Question 1
少年法って何?
「少年法」ってニュースでたまに耳にするけど、あまり詳しく知らないな…。
そうだね。そもそも少年法って何のためにあるのかな?
ポイント
- 少年法は、少年の事件について特別に定められた法律です。
- 少年法は、罪を犯した少年を大人と同じように罰するよりも、適切な教育や処遇を行うことで少年を更生させようとする法律です。
少年は、心身ともに成長過程にあり、可塑性に富んでいるので、罪を犯したとしても、適切な教育や処遇を受ければ更生する可能性が高いとされています。
そこで、少年法は、罪を犯した少年に対して、単に大人と同じように刑罰を科すのではなく、適切な教育や処遇を優先させることで、少年を健全な大人へと更生させることを目的としています。
少年が罪を犯したときは、全件家庭裁判所に送致され、家庭裁判所は、罪を犯した少年に対して、原則として、刑罰(懲役や罰金など)ではなく、保護処分(保護観察や少年院送致)を課し、保護処分の中で必要な教育や指導を行います。
Question 2
18歳と19歳にも少年法は適用されるの?
少年法が変わったこと、知らなかったな。
マスターの話だと、私たちただの「少年」じゃなくなったみたい。
ポイント
- 18歳と19歳も、これまでと同じように少年法の対象となります。
- ただし、民法における成年年齢の引下げなどの社会情勢の変化を踏まえ、18歳と19歳は、少年法の適用において、その立場に応じて17歳以下とは異なる取扱いをすることとなりました。
18歳と19歳も成長過程にあることに変わりはなく、罪を犯しても適切な教育や処遇を受ければ更生する可能性があるため、これまでと同じように少年法の対象とすることに変わりありません。
一方で、18歳と19歳は、民法における成年年齢の引下げなどにより、大人としての自覚を持って社会で活躍することが期待される立場となりました。
そこで、少年法では、18歳と19歳を「特定少年」と呼び、その立場に応じて17歳以下とは異なる取扱いをすることとなりました。
なお、このような取扱いが始まるのは、民法における成年年齢が18歳に引き下げられる日と同じ、2022年(令和4年)4月1日からです。
Question 3
検察官への「逆送」ってどんなときにされるの?
原則として「逆送」となる事件が増えたみたいだけど、そもそも「逆送」って何だろう?
「逆送」は、少年の事件について、家庭裁判所が刑罰を科すべきと判断した場合に事件を検察官に送ることをいうよ。
ポイント
- 少年の事件はすべて家庭裁判所に送られ、処分が決定されますが、家庭裁判所が懲役、罰金などの刑罰を科すべきだと判断した場合に、事件を検察官に送ることを「逆送」といいます。
- 殺人罪や傷害致死罪など、原則として「逆送」となる事件があります。
- 少年法が変わり、18歳・19歳の事件については、原則として「逆送」となる事件が増えました。
家庭裁判所は、原則として、保護処分に付しますが、懲役や罰金などの刑罰を科すべきと判断した場合、「逆送」、つまり、事件を検察官に送ります。
少年法では、家庭裁判所が原則として「逆送」しなければならないとされている事件が決められており、16歳以上のときに犯した故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪(殺人罪、傷害致死罪など)の事件がそれに当たります。
少年法が変わり、18歳・19歳については、このような事件に加えて、18歳・19歳のときに犯した死刑、無期又は短期(法定刑の下限)1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件(現住建造物等放火罪、強制性交等罪、強盗罪など)も原則として逆送しなければならないとされました。
これは、成年年齢の引下げなどにより、責任ある立場となった18歳・19歳が重大な罪を犯した場合には、17歳以下の少年よりも広く刑事責任を負うべきだと考えられたからです。
逆送された事件は、検察官によって裁判所に起訴され、裁判で有罪となれば刑罰が科されます。
Question 4
犯人の「実名報道」が解禁されるのはどうして?
18歳と19歳は、起訴されて公開の裁判を受ける立場になったら実名報道されることがあるんだよね
そうだね。そもそも少年はどうして実名報道されないんだろう?
ポイント
- 少年法では、少年のときに犯した罪については、実名報道が禁止されています。
- ただし、18歳と19歳は、公開の裁判で裁かれるべきとして起訴されたら、実名報道の禁止が解除されることとなります。
実名報道されることで社会の厳しい目にさらされ、その後の本人の更生の妨げになり得ることは、大人と同じです。
そのような報道がなされることは、少年が更生する上で妨げとなってしまうため、少年法は、実名はもちろんのこと、年齢、職業、住居、顔写真など、犯人が誰であるかが分かるように報道したり、記事にしたりすることを禁止しています。これを「推知報道の禁止」といいます。
他方、推知報道の禁止は、憲法で保障されている報道の自由を制約する例外的な規定です。その上で、 18歳と19歳は、責任ある立場となり、被害者を含む国民の理解・信頼の確保の観点から、罪を犯して公開の裁判で裁かれるべきとして起訴され、刑事責任を追及される立場となった場合には、推知報道の禁止を解除することとなりました。
せっかく名前が報道されるなら、いいことをして報道されたいな。大きな賞を受賞したり!
そうだね。期待しているよ。
Question 5
新しい少年法において、他には何が変わる?
18歳と19歳について色々と変わることが分かったけど他にも何か変わることはあるのかな?
いい質問だね。責任ある立場となった君たちは、他にも今までと違うところがあるよ
ポイント
- 18歳と19歳の事件は、逆送された後は、原則として20歳以上と同じように取り扱うこととなります。
- それ以外にも、18歳と19歳は、裁判員として選ばれる可能性があります。
少年法では、刑事事件に関して20歳以上とは異なる取扱いとしているものがあり、例えば不定期刑や労役場留置の禁止などがあります。
不定期刑とは、定期刑(「懲役(禁錮)○年」)と異なり、短期と長期を定めて言い渡す刑(「懲役(禁錮)○年以上○年以下」)をいい、改善更生の度合いに応じて処遇を行うことができるようにするものです。
また、労役場留置とは、罰金を納められないときに代わりに労役に服するものであり、拘束され教育を行うものでないので、少年に対しては、労役場留置の言渡しを禁止しています。
責任ある立場となった18歳と19歳は、逆送された後は、原則として20歳以上と同じように取り扱うこととなり、不定期刑や労役場留置の禁止といった刑事事件に関する特例は適用されません。
その他にも、18歳と19歳は、裁判員として選ばれる可能性があります。
裁判員法においては、「選挙権を有する者が裁判員になることができる」と定めていますが、平成27年に選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられたとき、少年法について必要な措置を行うまでの暫定的な措置として、18歳と19歳は裁判員になることができないとされていました。
今回の少年法の改正により、選挙権を有する国民に幅広く裁判員として参加してもらおうという裁判員法の本来の趣旨のとおり、18歳と19歳も裁判員となることができるようになりました。
なお、裁判員決定までの手続上、18歳と19歳が実際に裁判員に選ばれる可能性があるのは、令和5年以降となります。
また、学業への支障が生じないよう、裁判員法においては、裁判員の辞退事由として、「学生又は生徒であること」や「社会生活上の重要な用務であって他の期日に行うことができないものがあること」が定められています。
令和4年4月1日以降、18歳と19歳の方々は、こうした分野においても大人の仲間入りをし、大きな役割を果たすこととなります。
第10話 解説
- 知っていた!?少年法の改正 -