Question 1
契約ってどんな役に立つの?
さっきマスターにびしっと言っていたね!
見てたの!?やっぱり「契約」するならちゃんとしなきゃと思ったんだ。
そっか。そもそも契約って何のためにあるんだろう。 何か私たちにとって良いことがあるのかな?
ポイント
- 「契約」とは、お金を払って人からモノやサービスの提供を受けたり、働いてお金をもらったりする約束のことをいいます。
- 契約は、自分だけではできないことを実現し、豊かに生活するために不可欠なものです。
たとえば、昨日の晩ご飯を思い浮かべてみてください。
全ての食材を自分で一から育てるのはとても大変なので、みなさんの多くは、食材やお惣菜をお店で買っているのではないでしょうか。
私たちが日常生活を送るためには、お金を払って人からモノやサービスを提供してもらったり、働いてお金をもらったりすることが必要です。このような約束を「契約」と言います。
契約は、自分だけではできないことを実現して、豊かに生活するために不可欠なものです。
私たちの社会は、多くの人が契約を通じてつながることによって成り立っています。
「成年になると、契約をすることができるようになる」ということは、契約によって他の人たちとつながることができる、言い換えれば、契約によって成り立つ社会に参加することができるということです。
アルバイトは、翔平くんに働いてもらい、それに対して僕がお金を払うという契約(雇用契約)なんだ。
翔平くんのおかげで僕は助かるし、翔平くんもお金を稼ぐことができるから、両方にとって良いことだね。
Question 2
契約って、どうやって結ぶの?
マスターには思わず契約書を作りたいって言っちゃったけど、契約書を作らないと契約できないのかな?
契約書がなくても契約は成立するけれど、後々のことを考えて、契約書を作ってきちんと内容を確認しておいた方が良い場合もあるよ。
ポイント
- 契約は、契約をする人たちの合意で成立します。この合意は口頭でもよく、契約書がなくても契約は成立します。コンビニでお菓子を買うのも契約の一種です。
- ただし、あとで内容を確認するために契約書を作った方がよい場合もあります。
私たちは、日々、多くの契約を結んでいます。
- ・コンビニでチョコレートを買う
- ・電車に乗る
- ・一人暮らしのためのアパートを借りる
- ・アルバイトをする
- ・携帯電話を買う
契約は、「こんな契約を結ぼう」「いいよ」という当事者の合意によって成立します。この合意は口頭でもよく、原則として、契約書を作る必要はありません。
このため、相手に「契約が成立した」と誤解を与えないように、言動には気をつける必要があります。
また、口約束だけだと、あとで「言った、言わない」というトラブルになり得ます。
そこで、特に複雑な契約や長期間の契約をする場合には、契約の内容をよく確認し、納得した上で契約書を作り、大切に保管しましょう。
ちなみに、法律(労働基準法)では、アルバイトの人に労働条件が書かれた契約書などの書類を渡さなきゃいけないことになっているよ。
Question 3
未成年は一人で契約をすることができないって、ほんと?
子どもの頃からコンビニでチョコレートを買っていたけれど、実は未成年でも契約できるってこと?
たしかに。成年になる前と後で、何か違うのかな。
ポイント
- 未成年でも、自由に使ってよいと言われたお小遣いの範囲内ならば、親の同意なく契約をすることができます。
- その範囲を超えて契約をしたときは、自分自身や親が、その契約をなかったことにする(取り消す)ことができます。
- 逆に言えば、未成年者がした契約であっても、取り消されるまでは有効です。
未成年者は自分だけの判断で契約をすることができず、親の同意が必要です。
この同意なく未成年者が契約をしてしまった場合、未成年者自身や親は、その契約を最初からなかったことにする(取り消す)ことができます。
これは、まだ判断力が十分でなく、自分に不利な契約をするおそれがある未成年者を守るためのルールです。
ただし、例外的に、親が「自由に使っていいよ」と言ってくれたお金であれば、未成年者であっても、親の同意なく自由に使うことができます。お小遣いは自由に使える(チョコレートも買える)ということです。
成年になると、親の同意を得ずに、自分の判断で契約をすることができるようになる反面、あとから取り消すこともできなくなります。
つまり、お小遣いの範囲を超えて、自分の判断で契約をすることができるようになるというのが、成年と未成年の大きな違いです。
成年になると、いったん契約をしたら守らないといけないという責任が生まれるのです。
Question 4
契約を守らないと、どうなるの?
思っていた以上に契約が僕たちに身近なことはわかったけれど、契約を守らないとどうなっちゃうの?
例えば、翔平のバイト代が払われなくなっちゃったら、どうすればよいんだろう。
ポイント
- あなたが契約を守らなかった場合、相手は、裁判所の手続を使って、契約の内容を強制的に実現させることができます。
- 具体的には、あなたの財産を売ってお金にしたり、あなたがこれから得るお金を代わりに受け取ることができます。
- 契約をするときには、自分がその内容を守ることができるのか、きちんと考えることが大切です。
私たちは、契約が守られることを前提に行動しています。
もし合意した契約の内容を片方が勝手に変更したり、自分の都合でなかったことにできるとすると、安心して取引をすることができなくなります。そのため、契約をした人たちは、お互いにその内容を守らなければなりません。
契約を守らなかった場合、契約の相手は、裁判所の手続を使って、契約の内容を強制的に実現させることができます。
例えば、マスターが翔平くんにバイト代を払わなかった場合、翔平くんは、裁判所の手続を使って、マスターのお店の土地建物等の財産を強制的に売り、その代金からバイト代を支払ってもらうことができます。
また、契約を守らなかったことによって相手に損害が生じた場合には、賠償金を支払わなければならないことがあります。
誰とどのような契約をするか(しないか)は自由ですが、いったん契約をすると、自分の判断で契約をした以上、きちんと守る責任があるのです。
契約は相手との約束だから、相手に対する責任も生まれるんだね。
高い物を買う場合などには、その契約が本当に必要なのか、きちんと守れるものなのかを、冷静に考えないといけないね。
Question 5
約束=契約なの?
そういえば、朝お父さんが晩ご飯はカレーって言っていたのに肉じゃがが出てきたことがあるんだけど、これも契約違反なのかな?
ポイント
- 契約とは、「その内容の実現が法によって保護されるもの」などと言われることがあります。
翔平くんのように、朝、お父さんに晩ご飯にカレーが食べたいと頼み、わかったと言われたのに実際に作ってもらったものが肉じゃがだった場合、契約違反と言う人はあまりいないと思います。
でも、もし食堂でカレーの食券を買ったのに肉じゃがが出てきたら、契約違反だと言う人が多いでしょう。この違いは何でしょうか。
これは、簡単そうに見えて、実は結構難しいことなのです。
契約とは、お金を払って人からモノやサービスの提供を受けたり、働いてお金をもらったりする約束のこと、つまり、約束の一種です。
そして、契約になる約束は、約束の内容の実現が「法によって保護されるもの」だと説明されることがあります。
先ほどの例で考えてみましょう。
家での食事と違って、食堂では、カレーの代金を支払っていますね。これは、客として、カレーを作ってもらうというサービスの提供を受けることが正当であることを基礎づけるものと考えられます。このため、カレーを作ってもらうという内容の実現が「法によって保護されている」と言ってよいでしょう。
逆に、お父さんに対して、自分には「カレーを作ってもらう権利があるから、裁判所の手続を使って権利の実現を求める!」というのは、少し行き過ぎのような気がしますね。
ただ、対価としてお金を支払うものが契約というわけではなく、対価の発生しない契約( 贈与契約)もあります。
いろいろな考え方があるので、興味のある方は、法律関係の本などを読んでみてもよいかもしれませんね。
第2話 解説
- 契約について -