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国際協力部による法整備支援活動

Part1 法制度整備支援とは何か

1 法制度整備支援の三つの基本的柱

 「法制度整備支援」という言葉は,日本語としては,まだ馴染みの深いものとは言えません。
 その活動が我が国で組織的に行われるようになったのは最近のことですので,無理もありません。
 しかし,私たちのこれまでの経験を基に簡単に説明すると,次のようになります。

 法制度整備支援=開発途上国が行う法制度整備のための自助努力を支援すること

 三つの基本的柱
 ・具体的な法令案作成に対する支援
 ・法令の執行・運用のための体制整備に対する支援
 ・法律専門家などの人材育成に対する支援

2 これまでの歩み(法務省関係)

 ・1994年 ベトナムに対する国別研修を開始
 ・1995年 カンボジアに対する国別研修を開始
 ・1997年 モンゴル・ミャンマー・べトナムに対する多数国研修を開始
      (その後,参加国は増加)
 ・1998年 ラオスに対する国別研修を開始
 ・2000年 ベトナムに長期専門家を派遣
       カンボジアに対する起草支援研修を開始
 ・2001年4月 法務総合研究所に国際協力部を新設
 ・2001年11月 国際協力部が大阪中之島合同庁舎に移転
 ・2002年6月 ラオスに長期専門家を派遣
 ・2002年7月 インドネシアに対する国別研修を開始
 ・2002年10月 ウズベキスタンに対する国別研修を開始
 ・2006年2月 カンボジアに長期専門家を派遣
 ・2007年11月 中国に対する国別研修開始
 ・2008年3月 東ティモールに対する国別研修開始
 ・2008年12月 中央アジア4か国(カザフスタン,キルギス,タジキスタン,ウズベキスタン)に対する特設研修を開始
  ・2010年7月 ネパールに対する国別研修開始

 国際協力部の新設・移転により,法務総合研究所は,歴史的にアジアと関係の深い大阪にも法制度整備支援の大きな拠点を持つことになりました。

Part2 法制度整備支援はなぜ必要か

1 法制度を動かすのは人

 「法制度」とは,憲法を頂点とする様々な法律で構成される法体系とそれを運用するシステム全体のことを指します。
 法制度は,社会の基本的なルールを定め,国民の権利や義務を実現することを目的として,紛争を解決し,犯罪者を処罰して治安を維持するなどの重要な役目を担っています。
 しかし,これが現実に機能するためには,紛争に関係する人はもちろん,法制度に関係する様々な人が活動しなければなりません。

2 法制度は他国との共通財産

 現代社会は,交通手段や通信技術の発達により,経済取引を始めとする国際間の交流が活発になっています。
 人,資本,製品,情報などが毎日大量に世界中を移動しており,このような世界では,法制度は,一国の内部だけではなく,その国と関係を持つ国々や人々にも影響を及ぼします。
 不十分で信用のない法制度しか持たない国では,産業や経済の発展が難しくなるのです。

3 日本の近代的法制度整備の歴史

 日本は,19世紀半ばまで中国文化の影響を受けた独自の法制度を持っていました。
 しかし,その後の明治維新以来,欧米にも通用する近代的法制の整備を迫られ,欧米から法律専門家を招き,あるいは留学生を欧米に派遣してその制度を学び,日本の社会・文化に合わせて近代的な法制度を作り上げてきた経験を持っています。
 また,社会・経済・文化の変化に応じて法制度も変わっていきます。
 法制度整備には終着点はなく,先進国も司法制度改革を進めているのです。
 まさに,日本も今,大改革時代の中にいます。

4 開発途上国の事情

 一方で,世界には,近代的な法制度が十分に整備されていない開発途上の国が多くあります。
 特に,中央統制型計画経済政策を採っていた国は,市場経済の導入に伴って,既存の法制度を根本的に再構築する必要に迫られています。
 しかし,開発途上国は,人的・物的資源が十分ではないため,独力で,迅速かつ適切に法制度整備を行うことは容易ではありません。
 そこで,国際機関や先進国が法制度整備を手助けすることが求められるのです。

5 日本が法制度整備支援を行う意義

 日本は,国際社会での名誉ある地位を保持していくためにも,国際社会のあらゆる面で積極的な貢献を求められています。
 法制度整備支援において,日本には次のような特徴があります。
 ・欧米先進国とは異なった法文化
 ・100年以上にわたって主要な法制度(仏,独,米,英など)を研究し,採り入れてきた経験
 ・他のアジア諸国と類似した文化

6 法制度整備支援における基本方針

 法制度整備支援に当たっては,次の点を基本的な方針としています。
 ・支援対象国の主体性・自主性の尊重
  法制度整備のための幾つかの選択肢を提供して支援対象国の判断にゆだねる
  支援対象国の実情に関する十分な調査を行う
 ・中長期的視点に立った活動
  法制度整備支援は法律案の作成だけではない
  法令の執行・運用のための体制の整備や法律家などの人材育成を重視する

Part3 国際協力部の活動

1 最近の活動

 法務総合研究所は,アジアの開発途上国から要請を受け,外務省,独立行政法人国際協力機構(JICA)などと協力して,要請国における良い統治(グッドガバナンス)支援及び市場経済発展のため,その基盤となる法令の整備とその確実な運用に焦点を当てて支援を進めてきました。
 国際協力部は,こうした支援を更に充実・発展させています。
 これは,政府開発援助(ODA)事業のうち知的支援の枠組みに属するものであり,「顔の見える支援」としてますます注目を集めるようになっています。
 国際協力部が行う活動は,大きく分けて,次の5つです。
 (1)日本国内での研修(国別研修と地域別研修)
 (2)現地セミナーへの講師の派遣
 (3)法律案の起草支援
 (4)現地へのアドバイザー型専門家の派遣
 (5)その他の活動 これらの活動内容を,以下,御紹介します。
 なお,各プロジェクトの概要については,こちらを御参照ください。

(1)日本国内での研修(国別研修と地域別研修)

 支援対象国の立法関係者,裁判官,検察官,弁護士等を日本に招いて,様々なプログラムの研修を実施しています。
 この研修には,特定の国から研修員を招いて行う国別研修と,数か国から研修員を招いて行う地域別研修があります。
 これらの研修では,講義形式による日本の法制度の紹介,特定のテーマに関する各国研修員の発表(カントリーレポート),研修員同士のディスカッション,司法関係機関見学などのプログラムを通じ,法の基本原理,日本の法制度整備の歴史,現在の日本の法制度の仕組みや運用の実情,対象国の法制度の実情と問題点などについて,相互理解を深め,今後の方策を検討するなどしています。
 研修は,大阪中之島合同庁舎,東京霞が関の法務総合研究所のほか,JICA大阪国際センターなどで実施しています。

[国別研修と地域別研修]
 国別研修では,相手国特有の課題が深く研究されるのに対し,地域別研修では,一度に多数国の法制度の実情を知り,多様な法制度を比較することができます。

(2)現地セミナーへの講師の派遣

 国際協力部は,支援対象国内で,各種の法制やその運用について開催されるセミナーに,JICAのセミナー講師として教官を派遣しています。
 現地セミナーのテーマは,相手国が近い将来に立法や法改正を控えているなど緊急性の高いものが多く,数日間にわたり,関係官庁の立法担当者などを対象に,講義形式やディスカッション形式で実施しています。
 現地セミナーには
 ・一度に多数が参加できる
 ・派遣された講師が相手国の最新の実情を知り,実地に見聞することができる
という利点があります。

(3)法律案の起草支援

 これまで日本が起草支援を行った主要な法律案としては,ベトナム改正民法,民事訴訟法,カンボジア民法,民事訴訟法などがあります。
 いずれも大学教授などを中心とした作業部会が活動の中心となっており,国際協力部は,これに教官を派遣しているほか,支援対象国の担当者を招いての研修の企画や,必要な連絡調整を行っています。
 現在では,引き続き両国における民事関連の多くの法律案の起草支援を行うとともに,ベトナムにおいては,改正刑事訴訟法,行政訴訟法の起草支援も行っています。

(4)現地へのアドバイザー型専門家の派遣

 国際協力部は,最高裁判所と協力し,1年間以上現地に滞在するJICA長期専門家として,ベトナムに検事2名(1名は裁判官出身),カンボジアに検事2名(1名は裁判官出身),ラオスに検事1名を派遣しています。
 長期専門家は,その国の法制度の実情を調査し,司法関係者への助言や必要な支援の企画・立案を行うほか,現地セミナーの実施などについて,関係機関との連絡調整をしています。
 また,支援対象国の法制度を調査するため,国際協力部教官を数週間から数箇月単位の短期専門家として派遣することもあります。
 最近では,ベトナム,カンボジア,ラオス,中国に短期専門家を派遣し,各種の調査を実施しました。

(5)その他の活動

 国際協力部は,国際シンポジウムの開催や研究活動をしています。
 これまでに,国別研修や地域別研修の中でシンポジウムを数回開催したほか,アジア太平洋地域から専門家を招いて会社法に関するシンポジウムなどを行ってきており,2009年8月28日には,東京で次世代の法制度整備支援を担うべき大学生,法科大学院生,若手法曹や学者等を対象に「私たちの法整備支援〜ともに考えよう!法の世界の国際協力」と題するシンポジウムを開催しました。
 今後とも,このような国際シンポジウムを開催していく予定です。
 さらに,日韓パートナーシップ研修を実施しています。
 この研修では,日本の法務省及び最高裁判所と韓国の法院(裁判所)の職員が,登記,供託,戸籍及び民事執行に関する意見交換と実務研究を行っています。

2 協力機関

 国際協力部は,外務省,JICA,財団法人国際民商事法センター(ICCLC)などとも緊密な連携を保って活動をしています。
 国際民商事法センターは,民商事法分野の法制度整備支援を目的として,財界・学界・法曹界の協力を得て1996年4月に設立されたもので,私たちにとっては,心強いパートナーです。
 また,東京,大阪,名古屋を中心とする大学等関係機関からも,御協力をいただいています。
 今後もオールジャパンによる支援体制の強化が求められています。

Part4 将来の展望

 国連や世界銀行などの国際機関,先進諸国が世界各地で法制度整備支援を行っています。
 日本は,これらの機関及び諸国と連携して,より効率的で効果的な法制度整備支援を推進していく必要があります。
 国際的な経済活動がより活発化する中で,日本が国際社会において果たすべき役割は,ますます重要なものとなっています。
 とりわけ,アジア諸国の法制度整備のニーズは高まるばかりであり,日本の法制度整備支援に対する期待や要望は強まる一方です。
 そして,日本国内においても,2008年1月13日に開催された第13回海外経済協力会議における合意に基づき,「法制度整備支援に関する基本方針」(このリンクは外務省のホームページにリンクしています)が策定され,2009年4月22日に開催された第21回海外経済協力会議において了承され,法制度整備支援が経済協力の重要分野の一つとして位置付けられたほか,アジア諸国と密接なつながりを持つ関西方面の財界・学界・法曹界などからも,国際協力部が行うアジア諸国への法制度整備支援に対して強い期待が寄せられています。
この記事に関する問い合わせ先
〒553-0003
大阪市福島区福島1-1-60大阪中之島合同庁舎
法務省法務総合研究所国際協力部
TEL 06-4796-2153
FAX 06-4796-2157
E-mail icdmoj@moj.go.jp
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