Question 1
契約での取決め(条項)の内容をよく理解しないまま契約した場合でも、その契約は内容どおりの効力があるの?
インターネット回線の契約とか、携帯電話の契約とか、難しいよね。
よく読まずに契約してしまった場合、それでも守らないといけないのかな?
ポイント
- 約款を契約内容とする合意をした場合などには、その内容を一つ一つ理解していなかったとしても、約款の内容が契約内容となり、これを守らなければなりません。
- 約款の中に、相手にとってとても不利な内容が含まれていた場合、その条項は無効になることがあります。
- 事業者は、消費者に対して契約内容をきちんと説明する義務があります。
例えば事業者が多数の消費者を相手に商品を売ったりサービスを提供したりする場合、個別に契約内容を変えていると効率が悪いので、画一的に同内容の契約条項を作成して契約を締結し、多くの人に同じサービスを提供するなどしています。それによって、安価にサービスを提供することができ、消費者にとっても有利なことがあります。
このような契約条項を「定型約款」といいますが、事業者と相手方がこの約款全体を契約内容にするという合意をした場合、相手方がその内容を個別に認識していなくても、約款の内容を守らなければなりません。
もっとも、この定型約款については、相手方が個別に内容を認識してないことが多く、交渉を通じて不当なものを是正することもできませんから、相手方にとって不当に不利な内容が書かれていた場合、その条項は無効になることがあります(その具体例は、第3話のQuestion8と共通しますから、参照してください。)。
また、事業者と消費者が契約をする場合には、事業者は、消費者に対し、契約内容について必要な情報を提供するように努めなければならないとされています。
契約内容が理解できないときは、納得しないまま契約をするのではなく、説明を求めてみることが重要です。
Question 2
契約をするとき、どんなことに気を付けたらいいの?
18歳になったら自分の判断で契約できるっていうのはわかったけど、自分の責任で判断するのって難しいね。
そうだね。マスターが言ってたことを復習しておこうか。
ポイント
- 契約をしようとしているあなたは、それによって何かを得ようとしているはず
- 迷ったら、自分が一番大事にするポイントは何なのかに立ち戻って情報を整理してみましょう。
同じようなサービスがたくさんあったり、いろんな情報がありすぎて、どの商品を買えばいいのか、どんなサービスに加入すればいいのか、判断に迷うことも多いと思います。
誰とどのような契約を結ぶかは最終的には自分で判断しなければならず、ここに気をつけてさえいればいいという決定打はありませんが、判断に迷ったら、その契約によってどんな利益を得ようとしているのか、そのためならどれだけの対価を払えるのかという観点から、情報を整理してみることが有益かもしれません。
例えば、一人暮らしをするために家を借りる契約をする場合、ポイントはいくつかあります。広さや間取り、日当たり、築年数、デザイン、セキュリティに関する設備など、その建物自体に関するポイントのほか、町の雰囲気や環境、駅からの距離などが、多くの人が着目するポイントでしょう。もちろん、家賃や敷金の額なども重要なポイントです。
また、アルバイト先を選ぶのであれば、仕事の内容や時給ももちろんですが、シフトがどれくらい柔軟に入れられるのか、将来の目標に役に立つかどうかなどを重視する人もいるかもしれません。
契約しようとしているあなたは、それによって何かを得ようとしているはずです。迷ったときは、自分が一番大事にするポイントは何なのかを見つめなおして、いろんな選択肢を比較してみると、結論が近づくかもしれません。
Question 3
情報リテラシーの大切さ
ちゃんと判断するには、正しい情報を基にしないとね。
そうだね、でもネットには情報があふれていて、何が正しいのかわからなくなっちゃう。
ポイント
- 世の中には、様々な情報があふれています。正しい判断をするためには、その前提として正しい情報を基にすることが必要です。
- 正しい情報を選択するには、その情報の情報源はどこなのかを確認したり、様々な情報を比較したりすることが必要です。
インターネットを検索すれば、皆さんが興味を持った商品やサービスについて口コミの情報はすぐに手に入ります。情報が多いことはよいことですが、いろんな情報があふれていて、何が正しい情報なのかを見定めることが難しくなっているともいえます。
インターネットで得られる情報の中には、その商品やサービスを売っている業者が第三者を装って流しているものもあるかもしれません。もちろん、その中には正しい情報もあるかもしれませんが、利害関係のある人が書き込んだ情報は、そういう前提で評価をする必要があります。
契約をするかどうかの判断に限ったことではありませんが、正しい判断をするためには、たくさんの情報の中から正しい情報を選び取ることが必要です。
どの情報が正しいか、正しくないかを判断することは難しいことですが、まずは、その情報を発信しているのが誰かを確認することが重要です。また、その情報がどのような根拠に基づいているのか(それが示されているかどうか)を確認することも重要です。明確な根拠が示されていなかったり、根拠を知らないはずの人が発信した情報は、疑わしいかもしれません。複数の情報を比べてみることも、有益です。
私たちは、知らず知らずのうちに、自分たちが信じたい情報を信じてしまう傾向があるようです。そのような傾向が自分にもあるかもしれないということを意識しておくだけでも、簡単にウソの情報を信じないことにつながると思います。
Question 4
悪徳商法を見破るには、どうすればいいの?
しつこく契約を迫られても、いやなら毅然と断ることが大事だって習ったよね。
でも、だまされていたら、悪徳商法だって気が付かないよね。だまされないためには、どういうことに気をつければいいのかな。
ポイント
- 残念ですが、楽して儲かるうまい話は、ほとんどウソです。
- 世の中にどんな悪徳商法があるのかを知っておくことも重要です。
いわゆる悪質商法の被害事案の中には、しつこい勧誘などを受けていやだなと思いながら仕方なく契約したという事案もあれば、消費者が望んで契約を締結したところ、実はだまされていて不当な契約だったという事案もあります。
消費者がいやだと思っている場合は、毅然と契約の締結を拒むことも考えられますが、悪徳業者がうまく意図を隠して近づいてきたときは、どうすればいいでしょうか。
悪徳業者の中にはとてもうまくだます人たちもいるので、見破るのが難しいこともあります。少しでも被害に遭う可能性を小さくするためには、何よりも、楽してお金が儲かるといううまい話はないということを意識しておくことが大切です。「あなただけに、絶対に儲かる話を教えてあげる」などと言ってくる人の勧誘に乗ってはいけません。
また、悪徳商法としてどのようなものがあるのか、知識を増やしておくことも、被害に遭う可能性を小さくするために重要です。自治体などのウェブサイトでもそのような情報が掲載されていますので、参考にしてみてください。
第7話 解説
- 何に気をつけて選ぶべき? -