Question 1
契約するときに気を付けることは?
さっきは危なかったね。本当にしっかりしてよね!
(亜美の方こそって言うとと怒るんだろうな。)
ありがとう、助かったよ。
でも、あの英会話の教材の契約とアルバイトの契約って何が違うんだろう?危ない契約とそうじゃない契約があるのかな?
ポイント
- 基本的に、一度契約をしたら、その内容を守る必要があります。
- 契約をするときは、それが自分にとって必要か、得るものと払う対価が釣り合っているか、その契約をきちんと守ることができるのかを考えることが大切です。
基本的に、一度契約をしたら、その内容を守らなければいけません。
そこで、契約をするときは、それが自分にとって必要か、得るものと払う対価がきちんと釣り合っているか、その契約をきちんと守ることができるのかなどを冷静に考えてみることが大切です。
今回、翔平くんが勧められた英会話の教材は、数十万円もするものだったかもしれません。特に高価な場合には、どのようなものか、それが自分にとって本当に必要か、代金をどのように支払うのかなどを慎重に考えることが必要ですね。
契約をする前に、商品やサービスの内容を確認し、値段に見合ったものかをよく考えておかないと、あとで「こんなはずじゃなかった」とトラブルになることもあります。
未成年者の契約トラブルが多いのは、オンラインゲームでアイテムを購入するために高額な課金をするような場面などです。
ついゲームに夢中になってしまいがちですが、トラブルにならないように注意しましょう。
Question 2
悪徳商法に引っかからないためには?
でも、英会話の教材が高すぎると思ったら、契約をしなければいいだけでしょ?
どうしてそんな契約をしちゃうんだろう。
いいところに気がついたね。
もし契約をするまで帰してくれなかったらどうする?
ポイント
- 中には、相手を勘違いさせたり、冷静に判断できない状況を作り出したりして契約をさせようとする人(業者)もいます。
- 契約をする前ならば、勧誘を断っても全く問題はありません。あやしいなと思ったら、毅然とした態度で断りましょう。それが難しい場合は、すぐに契約をせず、まずはその場を離れましょう。
- 契約をしてしまった後でも、おかしな業者に引っかかったかもと思ったら、「消費者ホットライン 188」に相談しましょう。
世の中には、不正確なことを言って相手を勘違いさせたり、困って冷静に判断できない状況を作り出したりして、不当な契約や望まない契約をさせるような悪質な業者もいます。
例えば、特に欲しくない物を高い値段で買う契約をしてしまうようなことがあり得ます。
悪質な業者は巧みに心の隙を突きます。あやしい契約には引っかからない、「自分は大丈夫」という思い込みはとても危険です。
契約をするかどうかは、あなたが自由に判断することです。あやしいなと思ったら、毅然とした態度で断ることが大切です。
もしそれが難しい場合は、すぐに契約をせず、まずはその場を離れましょう。信頼できる親や友人などに相談することも大切です。
契約をしてしまった後でも、おかしな業者に引っかかったかもしれないと思ったら、すぐに相談できる政府の相談窓口「消費者ホットライン 188」もありますので、この機会に覚えてください。
局番なしで「188」の番号にかければ、最寄りの消費生活センターや消費生活相談窓口に案内してくれます。
消費者ホットライン188 イメージキャラクター イヤヤン
Question 3
架空請求って、何?
そういえば、この前、友達が、ウェブサイトを見ていたらいきなり「会員登録完了」の画面が出てきて焦ったって言ってたな・・・。
ポイント
- 契約をしていないのに、突然料金の支払請求の画面が出てきたり、家に請求書が届いても、お金を支払う必要はありません。
- 不安に思ったら、まずは「188」に相談してみましょう。
ウェブサイトを見ていたら突然料金の支払請求の画面が出てきたり、身に覚えのない請求書が家に届いたりすると、びっくりして、「お金を支払わなければいけないのかな」という気持ちになるかもしれません。
でも、契約をしていないのに、つまり、あなた自身がサービスを提供してもらう代わりにお金を払うという約束をしていないのに、ウェブサイトを見ただけでお金を支払わないといけないということは、ありません。
ウェブサイトを見ただけで「会員登録完了」などとしてお金を請求するのは、いわゆる「架空請求」です。
裁判所などの公的機関を装って自宅に請求書を送りつける手法もあります。
このような場合、お金を支払う必要も、請求者と連絡を取る必要もありません。
特にアダルトサイトを閲覧するときにこのような架空請求の被害に遭うことが多く、若い世代の消費者相談の件数も一番多いです。
身に覚えがなければ放っておいてよいのですが、不安であれば、先ほどご案内した「消費者ホットライン 188」などの相談窓口に相談してみてください。
Question 4
どんな契約でも守らないといけないの?
たしかに約束する前に慎重に考えないといけないんだろうけど…。
だまされたときでも契約を守らないといけないの?
法律で決められた場合は、契約をなかったことにすることができるよ。
ポイント
- 「自分の意思で約束した」という前提がない場合、「契約をなかったことにする」こと(無効・取消し)ができることがあります。
- 相手がわざと嘘をついたので勘違いして契約した場合や相手に脅されて怖くなり契約した場合、相手が誰であっても、契約をなかったことにすることができます。
契約を守らないといけないのは、契約をした人が自分の意思で約束したからです。
次の場合には、この前提がないので、「契約をなかったことにする」と主張することによって、契約の効力をなくすことができます。
①相手がわざと嘘をついたので勘違いして契約をした場合(詐欺)
例:「絶対に稼げるノウハウを教える」という相手の言葉を信じて10万円で教材を買ったが、関係のない資料が送られてきただけだった。
②相手に脅されて怖くなり、契約をした場合(脅迫)
例:高い教材を買わされそうになり、断ろうとしたが、「断ったらどうなるかわかってるな」と脅され、やむを得ず契約をした。
また、大して価値のない物を高値で売りつけるなど、相手の無知や弱みにつけこんで過大な利益を得る行為は、最初から効力がありません。
Question 5
不正確な説明のせいで勘違いしたときでも、契約は守らないといけないの?
消費者と事業者の取引では、詐欺や強迫以外にも契約を取り消せることがあるよ。
ポイント
- 消費者(一般の個人)と事業者(お店など)の契約には、特別なルール(消費者契約法)が適用されます。
- 重要なことについて事実と異なる説明を受けた場合や、不確実なことを確実だと説明された場合などには、契約を取り消すことができます。
消費者(一般の個人)と事業者(会社や個人商店など)の契約は消費者契約と呼ばれ、特別なルール(消費者契約法)が適用されます。
消費者契約の場合、先ほど説明した詐欺や強迫などがあったときに加えて、次のような事業者の勧誘を受けて、消費者が商品の内容などについて思い違いをして契約をしたときは、契約を取り消すことができます。
①契約の内容のうち重要な事項について、事実と異なるうその説明がされた場合(不実告知)
例:限定もののチケットだと言われて高い値段で買ったら、後から同じチケットが安く販売された。
②将来どのように変動するかがわからないことについて、確実にこうなると言われた場合 (断定的判断の提供)
例:将来確実に値上がりすると言われて仮想通貨を買ったが、その後、価格が暴落した。
③商品のメリットだけ説明され、デメリットが説明されなかった場合(不利益事実の不告知)
例:マンションを買う際、眺望が良いという説明ばかりで、すぐ隣に高層マンションが建つ予定だということは説明されなかった。
Question 6
事業者の勧誘のせいで冷静に判断できなかった場合も、契約は守らないといけないの?
消費者契約では、契約するまで帰してくれない場合や、デート商法・霊感商法でも契約の取消しが可能だよ。
ポイント
- 消費者契約法には不当な勧誘行為の類型が定められており、事業者の不当な勧誘によって冷静に判断できずに契約をしてしまった場合には、消費者は契約を取り消すことができます。
- 不当な勧誘行為として、「退去妨害・不退去」「不安をあおる告知」「デート商法」「霊感商法」などがあります。
消費者契約法では、次のような事業者の勧誘によって冷静に判断できずに契約してしまった場合には、消費者は契約を取り消すことができるとされています。
①勧誘を受けている間、帰りたいのに帰らせてくれず、又はお願いしても事業者が帰ってくれず、やむなく契約をした場合(退去妨害・不退去)
例:参加したセミナーの会場で商品の購入を勧められ、帰りたいと伝えたのに長時間引き留められたため、その商品を買ってしまった。
②就職先や容姿などについての願望を実現できるかどうか、消費者が不安を抱いていることを知って、事業者がその不安をあおり、願望の実現のためにはその商品などが必要だと告げて購入させた場合(不安をあおる告知)
例:このままでは肌がぼろぼろになるのでこの化粧品が必要だと言われ、高額な化粧品を買わされた。
③事業者(勧誘者)に恋愛感情を持ち、相手もそうだと思っていたら、契約をしなければ関係が終わると告げられて契約をした場合(デート商法)
例:仲良くなり、互いに好意を持っていると思っていた人から、2人の将来のためと言われて高額なアクセサリーを買ったら、その後連絡が取れなくなった。
④霊感などの特別な能力があるという事業者(勧誘者)から、契約しなければとても悪いことが起こると言われて契約をした場合(霊感商法)
例:占い師のような人から、この絵を買わなければ次々と不幸が訪れると言われたため、高額な絵を購入した。
⑤契約の前に事業者が義務を実施してしまい、元に戻すことが難しくなって契約をした場合
(契約成立前の義務の実施)
例:服を試着し、まだ買うと言っていないのに店がサイズ直しをしたため、断りづらくなってその服を買わざるを得なくなった。
⑥契約の前に、事業者が契約締結を目指して情報提供や物の調達などを行い、それによって生じた費用を支払うように求められたため、契約をした場合(契約締結のための費用などの請求)
例:英会話の教材を勧めたいと言われて自宅の近くで事業者(勧誘者)と会ったところ、教材の購入を断るなら交通費と勧誘時間分の人件費を支払えと言われて、教材を買った。
いっぱいある!これを全部覚えるのはきついなぁ・・・。
もちろん、これを全部覚える必要はないよ。ただ、今後、「あれ、これって大丈夫かな?」と思う契約をしたり、しそうになったときに、また見に来てほしいな。
「あれっ?」と思ったら、188(いやや)に電話をして相談してみるのも大切だね!
Question 7
同じものを大量に買い過ぎた場合でも、契約を取り消せないの?
他にも、あまりにも過量な内容の契約も、取り消すことができるんだよ。
ポイント
- 事業者が商品を勧めるとき、消費者の生活状況などからみて通常必要な分量をはるかに超えることをわかっていながら、大量の商品の購入を勧めた場合、消費者は契約を取り消すことができます。
- 例えば、スーツを着る機会が少ない若い学生に、数十着のスーツを勧めて買わせた場合などは、これに当たります。
Question 8
契約書に書いてあれば、どんな内容でも守らなきゃいけないの?
契約書をよく見ないで契約をしたら、契約書に「事業者は何があっても一切責任を負わない」って書いてあったら、責任を負わないのかな?
ポイント
- 消費者と事業者の契約では、契約書に書いてあっても、内容が不当であるとして無効とされる条項があります。
- 例えば、事業者の過失で消費者に損害が生じても責任を負わないとするものや、不当に高いキャンセル料を定めるものなどが、これに当たります。
契約書には細かいことがたくさん書かれていることもありますが、基本的には、契約書を用いて契約を結んだ場合、原則として、契約書に書かれていることは契約の内容になり、守らないといけません。
しかし、消費者と事業者の契約では、次のような条項は消費者の利益を不当に害するものとして、無効になります。
①事業者の損害賠償責任を免除する条項
例:「ジムの利用に伴って発生した傷害、盗難等のいかなる事故についても、一切責任を負いません」 ジムの器具が老朽化によって壊れて利用者が怪我をした場合などは、この条項にかかわらず、ジムは責任を負います。
②消費者の解除権を放棄させる条項
例:「販売した商品については、いかなる理由があっても、ご契約後のキャンセル・返品はできず、返金も承りません。」 買った商品が不良品だった場合、この条項にかかわらず、契約をなかったことにして(解除)、商品を返して代金の返金を求めることができます。
③不当に高いキャンセル料や損害賠償額を予定する条項
例:結婚式場の契約で「予定の日の1年前にキャンセルした場合、契約金額の80%のキャンセル料をもらい受けます」とする条項 このような場合に、利用者が支払う義務を負うのは、「事業者が負う平均的な損害額」の範囲になり、それを超える額を支払うことを定めた条項は無効になります。
④消費者の利益を一方的に害する条項
例:掃除機を通販で購入したら注文していない健康食品が同封されており、「健康食品」今後健康食品を継続して買わないと事業者に連絡しなければ、継続的に健康食品を購入したものとみなす旨の条項 このような条項は無効となりますので、その後継続的に健康食品が送りつけられて代金を請求されても、お金を払う必要はありません。
Question 9
クーリング・オフって、なに?
翔平くん、「クーリング・オフ」という制度があることを知っているかな?
ポイント
- 法律で定められた特定の取引について、事業者の勧誘に問題がなくても、契約書面を受け取った日から一定期間、無条件で契約を解除することができることを、 「クーリング・オフ」と言います。
- 特定の取引には、「訪問販売」や「特定継続的役務提供」などがあります。
特定商取引法で定められた特定の取引について、契約書面を受け取った日から一定期間、無条件で契約を解除することができることを、「クーリング・オフ」といいます。
クーリング・オフは、事業者の勧誘に問題がある場合に限られません。また、クーリング・オフをしても、違約金などを支払う必要はありません。
例えば、次の取引で契約をした場合には、クーリング・オフができます。
①訪問販売
・事業者が消費者の自宅などを訪れて商品を販売する取引
・路上で消費者を呼び止めて近くのお店等に連れて行き、商品の購入などを勧める場合(いわゆるキャッチセールス)
・SNSで誘った人に商品の購入などを勧める場合(いわゆるアポイントメントセールス)
②電話勧誘販売
・事業者が消費者に電話をかけて勧誘し、商品の販売などを行う取引
③特定継続的役務提供
・長期・継続的(1か月又は2か月以上)に高額な対価(5万円以上)を受け取り、特定のサービス(※)を提供する取引
※エステ、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスの7つ
④業務提供誘引販売取引
・「収入が得られる仕事を紹介する」と言い、その仕事に必要だとして商品を販売する取引
クーリング・オフをすることができる期間は、
・訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供:契約書面を受け取ってから8日間
・業務提供誘引販売取引:契約書面を受け取ってから20日間
です。
詳しくは、特定商取引法ガイドをご覧ください。
Question 10
マルチ商法って、どんな問題があるの?
「マルチ商法」は危ないって聞いたことがあるんだけど、どんなものなんだろう。
ポイント
- 典型的なマルチ商法は、自分が商品を買い、それを友達に勧めて買ってもらえたら紹介料をもらえるというものです。
- マルチ商法は、転売できずに損失を被り、人間関係を破壊するなどの問題が生じやすい取引です。
- 「簡単に稼げる」、「紹介料がたくさん入る」などと勧められることが多いが、簡単に稼げる話はありません。
- 断りづらいなど困った場合には、消費者ホットライン(188)に相談しましょう。
マルチ商法とは、
- ①商品やサービスを買って代金を支払った後、
- ②自分がその商品やサービスを他の人に勧めて紹介料をもらう
ということが繰り返され、ピラミッド式に販売組織が拡大していく商法のことをいいます。
商品を買うと会員になれて、さらに商品を他の人に勧めたり、知人を紹介して会員にすれば紹介料がもらえるというように、誰かを紹介することで収入が得られるのが典型的なマルチ商法で、「ネットワークビジネス」などと呼ばれることもあります。
よく「簡単なアルバイトがある」「知り合いに売るだけで簡単に儲けられる」「友達を紹介すれば多額の紹介料がもらえる」といった言葉で勧誘が行われますが、残念ながら、ラクにお金を儲けたり、確実に利益が得られるということはありません。
マルチ商法は、次のような理由で、非常に問題の起こりやすい取引です。
・自分が買った商品等を他の人に売れないと、買った値段分の損失を被ってしまう。
・そうならないために、友達や家族に商品等の購入を強引に勧め、加害者となってしまう(ひいては人間関係も悪化してしまう)。
マルチ商法は、友達や先輩、家族などの身近な人から勧誘を受けることが多いため、心情的に断りにくい場合もあります。
そのような勧誘を受けて困った場合には、消費者ホットライン188に相談してください。
なお、マルチ商法も、特定商取引法で定める「連鎖販売取引」に該当する場合にはクーリング・オフ制度の対象になり、契約書面を受け取ってから20日間、契約を解除することができます。
詳しくは、特定商取引法ガイドをご覧ください。
第3話 解説
- 消費は賢く -