第1話 解説

- 大人って何? -

Question 1

「成年」になると何が変わるの?①

翔平くん

18歳が成年っていうことは、もう大人ということなの?

亜美ちゃん

翔平にはああ言ったけど、私も「成年」ってどういう意味かはよく知らないな・・・。

ポイント

  • 未成年は、契約を結んでも、お父さんやお母さんの同意を得ていなかった場合、その契約をなかったことにすることができます。
  • 成年に達すると、お父さんやお母さんの同意なく一人で契約を結ぶことができるようになります。これは、自分の判断で契約を結んだ以上、守る責任があるということでもあります。
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「民法」という法律には、20歳で成年となるという規定があります(成年年齢は、2022年4月1日から18歳に引き下げられます。)。
成年と未成年の大きな違いの一つは、成年になると、一人で契約をすることができるという点です。

「契約」については第2話で詳しく説明しますが、お金を払って物を買ったりサービスを受けたり、働いてお金をもらったり、物と物を交換したり、そんな約束事のことをいいます。
成年に達していない人はお父さん、お母さんの同意がなければ契約をすることができず、同意なく契約をしてもその契約をなかったことにすることができます。
未成年のうちはまだ十分な判断力がないので、自分に不利な契約や、必要のない契約をしてしまうかもしれません。そのため、お父さんやお母さんの同意を得ないで一人で結んだ契約は、後から取り消すことができるようにしたのです。
成年になると、年齢だけを理由に契約を取り消すことはできません。成年になると自分の判断で契約を結ぶことができますが、逆に、自分の判断で契約をした以上、それを守らないといけないということなのです。

Question 2

「成年」になると何が変わるの?②

翔平

なるほど!成年年齢は契約ができる年齢って覚えればいいんだね!

翔平

どこかで、それだけじゃないって聞いたことがあるような・・・。

ポイント

  • 未成年者はお父さんやお母さんの親権に服しています。成年になると、親権に服することがなくなります。
  • 親権というのは、子どものために,子の面倒を見たり,教育を行ったり,この財産を管理したりする権限や義務のことをいいます。
  • 法律上、親権に服しなくなるといっても、お父さんやお母さんは身近な大人であり、さまざまな経験を積んでいることに変わりはありません。進路や生活について相談しながら判断していくことも重要です。
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「成年」になると一人で契約を結ぶことができると説明しました。
「成年」にはもう一つの意味があり、それは、お父さんやお母さんの親権に服しなくなる、ということです。
親権というのは、子どものために,子の面倒を見たり,教育を行ったり,この財産を管理したりする権限や義務のことをいいます。
未成年の子の財産を管理したり、生活の面倒をみたり、ということがその内容に含まれます。
親権の内容としては、未成年者の住む場所を決めることも含まれています。
また、未成年者がアルバイトなどをして働くには、親権をもつお父さんやお母さんの許可を得ないといけません。窮屈に感じることもあるかもしれませんが、保護してもらっているということでもあります。

成年になると、この親権に服さないことになります。法律上は、自分の財産を自分で管理したり、住む場所を自分で決めたり、働きたいところで働くことができるようになります。自分のことを自分で決めることができるということですが、自分の生活や自分の判断にそれだけ責任が伴うということでもあります。

もちろん、法律上、親権の下から離れるといっても、お父さんやお母さんは、一番身近な大人であり、さまざまな経験を積んでいることには変わりありません。
成年に達した後も、進路や生活について相談しながら判断していくことも重要です。

Question 3

「大人」の定義は決まってない!?

翔平くん

じゃあ、結局、民法が決めている「成年年齢」になったら「大人」っていうことでいいのかな?

あみちゃん

たしかに、20歳で大人っていう印象はあるけど…。契約とか親権とかで「大人」を説明されてもあんまりしっくりはこないような…。

ポイント

  • 実は、「大人」とは何かが法律で一律には決められているわけではありません。
  • 例えば、契約、投票、飲酒等、何かをすることができるようになる年齢はそれぞれの法律で決まっています。
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みなさんは「大人」と聞いてどんなイメージを思い浮かべますか?
働いてお金を稼いでいる、などを思い浮かべる人が多いでしょうか?あるいは、お酒が飲めるなんていうイメージを持っている人もいるかもしれません。

実は、「大人」とは何かが法律で一律に決められているわけではありません。
親権に服することのなくなる年齢、選挙で投票することができる年齢、自動車を運転することができる年齢、お酒を飲むことができる年齢…など、どんなことをするためには何歳にならないといけないのかを決めている法律はたくさんあり、それぞれの法律の中で、その目的に応じて、その年齢が個別に決められています。
「大人」といっても、どんなことをすることができれば「大人」だと考えるかによって、その年齢が変わってくるということですね。
成人式も、法律に決まりがあるわけではなく、主催する市町村などがその判断で実施するイベントです。何歳の人を対象にするか、いつ実施するかは主催する市町村などの判断に委ねられています。
なお、法務省が2021年1月に実施した調査によれば,既に成年年齢引下げ後の成人式の対象年齢を決定した自治体は,いずれも20歳又は21歳を対象として成人式を実施することとしているようです。

ただ、それぞれの法律でどんなことを何歳でできるかという年齢要件を決めるに当たって、民法の「成年年齢」がそのまま使われていることも多いです。そのため、民法が定めた成年年齢である20歳に達すると「大人」になるというイメージが社会で広く共有されています。

Question 4

「成年年齢」の歴史

翔平くん

そういえば、成年年齢=20歳っていうのは、いつからそうなっていたんだろう。

あみ

それは、ずっと昔からそうだったんじゃないのかな?それとも、意外と最近からなのかな?

ポイント

  • 日本では、明治9年以来、20歳が成年年齢とされてきました。
  • 2022年4月1日から、成年年齢は18歳に引き下げられます。これには、少子高齢化が進む日本社会において、若い方々に大人としての自覚をもって活躍して欲しいという期待が込められています。
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江戸時代以前は、15歳くらいで迎える「元服」によって一人前の大人と認められていたといわれています。
一人で契約をすることができるという意味での「成年年齢」が最初に決められたのは明治9年のことといわれていますので、今から約140年前のことです。それ以来、日本では20歳が成年年齢とされてきました。
ところが、近年は、18歳、19歳の方にも選挙権が与えられるなど、若い方々にも政治に参加してもらう政策が進められてきました。このような流れを踏まえ、市民生活の面でも、18歳以上の方を一人前として扱うのが適当だと考えられるようになったのです。引下げの議論が行われた法務省の会議では、成年年齢の引下げは、若い方々を国づくりの中心としていくという強い決意を示すものだ、といっています。

成年年齢の引下げは、18歳、19歳の方を社会の一人前のメンバーとして迎え入れるということであり、18歳、19歳の方々に、その自覚を持って社会で活躍してほしいという期待が込められています。

成年年齢が18歳に引き下げられた後の各種の年齢制限は、次の表のとおりです。
このうち、お酒やたばこなどの年齢制限については、第5話で詳しく説明します。

  • 18歳(成年)になったらできること
  • ◆親の同意がなくても契約できる
    • ・携帯電話の契約
    • ・ローンを組む
    • ・クレジットカードをつくる
    • ・一人暮らしの部屋を借りる など
  • ◆10年有効のパスポートを取得する
  • ◆公認会計士や司法書士、医師免許、薬剤師免許などの国家資格を取る
  • ◆結婚
    女性の結婚可能年齢が16歳から18歳に引き上げられ、男女とも18歳に
  • ◆性同一性障害の人が性別の取り扱いの変更審判を受けられる
    ※普通自動車免許の取得は従来と同様、「18歳以上」で取得可能
  • 20歳にならないとできないこと
    これまでと変わらないこと
  • ◆飲酒をする
  • ◆喫煙をする
  • ◆競馬・競輪・オートレース・競艇の投票券(馬券など)を買う
  • ◆養子を迎える
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