第6話 解説

- SNSは便利で怖い -

Question 1

SNSを利用することでどんなリスクがあるの?

亜美ちゃん

由美のSNSの件、何とかなってよかった・・・。
親身になってくれて、本当にありがとう。

翔平くん

どういたしまして。
俺もSNSは使っているから、どのようなリスクがあるのかというのは、知っておかなきゃいけないね。

ポイント

  • SNSは私たちの生活を豊かなものにしてくれますが、その利用方法によっては、被害者にも加害者にもなり得るものです。
  • SNSの利用による被害としては、①個人情報が漏洩する、②誹謗中傷を受ける、③見られたくない自分の写真が拡散する、などがあります。逆に、他人についてそのような投稿をすることで、加害者にもなり得ます。
  • SNSを利用するときは、そのリスクを理解し、被害者にも加害者にもならないように注意することが必要です。
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SNSを使えば、リアルな社会ではつながることのできない世界中の人たちとスマホ一つでつながることができ、私たちの生活を豊かなものにしてくれます。
しかし一方で、SNSを利用することにはいろんなリスクが伴います。

①個人情報が漏洩する

SNSを利用することによるリスクとしてまずあげられるのは、個人情報などの漏洩です。
たとえば、写真をアップした場合、背景に特徴的な建物が映り込んでいたり、写真のデータそのものの中に撮影場所などのデータが記録されていたりするため、知らないうちに住所が特定されてしまうことがあります。
また、自分がいつ何をしていたか、行動が把握されてそれが悪用されることもあります。

②誹謗中傷を受ける

利用者自身に責任があるわけではありませんが、SNSへの投稿に対して批判的なコメントが多数寄せられてしまうことがあります。
SNSに不用意な書き込みをしないように気をつけることも大切ですし、また、寄せられた批判的なコメントに見逃せないような違法なものがあるときに、どのような対応方法があるかを知っておくことも必要です。

どのような書き込みが違法になるのかはこちら
どのような対応ができるかはこちら

③見られたくない写真等の拡散 

SNSを通じて、自分の見られたくない画像を他人が悪意を持って拡散しているというケースがあります。
性的な画像など、将来第三者の目に触れると困るような画像は、今親しくしている人から要求されたとしても、絶対に応じてはいけません。

繰り返しになりますが、SNSは社会に大きなメリットを与えてくれますし、現在の社会では、特に若い方々がSNSを使わずに過ごすことは難しくなっています。
どのようなリスクがあるのかをきちんと理解して正しく使い、被害者にも加害者にもならないようにすることが大切です。

Question 2

SNSに書き込むことの意味

マスター

SNSに誰かのことを書き込む際には、その人に対して直接言えることかどうか、ということを考えてみると良いかもしれないね。

ポイント

  • あなたにその自覚がなくても、あなたがSNSに投稿した言葉は、あなたの知らないところで相手を深く傷つけることがあります。
  • SNSへの投稿は、誰が書いたか分からないと思っている人もいますが、必要な手続をとることにより、書き込んだ人を特定することができます。
  • SNSへの投稿によって人を傷つけてしまうと、法律上の責任を負うこともあります。
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あなたの考えていること、ほかの人にも知っておいてもらいたいあなたの好きなもの、今日あった面白い出来事など、書きたいことを自由にSNSに書き込むことは、あなたが持っている大切な権利です。

スマホに書き込んでいる人と、それを見てショックを受けている人

しかし、SNSを使うことで、あなたの考えなどを手軽に発信することができるようになった反面、他人を傷つける言葉も簡単に発信できてしまいます。
SNSへの投稿は誰がやったか分からないと思って気軽にひどい書き込みをしてしまう人もいますが、必要な手続をとることにより、投稿した人を特定することができます。

SNSへの投稿によってほかの人を傷つけることは許されません。
他人を悪く言ったり、他人の人格を攻撃したりすることは、書き込んだ人は軽い気持であったとしても、書かれた人を深く傷つけることがあります。
ネットに悪口を書かれた人がそれを苦にして自ら命を絶ってしまうという悲劇が生じたこともあります。

SNSへの投稿によって他の人を傷つけてしまうと、
・刑罰の対象となる(例えば、名誉毀損罪、侮辱罪)
・被害者に対して損害を賠償する義務を負う(民法上の不法行為)
ことがあります。
また、個人を傷つけたのではなく、お店の業務の妨げになってしまう投稿をしてしまうと、お店に対して損害賠償義務を負ったり、悪質である場合には偽計業務妨害の罪などに問われることがあります。

Question 3

SNSに人の悪口を書き込んだらどんな責任を負うの?

あみ

由美に対してひどい書き込みをした人は、どういう責任を負うことになるんだろう。

ポイント

  • 人の「名誉」や「名誉感情」を傷つけたときは、傷つけられた人に対して損害賠償責任を負うことがあります。
  • 名誉とは、人に対する周囲からの評価のことです。また、名誉感情とは、自尊心やプライドのことです。
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SNSに人の悪口を書き込んだりして人を傷つけるケースには、次のような場合があります。

  • ①人の名誉を傷つけたとき(名誉毀損)

  • ②人の名誉感情を傷つけたとき(名誉感情の侵害)

○人の名誉を傷つけたとき(名誉毀損)

人の名誉とは、その人に対する周囲の人々からの見方、評価のことです。
その人がいついつどんなことをした、その人はこんな人だ、などとSNSに書き込むことで、「●●さんってそんな人だったんだ~。見損なった…。」というように、周囲のその人に対する評価が低くなった場合、その人の名誉を傷つけたことになります。
このような場合には、相手に対して慰謝料や実際に生じた経済的な損失の賠償金などを支払わなければなりませんし、名誉毀損罪などの刑事責任を負うこともあります。

名誉毀損

うそのことを書き込んでその人の評価を下げる、というのが典型ですが、ほんとうのことなら書き込んでも責任を負わない、というわけではありません。
ほんとうのことを書いた場合でも、免責されるためには、社会全体の利害に関わることであるとか、社会全体の利益を図るために書き込んだとか、いくつかのハードルを越えなければなりません。
誰かが親友の恋人を奪ったとか、借金を踏み倒したなどの投稿をした場合には、それがほんとうのことだったとしても責任を負うことがあります。

また、意見や批判で人の名誉が傷つくこともあります。
意見を言う権利は大切ですので、このような意見や批判がすべて違法だというわけではありません。
ただし、その意見や批判が事実に基づいておらず、相手の人格を攻撃するようなものであるなど、常識的に見て冷静な意見や論評といえる範囲を超えている場合は、名誉毀損になる場合があります。

意見や論評といえる範囲を超えているかはその投稿の経緯や文脈等にも左右されますが、事実に基づかずに「詐欺集団」、「狂信者」、「変態野郎」と投稿した事案について、損害賠償が認められているものがあります。

○人の自尊心、プライドを傷つけたとき(名誉感情の侵害)

名誉が周囲からの評価だったのに対し、名誉感情は、自分が自分自身のことを大切に思う気持ちです。「プライド」「自尊心」とだいたい同じです。
「キモい」「ウザい」「死ね」というような常識的に許されないような言葉でそのような気持ちを踏みにじったときも、相手に慰謝料などを支払わなければなりません。

SNSにこんな書き込みをする人は、軽い気持ちでやっていたり、間違った正義感(悪いヤツだから懲らしめた方が社会のためだ)に基づいていたりすることも多いです。
しかし、その書込みが相手にとってどんな深刻なダメージを与えることになるか、自分の感じた正義感が正しい情報に基づいているのか、仮に相手に非があるとしても、誰でも見られるような形で非難することが正しい方法なのか、よく考えてみることが必要です。

Question 4

人の悪口以外に書き込んではいけないことって?

翔平くん

少し前に、バイト先で悪ふざけをしている写真の投稿が問題になったりもしたね。

ポイント

  • 人のプライバシーを同意なくSNSで公開したり、勝手に人の写真を撮ってSNSにアップするとことは、事案にもよりますが、人の権利を侵害することになる場合があるため、注意が必要です。
  • また、バイト先などの信用を損なうようなことを書き込んだ場合も、損害賠償責任を発生させることがあります。
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人の悪口をSNSに書き込んだ場合に、相手に対する慰謝料や賠償金を支払わないといけなくなったり、犯罪として処罰されることがありますが、SNSに書き込んではいけないことは、これだけではありません。
悪口以外に、これまで問題となったことのある代表的な例としては、次のようなものがあります。

プライバシー侵害など

プライバシーとは、人の私生活に関することで、他人に知られたくないと感じるのが通常であるようなものをいいます。
書き込む目的や、どういう人の情報を書き込むかなどにもよりますが、他人の同意なく、住所や電話番号、性的指向などの個人情報や、私生活の行動(いつ、だれとどこにいたなど)を多数の人の目に触れさせると、プライバシーを侵害したことになる可能性があります。
また、同意なく勝手に他人の写真を撮影してSNSにアップする行為も、その人の権利を侵害したと判断される可能性があります。

どのような場所で撮影したか(公道など誰でも見られる場所かどうか)、どのような場面か、どういう人かなどにもよりますが、同意なく撮影した写真をアップすることには注意が必要です。

バイト先の情報など

あなたがアルバイトなどをすると、バイト先のさまざまな情報に触れることがあるかもしれません。例えば、どんな顧客がいるかとか、どんなレシピで料理を作っているかなどです。
こういった情報は、アルバイト先が収益を得るためにむやみに公開してはいけないものであったり、また、その信用に関わる情報でもあります。このような情報をSNSに書き込んで多くの人の目に触れさせると、バイト先の利益を侵害したとしてバイト先に対して損害を賠償しなければならない場合があります。
また、バイト先で悪ふざけをしているところを写真に撮って投稿したり、バイト先に有名人が来店したことをSNSに書き込んだりすることも、バイト先の信用を損なうことになります。このような書き込みも、バイト先の利益を侵害したとして損害賠償責任を負う場合があります。

脅迫など

当然のことですが、「●月●日、△△を爆破する」とか、他人のアカウントに「殺すぞ」と書き込むなど、SNSを通じて人を脅迫することは、決して許されません。

Question 5

自分で書き込まなくても紹介しただけで責任を負うの?

翔平くん

誰かの投稿を引用したり、紹介するだけでも、責任を負うことはあるのかな?

翔平くん

みんなが拡散することで、その投稿が多くの人の目に触れたり、みんなから責められているような気になって、被害を受けた人が更に辛い思いをすることもあるよね・・・。

ポイント

  • 自身で本文を投稿した場合だけではなく、他の人の投稿に対するコメントをしたり、他の人の投稿を紹介・引用するだけでも、違法となることがあります。
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これまで、どのようなことをSNSに書き込んだら責任を負うことになるかについて説明してきました。
このようなことを自分で直接SNSに書き込んだ場合に責任を負わなければならないことは、いうまでもありません。
しかし、自身で本文を投稿した場合だけではなく、他の人の投稿に対するコメントをしたり、他の人の投稿を紹介・引用するだけでも、賠償責任を負うことがあります。他人の投稿の紹介や引用だけでも、文脈によっては、その投稿に賛同したものと評価されることがあるのです。
自分で書き込むだけでなく、他人の投稿を紹介したり引用したりするときも、その内容に、人を傷つける内容や、どこかのお店などの信用を低下させる内容が含まれているときは、注意が必要です。

Question 6

SNSでひどい書き込みをされたら、どうすれば良いの?

翔平

SNSを使うときに注意すべきことはわかった!
でも、もし自分が書き込みをされる側になったら、どうすれば良いの?

あみ

由美の場合は、他の人が弁護士に相談した結果、自主的に削除されたみたいだけど・・・。

ポイント

  • SNS上で誹謗中傷などの投稿をされてしまった場合には、①運営者に対して投稿の削除要請をする、②投稿をした人に対する損害賠償請求をする、③投稿をした人の処罰を求めるなどの対処が考えられます。
  • 行政の相談窓口や専門家にアドバイスを求めることも有益です。
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もしあなたが、SNS上で誹謗中傷の投稿をされてしまった場合には、次のような対処をすることができます。

  • ①SNSの運営者に対して、投稿の削除要請をする。
  • ②投稿をした人に対する損害賠償請求をする。
  • ③投稿をした人の処罰を求める。

これらの手続は、自分自身でもすることができますが、具体的に何をすれば良いのかがわからないことも多いと思います。

そのような場合は、行政の相談窓口や専門家にアドバイスを求めることも有益です。
実際に誹謗中傷などの投稿をされてしまった人は、次のフローチャートも参考にしてみてください。

A
違法・有害情報相談センター

違法・有害情報相談センター
(総務省)

迅速な助言

◎相談者自身で行う削除依頼の方法などを迅速にアドバイスします。
インターネットに関する技術や制度等の専門知識や経験を有する相談員が対応
◎人権侵害に限らず、様々な事案に対して幅広なアドバイスが可能
◎インターネットで相談の受付や相談のやりとりを行います。
※削除要請ではなくアドバイスを行う相談窓口です

違法・有害情報相談センター
B
違法・有害情報相談センター

人権相談 (法務省)

削除要請・助言

◎相談者自身で行う削除依頼の方法などの助言に加え、法務局が事案に応じてプロバイダ等に対する削除要請を行います。 ◎削除要請は、専門的知見を有する法務局が違法性を判断した上で行います。 ◎全国の法務局における面談のほか、電話やインターネットでも相談を行います(外国語にも対応)。 ※違法性の判断に時間を要する場合があります

みんなの人権110番
0570-003-110

人権相談受付窓口
B
誹謗中傷ホットライン

誹謗中傷ホットライン
(セーファーインターネット協会)

プロバイダへの連絡

◎インターネット上の誹謗中傷について、連絡を受け付け、一定の基準に該当すると判断したものについては、国内外のプロバイダに各社の利用規約等に沿った対応を促す連絡を行います。
◎インターネット企業有志によって運営されるセーファーインターネット協会(SIA)が運営しています。
◎インターネットで連絡を受付し、やりとりはメールで行います。
※プロバイダへの連絡を行わない場合もあります

誹謗中傷ホットライン
※上記のほか、学校や地方公共団体にある相談窓口も活用してください。
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