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永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン

第1 総論

1 永住者の在留資格の取消しについて

「永住者」の在留資格をもって在留する外国人が有する身分又は地位は、「法務大臣が永住を認める者」(出入国管理及び難民認定法((昭和二十六年政令第三百十九号)別表第二の永住者の項の下欄)であり、「永住者」の在留資格は、活動・在留期間に制限がなく、永住許可後には(在留期間の更新などによる)在留審査を受ける機会がないことから、永住許可時には満たしていた永住許可の要件を永住許可後に満たさなくなるような場合が一部において見受けられます。しかし、永住許可の要件を満たさないことから在留状況が良好と評価できない一部の悪質な永住者に永住許可を認め続けることは、国民が不安や不公平感を感じる状況を生じさせ、適切に在留している大多数の永住者を含む外国人への不当な偏見につながるおそれがあり、秩序ある共生社会の実現の観点からも適切ではありません。
 このように事後的に永住許可の要件を満たさなくなった場合に適切に対応する措置として、令和6年出入国管理及び難民認定法等改正法(以下「改正法」といいます。)により、「永住者」の在留資格を取り消すことができる事由(以下「取消事由」といいます。)として、入管法に規定する義務を遵守しないこと、故意に公租公課の支払をしないこと、特定の刑罰法令違反により拘禁刑に処せられたことが追加されました(改正法による改正後の出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」といいます。)第22条の4第1項第8号及び第9号)。ただし、外国人がこれらの取消事由に該当したことにより在留資格の取消しをしようとする場合であっても、当該外国人が引き続き本邦に在留することが適当でないと認める場合を除き、法務大臣が職権で、「永住者」の在留資格以外の在留資格への変更を許可(以下「職権変更」といいます。)するものとされています(入管法第22条の6)。
 また、併せて、国や地方公共団体の職員による在留資格の取消事由に関する出入国在留管理庁(以下「入管庁」といいます。)への通報規定が整備されました(入管法第62条の2)(以下、改正法により追加された取消事由及び通報規定を総称して「本制度」といいます。)。

2 本ガイドラインの目的

 入管庁は、改正法の審議における附帯決議を踏まえ、外国人及び関係者の予見可能性及び処分の公平性を確保するとともに、国又は地方公共団体の職員による入管庁への通報が適切になされ、本制度が適切に運用されることにより、安全・安心な社会の構築に資することを目的として、本ガイドラインを策定し、公表することとしました(注1)。
なお、在留資格の取消事由に該当するかどうかについては、個々の事案の具体的な状況に応じて判断されるものである上、仮に取消事由に該当するとしても、実際にその取消し等をするかどうかは、取消事由に該当することとなった経緯や、その後の在留状況等を踏まえて判断されることとなるところ、本ガイドラインは、法の解釈指針を可能な限り明確化するとともに、想定される事例を示すものです。
(注1)衆議院・参議院における附帯決議(抜粋)
   永住者に対する永住許可の取消及び職権による在留資格の変更を行おうとする場合には、既に我が国に定住している永住者の利益を不当に侵害することのないよう、定着性及び法令違反の悪質性等の個別事情を厳正に判断するとともに、具体的な事例についてのガイドラインを作成し周知するなど、特に慎重な運用に努めること。

第2 各取消事由に関する解釈・考え方について

1 「この法律に規定する義務を遵守せず」(入管法第22条の4第1項第8号)

(1)入管法上の義務について(定義、具体的な類型等)
 入管法第22条の4第1項第8号(以下「8号」といいます)の「この法律に規定する義務」とは、我が国に在留する外国人が遵守すべき入管法上の義務のうち、入管法第9章(罰則)によってその遵守が担保されているものであり、かつ、退去強制事由(入管法第24条各号)に該当しないものを対象としており、中長期在留者に求められている在留カードの携帯義務・提示義務(入管法第23条)や、在留カードの偽変造、偽変造カードの行使・提供・収受などをしない・させない義務(入管法第73条の3)などをいいます。適切な在留管理を行う観点からすると、これらの義務は、いずれも我が国に在留する外国人が遵守すべき基本的な義務であることから、これらの義務を遵守しないことが取消事由として定められています。
 (2)「この法律に規定する義務を遵守せず」の解釈・考え方
 この法律に規定する義務を「遵守せず」とは、前記(1)の義務を履行しないことをいいます。ただし、義務を履行しないことについて「正当な理由」があると認められる場合にはこの限りではありません。「正当な理由」がある場合とは、例えば、病気や災害その他の事情により、義務を履行できなかった場合であって、この「正当な理由」があるかどうかは、当該事情に至った経緯や、履行できなかった義務の内容によって個別に判断されることとなります。
なお、過失によって義務に違反することとなった場合でも取消事由には該当することとなります。
(3)「この法律に規定する義務を遵守せず」に該当すると想定される事例
 取消事由に該当すると想定される主な事例は次のとおりです。このうち次のウ及びエの事例については、既遂の場合には退去強制事由に該当することとなるため、未遂の場合に取消事由に該当することとなります。(各項目の関係規定は入管法を指します。)
ア 在留カードの有効期間の更新、紛失等による在留カードの再交付に係る申請義務(第19条の11、第19条の12関係)
  在留カードの有効期間の満了や、紛失等により在留カードの所持を失った場合に、有効期間の更新や再交付申請をしなかった場合。この場合、在留カードの携帯義務にも継続的に違反し続けることとなります。
イ 在留カード、旅券の携帯及び提示に係る義務(第23条第1項から第3項関係)
   在留カードを携帯しなかったり、在留カードの提示を求められた時に拒否したりする場合。
  ※ ア、イのような場合において、在留カードの有効期間の更新を失念した場合や、不注意により在留カードを携帯しなかった場合であっても、取消事由には該当することとなりますが、その一度の義務の不履行だけをもって在留資格を取り消すことは想定していません。
ウ 在留カードの偽変造、偽変造又は他人名義の在留カードの行使、提供、収受の禁止(第73条の3、第73条の6)
  行使の目的で、在留カードを偽変造しようとしたり、偽変造した在留カードを行使、提供又は収受しようとしたりしてこれらの行為が未遂に終わった場合
エ 退去強制を免れさせる目的で、不法入国者等を蔵匿等することの禁止(第74条の8関係)
 不法入国者等であることを知りながら、当局に連行されることを免れさせる目的で、自己が手配したアパート等にかくまうなどして逃走を助けたり、正規の在留を装わせるために偽変造旅券を提供しようとしたりしてこれらの行為が未遂に終わった場合

2 「故意に公租公課の支払をしないこと」(入管法第22条の4第1項第8号)

(1)「公租公課の支払をしないこと」について(定義、具体的な類型等)
8号における「公租」とは、租税全般をいい、「公課」とは、租税以外の公的負担金をいいます。「公租」の例としては、所得税、住民税、法人税、固定資産税等があり、「公課」の例としては、公的医療保険の保険料(国民健康保険、健康保険等)、公的年金の保険料(国民年金、厚生年金保険)等があります。
また、ここにいう「公租公課」は広く公共の目的で義務的に徴収される性質のものであり、手数料・利用料や、特定の行為に対する制裁としての罰金・過料などはこれに該当しません。例えば、富士山の登下山道に係る使用料や、交通違反による罰金・反則金は、公租公課には含まれません。
また、「公租公課の支払をしないこと」とは、必ずしも、永住者が自ら納税等の義務者となる場合において当該永住者が支払いをしない場合に限られず、例えば、法人に課税等される場合において、当該永住者がその公租公課の支払義務を認識し、その法人を経営又は管理に実質的に関与する立場にありながらあえて支払をしないときは、「公租公課の支払をしないこと」に該当し得ることとなります。
なお、この「公租公課の支払をしないこと」には、実際に滞納が発生している場合に限られず、申告等が必要であることが明白であるにもかかわらず、申告を行わないことなどにより本来支払うべきであった公租公課の支払をしない場合を含みます。
(2)「故意に公租公課の支払をしないこと」の解釈・考え方
「故意に」公租公課の「支払をしない」とは、支払義務があることを認識しているにもかかわらず、あえて支払をしない場合をいいます。あえてその行為をすることを意味する「故意に」との文言が規定された趣旨は、単に公租公課の支払をしていない事実があるだけでなく、支払をしないことが悪質といえる場合に取消事由を限定することにありますので、8号の取消事由に該当するかどうかは、個々の事案の具体的な状況に応じて判断することとなりますが、「永住者」の在留資格をもって在留する者について、収入や資金・財産の状況、公租公課の滞納回数、滞納額、滞納期間、支払状況、滞納発生に至る経緯、滞納発生後の事業や生活の状況等、本人の言動その他の事情を総合考慮し、公租公課の支払意思がないことが明白と認められる場合が、これに該当すると考えられます(注2)。ただし、支払をしないことにつき、やむを得ない事情があり、本人に帰責性が認められない場合は該当しません。
(注2)永住許可後に許可時の要件をあえて満たさなくなった者については、その在留状況が良好であるとは評価できず、この点は改正法の施行前後において変わるものではないため、永住許可後から改正法の施行前に故意に公租公課の支払をしていないことが改正法の施行後に判明した場合も、8号の在留資格の取消事由に該当することとなります。ただし、改正法の施行前の一時点における事情のみをもって直ちに「永住者」の在留資格を取り消すなどとするものではなく、その後の公租公課の支払状況なども含めて判断されることとなります。
(3)「故意に公租公課の支払をしないこと」に該当すると想定される事例
「故意に公租公課の支払をしないこと」(公租公課の支払意思がないことが明白と認められる場合)に該当すると想定される事例と、該当しないと想定される事例はそれぞれ次のとおりです。
  •  該当すると想定される事例
ア 滞納が長期間に及んでいる場合で、地方公共団体への届出なく転居するなどして所在が不明になっているなどの事情がある場合
イ 繰り返しの催告、滞納処分を行ってもなお本人が今後納付する意思を明らかにしない場合(督促や催告を受けているにもかかわらず、何ら支払に関する相談をしない場合など)
ウ 分納や猶予等の措置を受けている場合において、当該分納や猶予の約束の期限までに納付をしないことを繰り返したりした場合
エ 脱税等により、有罪判決を受けた場合
オ 滞納処分を免れる目的で、財産の隠蔽等、徴収を妨げる不正な行為を行ったと認められる場合
カ 永住者が法人の代表その他当該法人の経営及び意思決定に実質的な影響力を有する立場にある場合で、前記ア~オのような事例に該当する場合
  • 該当しないと想定される事例
ア 病気、災害、失業などのやむを得ない事情により支払ができない場合
※ 例えば、事業不振、感染症の流行や災害等による収入変動、DV被害による生活困難、職場等における各種ハラスメントを受けたことを原因とする離職などが考えられます。
イ 催告等に応じて支払う意思を示しており、分納や猶予措置を受けている場合
ウ 生活保護に準じた措置を受けている場合 
エ 給与から公租公課が控除されているにもかかわらず、所属企業が当該公租公課を支払っていない場合
(4)その他(滞納額等と取消事由該当性の関係)
 「故意に公租公課の支払をしないこと」の該当性の判断においては、公租公課の滞納又は申告を行わなかった額、滞納期間や滞納回数等(以下「滞納額等」といいます。)も考慮されますが、前記(2)の考え方を踏まえて、個々の事案の具体的な状況を総合考慮するものであり、必ずしも滞納額等について一律の基準を定めて判断するものではありません。

3 「特定の刑罰法令違反により拘禁刑に処せられたこと」(入管法第22条の4第1項第9号)の解釈・考え方等

特定の刑罰法令違反とは、入管法第22条の4第1項第9号(以下「9号」といいます。)に掲げられている罪に違反することであり、9号に掲げられている具体的な罪は、刑法の窃盗、詐欺、恐喝、殺人の罪などや自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律に規定されている危険運転致死傷の罪など一定の罪に限られており、いずれも故意犯を対象としています(注3)。これらの罪により「拘禁刑に処せられたこと」は、刑期の長短を問わず、拘禁刑の執行が猶予された場合も含まれます。
(注3)9号に規定する罪
○ 刑法:住居侵入(同法第2編第12章)、通貨偽造(第16章)、文書偽造、有価証券偽造、支払用カード電磁的記録、印章偽造(第17章、第18章、第18章の2、第19章)、賭博及び富くじ(第23章)、殺人(第26章)、傷害(第27章)、逮捕及び監禁(第31章)、略取、誘拐及び人身売買(第33章)、窃盗及び強盗、(第36章)、詐欺及び恐喝(第37章)、盗品等に関する罪(第39章)
○ 暴力行為等処罰に関する法律:集団的暴行・脅迫・器物毀損、常習的傷害・暴行等(同法第1条、第1条の2、第1条の3)
○ 盗犯等の防止及び処分に関する法律:常習特殊窃盗、常習累犯窃盗、常習特殊強盗致傷(同法第2条、第3条、第4条)
○ 特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律:特殊開錠用具の不法販売・授与、特殊開錠用具の不法所持・指定侵入工具の不法携帯(同法第15条、第16条)
○ 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律:危険運転致死傷(無免許運転加重あり)(同法第2条、第6条第1項)
○ 盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律:指定金属切断工具の隠匿携帯(同法第22条)

第3 在留資格の取消しに係る通報の考え方等について

1 基本的な考え方

入管法第62条の2は、国又は地方公共団体の職員がその職務を遂行するに当たって在留資格取消事由に該当すると思料する外国人を知ったときは、その旨を通報することができることとしています(注4)。
本条は、取消事由のいずれかに該当する疑いのある外国人の通報について規定するものであって、通報する者の守秘義務を解除するための法令上の根拠となるものです。この規定に基づく通報は義務ではなく、通報する者が前記第2の各取消事由に関する考え方などに基づいて、任意に通報するかどうかの判断をし、必要かつ可能な範囲内で情報を提供することとなります。​
また、この通報は、特に永住許可後には在留審査を行う機会がない「永住者」の在留資格について、入管庁における在留資格の取消手続の端緒とするとともに、事実の調査等に活用するものです。入国審査官又は入国警備官が通報を受けた場合は、当該外国人からの意見聴取等によって事実関係を正確に把握した上で、取消事由の該当性を判断した上、法務大臣が取消しの要否等を決定することとなります。したがって、通報があったことをもって直ちに当該外国人について取消事由に該当すると判断するものではなく、入管法に基づく調査や当該外国人への意見聴取を通じて、個々の事案の具体的状況を考慮した上で判断を行います(注5)。
以上のとおり、通報は取消手続の端緒等となるものであり、通報の内容や時期により、当該外国人の在留資格を取り消すかどうかの最終的な判断に直ちに影響を与えるものではありませんが、前記(注1)の国会における附帯決議の趣旨も踏まえて、本制度を適切かつ慎重に運用していくためにも、通報する者は下記2の「各確認事項」を十分考慮した上で、通報することが望ましいと考えています。
なお、同条第2項は、通報は書面又は口頭で地方出入国在留管理官署の入国審査官又は入国警備官に対してすることとされており、通報の形式は文書でも口頭でもどちらでも可能ですが、急を要する等の特段の事情のない限り、文書をもってするのが相当です。
 (注4)本項における「国又は地方公共団体の職員」は、入管法第62条第2項における「国又は地方公共団体の職員」と同様です。
 (注5)法務大臣は、在留資格を取り消そうとするときは、取消事由の有無等の事実関係を正確に把握するために、入管法第22条の4第2項から第4項までの規定や第59条の2の規定により、入国審査官又は入国警備官に事実の調査を行わせるほか、入国審査官に対象となっている外国人からの意見の聴取を行わせることとなります。

2 「通報」の判断のための確認事項

通報に関する基本的な考え方は前記1のとおりですが、通報の要否を判断する上での具体的な確認事項は次の(1)及び(2)のとおりです。
(1)「永住者」の在留資格を有すること
8号及び9号は、「永住者の在留資格をもつて在留する者が、・・・」と規定しており、取消事由の対象となるのは永住者に限られることから、8号又は9号に該当する疑いがあるとする通報の対象は永住者のみとなります。
ただし、通報に係る入管法第62条の2は、永住者に係る8号及び9号に限らず、入管法第22条の4第1項各号に規定するその他の取消事由についても通報することができると規定しています。したがって、「永住者」以外の在留資格をもって在留する者について、8号及び9号以外の取消事由に該当すると思料するとして通報することも可能です。
(2)いずれかの取消事由に該当すると思料されること
通報する者は、その通常の職務遂行の中で把握した事実に基づき、前記第2の各取消事由に関する考え方や想定される事例などを踏まえて、いずれかの取消事由に該当すると思料される場合に通報することができるものと考えられます。
例えば、取消事由の一つである「故意に公租公課の支払をしないこと」については、公租公課の一連の徴収手続の中で、度重なる催告や差押えなどの滞納処分を行う過程において把握した事実から、前記第2の2で示した「故意に公租公課の支払をしないこと」の考え方(公租公課の支払意思がないことが明白と認められる場合)に該当する可能性があると考えられた場合には、通報することができると考えられます。

第4 職権変更又は取消しの判断の考え方等について

1 基本的な考え方

本制度において、永住者がその在留資格の取消事由に該当すると判断された場合には、取消事由に該当するに至った経緯やその後の在留状況等を踏まえ、職権変更とするか、取り消すかどうかの判断を行います。そこで本制度では、永住者の我が国への定着性にも配慮し、8号又は9号の取消事由に該当する場合であっても、直ちに在留資格を取り消して出国させるのではなく、入管法第22条の6に基づき、「当該外国人が引き続き本邦に在留することが適当でないと認める場合」を除き、法務大臣が職権により「永住者」以外の他の在留資格への変更を許可します(職権変更)。この場合、引き続き本邦に在留するにあたって最適な在留資格が付与されることとなりますが、ほとんどの場合は、「定住者」の在留資格への変更を許可することを想定しています。また、職権変更後に永住許可の要件を満たせば、再度永住許可を受けることも可能です。

2 各取消事由に係る取消し(在留不可)の判断の考え方

在留資格を取り消すかは、前記1のとおり、「当該外国人が引き続き本邦に在留することが適当でないと認める」か否かにより判断します。この判断に当たっては、取消事由に該当するに至った経緯に加えて、それまでの在留状況や今後の在留意向などを総合考慮するところ、各取消事由により在留資格を取り消すことが想定される事例等は次の(1)から(3)までのとおりです。
(1)入管法上の義務違反(8号)
8号の取消事由のうち「この法律に規定する義務を遵守せず」に該当する場合については、今後も義務を履行する意思がないことが明らかである場合や、義務違反の態様が社会通念上看過しがたい場合が、取消相当となると考えられます。
例えば、繰り返しの指導にもかかわらず、在留カードの携帯・提示や、有効期間等の必要な更新をせず、その言動等から今後も義務を履行する意思がないと認められる場合が考えられます。また、偽造在留カードを行使しようとしたり、不法入国者等であることを知りながらその逃走を助けようとしたりした場合などには、引き続き在留を認めることが適当でないため、取り消すこととなります。
他方で、当該義務違反に至った経緯等に照らし、今後も在留を認めることが適当でないとは認められない場合には、職権変更とし、「定住者」等の在留資格に変更した上で、当該在留資格に伴う在留期間の更新手続等において引き続き入管法上の義務の遵守状況を確認していくこととなります 。
(2)故意に公租公課の支払をしないこと(8号)
8号の取消事由のうち「故意に公租公課の支払をしないこと」に該当する場合については、今後も公租公課の支払をする意思がないことが明らかである場合や、滞納額等(滞納額、滞納期間、滞納回数等)が社会通念上看過しがたいと判断した場合が、取消相当となります。
例えば、単に資力がないという事情だけでなく、今後も支払う意思がないことが本人の言動等で明らかである場合や、過去に複数の公租公課に係る滞納を繰り返しており今後も支払うことが見込めない場合のほか、脱税等により有罪となった場合などには、今後も在留を認めることが適当でないため、取り消すこととなります。
他方で、公租公課の支払状況等に照らし、今後も在留を認めることが適当でないとは認められない場合には、職権変更とし、「定住者」等の在留資格に変更した上で、当該在留資格に伴う在留期間の更新手続等において引き続き公租公課の支払状況等を確認していくこととなります。
(3)特定の刑罰法令違反(9号)
 過去の犯歴等から、犯罪傾向が進んでいると認められる場合には、取消相当となります。常習犯人又は累犯者が直ちにこれに該当するわけではなく、例えば、永住許可後(改正法の施行前を含む)に拘禁刑前科(9号で規定している刑罰法令に限りません。)があり、更に同号で規定している刑罰法令により拘禁刑に処せられた場合には、今後も在留を認めることが適当でないため、取り消すこととなります(注6)。
なお、9号に規定する一定の刑罰法令に違反して拘禁刑に処せられた永住者については、その刑の執行が猶予されたとしても、その在留状況は良好ではないと言わざるを得ず、「永住者」の在留資格を認め続けることが適当でないため、初犯であっても職権変更とすることが想定されます。
(注6)拘禁刑には令和4年刑法改正前の懲役・禁錮を含みます。

3 その他本制度の運用に当たって考慮されること

取消相当と判断したとしても、特に家族関係や人道上の配慮の必要性がある場合には、取り消すことはせず、職権変更とする場合もあり得ます。
本制度は、我が国の法やルールを逸脱する行為に対しては、公正かつ厳正に対処するとともに、永住者及びその家族等の我が国への定着性にも十分配慮して運用していきます。 
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