノ博士

パネルディスカッション

「罪を犯した人の立ち直りを支える地域ボランティアの有用性」をテーマにパネルディスカッションが行われ,タイ,フィリピン,日本,ケニア,カナダ,イギリスの各パネリストによる発表と意見交換が行われました。

各発表によると,フィリピンやタイ,ケニアでは,日本の保護司制度を基に,地域で犯罪者の立ち直りを支えることを基本としつつも,修復的司法の支援業務(フィリピン)や電子監視の補助(タイ),保護観察官がいない地域での代理業務(ケニア)などを保護司が行うなど,独自に発展した制度があるとのことでした。一方,欧米では,性犯罪者の地域社会への復帰を促進するための「支援と責任の輪」(CoSA)や,犯罪者の家族や女性など特定のグループを対象とした地域ボランティア制度があるとのことでした。

また,日本のパネリストである安藤良子保護司から,保護司としての保護観察対象者との関係作りや,犯罪をした人が地域に受け入れられるためには地域の理解や協力が必要不可欠であることなどについて発表がありました。

パネルディスカッションの様子

安藤良子保護司

京都保護司宣言の採択

今福章二保護局長からの趣旨説明やパネルディスカッションを踏まえ,「京都保護司宣言」が採択されました。同宣言には,保護司などの地域ボランティアの国際的認知を向上することや,保護司制度を世界各国へ普及させること,そして国連の国際デーとしての「世界保護司デー」の創設に取り組んでいくことが盛り込まれています。

京都保護司宣言を掲げるUNODCルボー司法課長

閉会

UNODCのヴァレリー・ルボー司法課長から,犯罪者の立ち直りを支援する地域ボランティアのグローバル・ネットワークを構築し,国際協力や相互支援を強化すべきという京都保護司宣言を歓迎するとの閉会挨拶がありました。

今後の取組

罪を犯した人を隣人として受け入れ,同じ目線に立って親身に接することで,その立ち直りを支える保護司のアプローチは,SDGsの理念に通じるものであり,安全・安心な社会を作るために重要なものとして,世界に広げていく価値のあるものです。

今後,本会議の成果を再犯防止・更生保護に関する国連のスタンダード作りに活かしていくとともに,日本の保護司を世界共通語の「HOGOSHI」として広く世界に発信していきます。

世界保護司会議の詳細については,こちらからご覧ください。